ドイツ人モタスポオタクが見た、日本のサーキットの信じられない光景

今回は、ドイツからやって来たイェンス・ソボッタさんに原稿をお願いしました。以前から日本のモータースポーツに詳しい方がヨーロッパにいらっしゃるのをSNSで拝見していました。

しっかりモタスポ情報をチェックしていて、コロナ禍の前に確かSUPER GT×DTM特別交流戦の時だったと思いますがメッセージをいただいたことがあります。残念なことに、特別交流戦にも来られていたようですが、お目にかかることはできませんでした。同じメディアセンター内にいらしたんだろうけどね。

そして先月、スーパーフォーミュラ最終戦の前に連絡をもらっていましたが、走り回っていた私はもちろん気づかず(苦笑)。しかし、鈴鹿サーキットのメディアセンターで今回ようやくお会いすることが出来ました。

どうも変な外国人(失礼)がいるなあと見ていたら、その方がモタスポオタクのイェンスでした。オタクと言っても、お仕事としてもモータースポーツに関わっているのでめちゃくちゃ失礼な言い方もしれませんが、彼ね、レースの環境を含めてとっても詳しくて、オタク(誉め言葉)という言葉がちょうど良いんですよね。イェンスもオタクという日本の言葉を理解していたので、許してもらいましょう。

ドイツから取材に来ていたのですが、大変!彼の写真を撮るのを忘れていた…。ごめんなさい!取材で来日してから、たくさんの関係者とコミュニケーションを取って、精力的に取材をしていました。

一か月ほど日本に滞在されていましたが、私、この一か月がほとんど家におらず(笑)。時間があったら鎌倉に招待したのですが…。残念ながらメディアセンターでお話するのみとなりました。

しかし、モータースポーツ文化が根付いているヨーロッパから見たら、日本のモータースポーツはどう見えるのだろうか?

ということで、せっかくなので彼に原稿の執筆をお願いしたところ、快諾していただけたので、今回は、彼の感じた日本のレースを紹介したいと思います。なかなかピックアップするポイントがね、いい感じ。もっと書いてもらえば良かった!それでは、どうぞ。

イェンス・ソボッタ氏からみる日本のモータースポーツ

私は日本が大好きです。そして日本のモータースポーツも大好き。13年前、フリーランスのジャーナリストとしてモータースポーツの取材を始めたのは、モータースポーツに対する私のモタスポ愛と情熱をシェアし、日本のモータースポーツをもっと世界中に広めるためでした。

しかし、ドイツ出身の私が日本のモータースポーツを追うのは言葉の壁があったり、時差があったりと容易ではなく…。13年前、海外ではほとんど報道されていませんでした。

いまではSUPER GT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久まで放映されるようになり、光栄なことに私もたびたびライブコメンタリーをさせていただいています。

しかし、日本のモータースポーツをテレビで見るのと、サーキットで生のレースを見るのとは全く違います。

残念ながら、現在日本に行くには飛行機代が高いです。しかし、より詳細な情報を提供するために、鈴鹿サーキットとモビリティリゾートもてぎで行われたスーパーフォーミュラ最終ラウンドとSUPER GTのシーズンファイナルに行って来ました。

日本でのレースを観るのはこれが初めてではありません。2019年のSUPER GT×DTM富士のドリームレースにも行きました。その時、GTアソシエイションの坂東正明代表から、「何か気づくことがあると思うから、チャンピオンシップのラウンドにも来てください」と言われたんです。

パンデミックがようやく終わった今、私はその意味を体感することができました。以前行ったドリームレースの雰囲気は、独特なもので、少しリラックスしたカジュアルなものでした。

しかし今回は、その雰囲気を表現する言葉はひとつしかありません。エレクトリック(電気が走った)! レース当日だけでなく、ファンは自作の横断幕を掲げたり、旗を振ったりと、このスポーツへの情熱を存分に傾けていました。スーパーフォーミュラ最終ラウンドの鈴鹿では、私はついに伝説のファン、ジョンくんを見ることもできました。

レース会場は信じられない光景でした!この私が感じたエレクトリックな日本のサーキットの熱気に匹敵するものは、ドイツには無いと思います。

例えば、レースが終わったあともファンはガレージの後ろでヒーローが出てくるのを辛抱強く待っているんです。しかし、ヨーロッパではドライバーはほんの一握りのファンに挨拶するだけで、すぐに姿を消してモーターホームに帰ってしまうことが多いのです。

日本のパイロットたちは、ファンとの時間を大切にし、おしゃべりや写真撮影、サインに応じてくれます。ピットウォークやキッズウォークなど、公式に指定されたファン・セッションもあります。

そして、それはドライバーやレースクイーンだけではないのです。 J SPORTSの解説者、サッシャさんと話したときも、一緒に写真を撮るファンがたくさんいました。

誰もが祝福されるヒーローなのだと感じました。私でさえ、もてぎのパドックでチーム・アップガレージのマスコット、アップちゃんに突然抱きしめられたとき、特別なムードを感じました。

また、スーパーフォーミュラやSUPER GTのパドックのコンパクトさに驚きました。新しいGT3時代のDTMでさえ、巨大なホスピタリティがいくつもあるのに、日本にはそんなものはないですね。競技そのものが中心であって、マーケティング重視ではないようです。

このアプローチからヨーロッパのモータースポーツは、多くを学ぶことができると思います。

  • JRP上野禎久 代表取締役社長と近藤真彦 会長

スーパーフォーミュラのレース(第7戦)が不運にも終了した後、JRPの近藤真彦会長は深々と頭を下げてファンに謝罪しました。ヨーロッパでは考えられないことです。特に彼のような地位のある男にとっては…。

ファンが最優先です。誰もが楽しめて、子供連れの家族のためのアクティビティもたくさんあるのが日本のレースです。

  • SUPER GT優勝の宮田莉朋選手・坪井翔選手(36号車 au TOM'S GR Supra)

ただレポートを書くだけではなく、とても恵まれていると思ったのが、史上5人目の二冠王となったスーパースターの宮田莉朋選手と、レジェンドドライバー・立川祐路選手の引退レースを観られたことです。

彼の引退セレモニーは感動的でした。ひとつの時代の終わりでしたね。しかしすべてにおいて、終わりには始まりがあります。私はその始まりの瞬間に立ち会いたいですね。また必ず私が愛する国に戻って来ます。両手を広げ歓迎してくれた国に!ありがとう、日本!

イェンス・ソボッタ

ありがとうございました!おもしろいところを引っ張りだしてきましたね。そもそも日本のサーキットは海外に比べてキャパが少ないので、巨大なモーターホームが置けないのも納得ですし、またそういう文化がなかなか育ちません。費用の関係もありますが。

またマーケティングよりもファン優先でという考えは、もちろんマーケティングをおざなりにしているわけではないはずです。モータースポーツに参戦することのメーカーの考え方はシビアだと私は思っています。

それと参戦されるスポンサーさんもメリットが無ければレースに出資はしないでしょう。だからファン優先とマーケティングは別の話と私はとらえます。

ただ、ファンの為にオーガナイザーが考えて動くことは、とても良いことですし、スーパーフォーミュラの近藤会長の動きは他方面から評価していただきたいポイントでしたから、彼が気づいてくれて良かったと思います。

円安でなかったら、私がドイツに行って学びたいのですが、しばらくお預けかな。また日本に来てくださいね! その際は、観光もしましょう!私がガイドをしますからね!
では、また!

テキスト:イェンス・ソボッタ、大谷幸子(翻訳)
写真:GTアソシエイション、日本レースプロモーション

[GAZOO編集部]

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