世界で戦う準備はして来た!その近い将来に期待を込めて ~TOYOTA GAZOO Racing宮田莉朋選手~
SUPER GT第3戦の直前、TOYOTA GAZOO Racingから「宮田莉朋選手が、WECのチャレンジドライバーに選出」とアナウンスがありました。これは喜ばしいことですから、鈴鹿でぜひお話を伺おうと思っていました。コロナ禍が落ち着き、“世界”がまた近くなったなと、いや、まったく関係ないか…。
ドライバー育成プログラムの記憶をちょっとさかのぼると、過去にはF1を目指して出来たシステムでした。古くてすみません、リアルタイムで記憶しているもので…。
当時の2000年頃、片岡龍也選手、平中克幸選手から始まり、ヨーロッパのF3チームへ送り込み(育成ドライバーとして初めて海外に行ったのは、平中克幸選手)、上のカテゴリーを目指すメーカーのサラブレッドのルートでした。Hondaさんも、当時のユーロF3やインディカーレースへドライバーを送り込んでいましたね。
中嶋一貴さんや小林可夢偉選手、移籍されましたが平手晃平選手がヨーロッパに武者修行に出たのを皮切りに、世界の門戸を若手ドライバーが叩くシステムがしっかり確立されたんですよね。
トヨタ自動車の海外へのドライバー育成プログラムが止まったのは、F1を撤退した時かな。あの当時は、海外に小林可夢偉選手が残っていましたが、F1を諦めなかった小林選手とメーカーは関係が途切れたように思います。
その後、2012年にWECに戻り参戦。中嶋一貴さんがドライバーとしてシートを獲得。小林可夢偉選手は、WECに関して言えば2013年に当時のLMGTE-PROクラスにフェラーリを駆るチームから参戦していました。その後2016年にようやくトヨタ自動車のドライバーとして、WECのLMP1クラスに参戦しました。
今思えば、いろんな経緯がありましたね。2016、2017年、平川亮選手をヨーロピアン・ル・マン・シリーズ・LMP2クラスに送り込み、2019年に山下健太選手も同様に参戦、ル・マン24時間では速さも見せつけました。確認すると、ドライバー育成プログラムも名称が変わっているので、このWECチャレンジドライバーとしての参戦は、山下健太選手が最初になるみたい。ちょっと記憶違いをしていました。
そうそう2017年、スポットでLMP1クラスのル・マン24時間に参戦したのは、国本雄資選手でした。2016年にスーパーフォーミュラのチャンピオンを獲得し、翌年、3台体制で参戦した3台目に乗りました。
懐かしいなあ。2012年にトヨタ自動車がWECに復帰した時期を盛り上げた2人、ステファン・サラザン選手、ニクラス・ラピエール選手と走ったんだ。10年前にル・マンに仕事で行った時に沢山写真を撮ったし、すごく気さくな方だったなあ。ご参考まで(笑)。
昨シーズンから、平川亮選手がハイパークラスでレギュラーシートを獲得しましたが、実力が認められ、本当に頑張っていますし、亮なら出来る!と思っていたので、亮が8号車にいるのはもう当たり前な光景です。
過去の彼のWECへの道筋は、チャンレンジプログラムという名称ではなかったですが、これでWECのチャンレンジプログラムが定着していくのかなと思います。平川選手の頑張りが、道を開いたと言っても過言ではないと思います。
中嶋一貴さんは、TGR-E(TOYOTA GAZOO Racing Europe)の副会長となり、小林可夢偉選手はドライバー兼チーム代表。今後は、ますます安心して日本からドライバーを送り込めますよね(希望的観測)。そんなタイミングから、また若手ドライバーの宮田選手が抜擢されたことは喜ばしい限りです。おばあちゃん感覚…。
来年のWECは、またカテゴリーがいろいろと変わりますので、ハイパーカーのクラス以外への参戦も考えられるし?他の海外カテゴリーにも進出する?などなど、いろんな選択肢が広がり(勝手に広げてる)、夢もまた広がりますね。様々なことが起きる世の中での、この「タイミング」というのも、鍵を握ってますので、今、頑張るドライバーのモチベーションになります。
前置きが長くなりましたが、宮田選手と話していても、なるほど彼が選ばれる訳はそこにあったかと、気づかされました。
昨年末、ハイパーカーのシミュレーターのトレーニングに呼ばれ、そこからこの挑戦が始まったそうです。今後は海外主動ということがメーカーから発表されています。今回の100周年記念大会のル・マン24時間へも帯同されていましたね。鈴鹿で少しの時間でしたがインタビューを試みましたのでどうぞ。
宮田莉朋選手 インタビュー
―選ばれた近況をお聞かせください
宮田選手:「特に何もありません。来年、日本にいるのか、いないのかもわかりませんし、何に乗るのかも決まってません。平川選手のように、国内のカテゴリーも走って海外もとなるのか、それもわかりません。
ただ自分自身では、国内と海外の両立も大変ではあるけれど、そうなったらやれると思っています。ドライバーは乗る事が仕事だし、乗れる機会があるのは幸せなことですからね」
と、とても頼もしい言葉を聞くことができました。
―最初にこの知らせを聞いたときのお気持ちは?
宮田選手:「最初に聞いたときの気持ちは、特に何もなかったです。昨年12月にシミュレーターテストで向こうに行っていて、向こうの方々の評価が良かったのだと思います。
向こうへ行く際に自分が重要視していたのは、英語を話せること、ドライバー、スタッフ、TGR-Eの方々とコミュニケーションを取ることが大事だと思っていました。そんな思いで行って、向こうに滞在していた間、自分の中ではとても楽しめました。
シミュレーターで速く走ることはいつも通りですし、コミュニケーションを取る事は、しっかり行い、シミュレーターが終わったあとはクリスマスパーティーをして、みなさんに溶け込んでいったつもりでした。英語は以前から勉強をしています、海外に出たいと考えていたので…。」
―今後の目標は
宮田選手:「もちろんハイパーカーに乗れることが一番の目標ですが、何に乗るのか決まったら、乗れる日を楽しみに待ちたいと思います。そして、この日本人ならやってくれる、と思ってもらえるよう、あとはベストを尽くすだけです。」
ほんと常にポジティブで力強いコメントをくれる莉朋くん。楽しみですね。
ル・マン24時間を振り返る
そしてこの原稿をル・マン24時間が終わるまで寝かせていました(すみません)。帯同する宮田選手の姿は少しだけテレビで拝見できました。テレビだったようなSNSだったような?
今年のル・マン24時間は厳しい環境下で戦ったTOYOTA GAZOO Racingでしたね。モータースポーツをしているだけだったのに、ルールにないBoP(性能調整)が突然課せられ、正直残念でなりません。ここまでの100年の歴史の中に、日本のメーカーの存在をなきものにしたいのか、とまで思ってしまうほど憤りました。
起こることが何もかも…と被害妄想にまでなってのテレビ観戦でしたが(笑)、モータースポーツに携わる人間の憧れの地であるのは変わりがありません。その地に「日本」を登場させ続け、新たな歴史を築いて欲しいです。
今回のル・マン24時間では、日本のメーカーとして水素エンジン車両のコンセプトカー『GR H2 Racing Concept』も発表しました。この事の意義もしっかり受け止めてもらいたいんですよね。お茶を濁されたカタチでスタートしたル・マン24時間に感じたので…。ごめんなさい。何もかも私は疑心暗鬼となってしまったので、追記しておきますね。
もちろん、宮田莉朋選手が世界の大舞台に羽ばたくのを楽しみにしています。ぶっちゃけ、国内カテゴリーから来季離脱となるかも?となると、TGR陣営にとっては大きなダメージですよね。平川亮選手も。
スケジュールがどうにかなるなら?ならないかもだけど、SUPER GTであの走りをみたいですしね。スーパーフォーミュラも今季は2人とも、そしてチーム代表の小林可夢偉選手もいるけど、この先どうなるかわからないし…。スケジュールがますますタイトになるのもイヤだし…。
世界に出ること、今はこれが最優先だから、テレビやSNSによってリアルタイムで見られるので我慢しますかね。日本のサーキットで見られることも少なくなるかもしれません。
ぜひ、サーキットに足を運んでいただいて、世界で活躍する小林可夢偉選手、平川亮選手、宮田莉朋選手の姿をしっかり見に来てください! 来季、日本で見られなくなるかもしれないと思って(笑)。居て欲しいけど。
まずは、宮田選手おめでとうございます! 今季もまだまだあります。タイトルを獲って花を添えて海外に出るのも良いかもね! では、また!
(写真:トヨタ自動車株式会社、折原弘之、大谷幸子 /テキスト:大谷幸子)
レポーター(お)ねえさん・大谷幸子
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