スーパーフォーミュラ・ライツ チャンピオン獲得!ようやくスタートラインへ! ~小高一斗選手~

ようやくという言葉は失礼なのかもしれません。
コロナ禍で起きた致し方ない事情で、スーパーフォーミュラへの代役参戦のシーズンもあり、しっかり地に足をつけて戦うのが困難な時期もありました。

それは彼にとってチャンスであったり、経験として大いに役に立ったりと全く無駄ではなく。でもやはり、この全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権(以下、スーパーフォーミュラ・ライツ)をチャンピオンとして卒業しないと、プロとして、またメーカー育成ドライバーのスタート地点に立つことができません。

  • 小高一斗 選手/37号車TOM'S

今シーズンは、スーパーフォーミュラ・ライツ参戦4年、スカラシップを獲得して現在所属するトムスでは3年在籍し、晴れてスーパーフォーミュラ・ライツを卒業することとなりました。おめでとうございます。

きっと心配だった関係者、ご家族、胃が痛い思いをされてきたかもしれませんね。

もちろんご本人が一番重責を感じていたのは想像に難くありません。
彼は、飄々としていて、力強いというよりも、イマドキの優しい男の子。
だからこそ、大丈夫かな~と心配しつつも、こちらもふんわり応対していました(笑)。

  • 2020年第16戦で初優勝 この時の彼を支える周囲の関係者の喜びもよく覚えています

長年、若手の育成に携わるレジェンドドライバーで育成の先生でもある関谷正徳さんに、ふと今のコということで質問を投げかけたら…。

イマドキの子は、生活に困っていないからハングリーさが足りない、ソフトなイメージだとおっしゃいました。

これ私も全く同じ。ただコストもかかるのがモータースポーツですので、昔から(ざっくりでごめん)おぼっちゃまも多いのは確か。

ハングリーどころか、とても素敵な環境のもとで育った方もいっぱいです。海外だと貴族ご出身もおりますしね。極端すぎますか比較が…(笑)。

わたしは、運動を“水を飲まずにうさぎ飛びを頑張った昭和世代”(水を飲もう、うさぎ飛びは膝を痛めるからあまり良くない)なのか、“根性が服着て歩いている”、そんな全身に闘志みなぎる姿をドライバーとして妄想してしまいがち(妄想です妄想)。

でも、時代は変わっているんです。
サーキットには、才能溢れるおしゃれ男子がいっぱいですしね。私の思考は老害と愚息にも言われますが、思考を「今」に合わせないといけません。

かと言って、プロのレーシングドライバーに心底なりたい気持ちは、もちろん変わらず。本質は変わる訳がない。

レーシングドライバーを目指して、オーディションを受けに来る方は減っていると聞きますが、出生率だって下がっているのでそこは子どもが少なくて困っているのは、この業界だけではなく…。
〇〇離れ…は「数」だけに限って言えば当たり前のことですので、最近はこの言葉も聞かれなくなりました。

そんな分母は小さくなったかもしれないけど、プロを目指している男子は、一見ソフトに見えても“鋼のスピリッツ“を根底に秘めている。これからも応援しつづけます。

前置き長すぎ問題…、すみません。スーパーフォーミュラ鈴鹿最終戦、トムスのピットで彼を見かけ、ぜひおめでとうを言いたかったし、お話も聞きたいということでプチインタビュー!どうぞ!

小高一斗選手へインタビュー

―――遅くなりましたが、おめでとうございます!率直な感想をお聞かせください!

小高選手:ありがとうございます!今年チャンピオンを取れなかったら…とも思っていましたが、実質3年目、今回チャンピオンを取れてまず安心しています。

―――シーズン中、たくさんの葛藤もあったでしょうね

小高選手:勝ち数でいったら、自分の方が圧倒的に多かったのですが、オートポリス大会で3レース、ノーポイントという結果で終わってしまいました。これはかなり痛かったですが、ポイントシステムが有効ポイント制ということが手助けしてくれて、自分にとってとてもラッキーでした。

タイトルを決めた岡山大会では、練習から調子が良かったわけではなく、予選に向けてとても不安でしたが、スタートが一番決まってトップに立つことが出来ました。
それが勝因となりタイトルを決めることができて本当に良かったです。

―――ご両親も心配なさったでしょう(私も勝手に親みたいな心境で質問)

小高選手:家族は、毎戦応援に来てくれて、心配をかけたと思っています。お世話になった関係者のみなさんにも良い報告が出来て、とりあえず良かったです。

―――これでスタートラインに立ちました

小高選手:はい、先輩たちが歩んでいる道と同じ道に立て、そして“最低限の条件”を満たすことが出来ました。自分が与えられたものは、しっかり出来たということで安堵です。
来季は何も決まっていないですが、また頑張って行きたいと思います。

―――SNSを見ていたら、F1日本GPのあと、ディズニーランドに行かれてましたねえ

小高選手:昔から仲良しの子が、F1ドライバーなんですけど(スクーデリアアルファタウリ 角田裕毅選手)、その子がご飯を食べていたらディズニーランドに行きたいと言い出したので、いいよ~と言って、大湯くん(Honda大湯都史樹選手)とチケットを取って3人で行って来ました。

―――周囲に気付かれませんでしたか?

小高選手:祝日明けで人がいっぱいだったんですが、誰にも気づかれませんでした。

―――その仲良しのF1ドライバー 角田裕毅選手との出会いは?

小高選手:小さい頃からずっと一緒で家族ぐるみの付き合いです。一緒にカートをやっていました。
F1日本GPの鈴鹿は一緒に行って、親同士がキャンプをしながら角田選手を応援していて、二人でそこに顔を出しに行って、ふたりで鈴鹿から帰って来て…。大湯くんとご飯食べてディズニーシーへ行きました。

―――彼の存在はレーシングドライバーとしてはどう映りますか?

小高選手:レーシングスーツ脱いだら親友です。最近は本当に首とか太くなっていて、驚きました。レースの話はほぼしません。スケールが違いすぎて、同じ話はできないですね。頑張って!というくらいです。
なんか病んでそうだなというときは、お互い連絡を取るくらいですかね。彼と同じようにというのは無理ですが、ちょっとでも彼に近づけるくらい、国内なら自分の名前も知っている人がたくさんいるというくらい、来季からまた頑張りたいですね!

  • 左:小高選手、右は淳さん(山田淳監督)。サングラスとマスクでお顔が誰だかさっぱりわからないけれど…

―――チーム監督の山田淳さんは何とおっしゃってました?

小高選手:良かったと言ってくれました。チームのみんなにも心配をかけていたので、安心してくれました。どうしようかと思ったと言われましたので…。来季からまたみなさんの期待に応えられるように頑張ります!

ありがとうございました。メーカー育成ドライバーもコロナ禍で足踏みをした感あり。
ここから仕切り直して、先輩たちの足元を脅かす存在になっていって欲しいですね。

先輩たちもシートを奪われないよう奮起するだろうし、若手は刺激になって良いです。

年齢関係なく、何事も頑張る人たちは大好物!
これからも応援しますからね~!ガンバ!

(写真:トヨタ自動車 テキスト 大谷幸子)

[GAZOO編集部]