高みを目指し、プロのコ・ドライバーへ ~北川紗衣さんと素敵な時間 vol.1~
全日本ラリー選手権2年連続チャンピオン、コ・ドライバーを務める北川紗衣さん(以下、さえちゃん)。実は以前から私はそのお人柄に惹かれていました。
いつかチャンスがあればじっくりお話をと思って、もう数年経過しちゃいましたが、このたびそのミッションをようやく達成しました。
プライベートで冬の北海道へ極寒旅をしようと、親友と共に旅行に出たのですが、最後の最後、旅の最後に時間をいただきインタビューを敢行してしまいました。
楽しい時間に仕事を持ち込むのをずっと躊躇していたけど、やっぱりもったいないので…。杓子定規な言葉のやりとりもあまりしたくないので、お互いリラックスしたカタチでお話しが出来たことでとっても素敵な時間となりました。
親友とも併せて素敵な時間がいっぱいでしたので、ますます好きになりましたね、冬の北海道(ちなみにクルマはレンタカーですので、さえちゃんの愛車ではございません、あしからず)。
そもそも彼女との出会いは、SUPER GTの現場でした。39号車のサードチームのピットで初めてお目にかかり、その時は新しいマネージャーさんとまず認識しましたがそれだけではなかったのですよね。
当時所属していたサードチームのヘイキ・コバライネン選手が、チームのプロジェクトとして全日本ラリー選手権に参戦することとなり、そのコ・ドライバーを務めることになったのが、北川紗衣さんでした。
彼女がコ・ドラとなった経緯も今回知ることとなるのですが、この出会いはそれまで以上にラリーにも興味を持つきっかけともなりました。
昨年、ラリージャパンのお仕事を通しても、仕事目線で拝見してても身近に感じるようになったラリー。
彼女もラリーも深掘りする機会がなかったので、北海道極寒旅は、有意義なものとなりましたね。もう北海道に戻りたいですね(笑)。私だけ枯れた女子旅ですが、楽しい時間からインタビューを切り取りましたので、どうぞ!
――――九州ご出身の北川さんが、北海道に住んでいる理由は?
北川さん:主人が北海道出身なんです。実は、ラリーもちょこっとやっていて、全日本ラリーに出ている時に知り合いました。
そして当時住んでいた長野から2011年に結婚して、北海道に住まいを移しました。北海道へは勢いで来ましたね。失敗したかも?(笑)。
福岡で育ったので、家族は九州で結婚すると想像していたと思います。両親はとても驚いていました。しかも、サラリーマンと結婚したのではなく自営業でしたので(ずっと北海道に住むということだと思うのですが)またそれにも驚いていました。
友だちも近くに居なくなるし、文化も違うなどということは一切考えないで北海道に来てしまいましたね。
――――ご結婚されてもラリーを続けて来られたのですね
北川さん:結婚する前は、ラリーは仕事の合間にプライベーターとして楽しくやらせていただいていました。
結婚をしてからは、コンビを組んでいたおじいちゃんドライバーさんが、さえちゃん続けていいよね!と言われてそのまま今に至ります。
――――これまで2度、全日本チャンピオンとなった訳ですが、プロとしてしっかりやっていこうと思われたきっかけは何ですか?
北川さん:私のここまでの道程は珍しいパターンだと思います。上のカテゴリーに上がるには、プロのワークスチームやクラブに関わって、ラリーのあらゆることを学んでからステップアップして行く、WRCなどに行くのが王道だと思っています。
私はずっと下のカテゴリーでやっていたのですが、ある時、他の方と組んでWRCに行くチャンスをいただきました。2012年の事です。
英語が出来る、ある程度の時間を作って行ける方ということで連れていってもらいました。ラリーでミスはしなかったけれども、自分のレベルの低さを感じましたね。
2013年は、別のチームでWRCに参戦して、2年連続で行くことになったのですが、2年目はトップドライバーが監督されるチーム(三菱、田口勝彦さん)で行かせていただきました。
そこでWRCのコ・ドラの振る舞いを見て、あまりにレベルが違うことにショックを受けました。そこでもコ・ドラの仕事を学び、全然できていないことが良くわかったのでどうやったらそこに行けるのか、教えていただけるよう自ら頼み込みました。
まず何が出来ないのかもわからない…ということで、一から学ぶ決意をしました。上のカテゴリーに行きたいけれど、どうやったらそこに辿り着けるのか…。
上のカテゴリーのドライバーの横に乗る(コ・ドラになる)には、まず経歴を聞かれます。自分には何もありません。必要なのは、スキルを全部上げること。速いクルマに乗れることを証明しないといけない、車格を上げないといけないということで、ひたすら修行に励むことにしました。
そして、ステップアップの為に、仕事の都合で行けない方の代わりに自分が乗ることも積極的にしていました。そんな矢先、シーズン途中でヘイキさんがラリーに参戦することになり、コ・ドラを探しているという情報がショップさんの方に入ったそうです。
これが実は私にとっては、好都合でした。シーズンインのタイミングで“出来るコ・ドラ”のみなさんは既にシートがあり参戦していました。
シーズン途中で空いているコ・ドラの中で、英語が出来て、ある程度ミスなくこなすスキルがある方…ということで、修行中の私を推薦してくれた方が居たんです。
そこで白羽の矢、と思われるかもしれませんが、とてもシビアな話であくまでもお試しということで、まず一回乗らせていただくことになりました。それを経て、ヘイキさんからOKをいただき、正式にコ・ドラを務めることとなりました。
周囲のみなさんに本当に良かったねと言われて、まるでシンデレラストーリーみたいになった訳です。
当時は今ほどスキルもないし、マネージャー仕事もやったことがない、コマ図の英語の読み方、ラリー用語の英語を基礎から学び直しました。出来ないことを素直に認め、私の周囲にいらっしゃる知見のある沢山の方々に教えていただきました。私は本当に恵まれています。
そして、これがきっかけとなって、ヘイキさんがサードチームに私のことをお話ししてくださり、SUPER GTのマネージャーとしてチームに帯同することになりました。
――――今、思い描く未来像、将来はどうしていきたいですか?
北川さん:これまでいろんな人に助けてもらって来たので、それをお返ししたいですね。運営側に行くなどいろんな仕事がありますよね。
これまでラリー界を支えて来られたトップのみなさん、中堅世代の方々の体力が限界になってやめるとおっしゃる前に、次世代の方々にそのノウハウを繋げるクッション的な役割をこなしていきたいです。
また、若い世代がチャンレンジしたい時に、そのマネージメントやコーディネートができればとも思っています。多分仕事にはならないかもしれませんけどねえ(笑)。
ヘイキさんがドライバーとしてやられている限り、ヘイキさんからNOと言われない限りは、コ・ドラをずっと続けたいですね。
ヘイキさんと自分の引退のタイミングは将来的に全く異なると思います。私は日本でずっとやっていきたいです。ヘイキさんは、日本に来なくなっても続けられているでしょうし、タイミングは人それぞれ。
この先ヘイキさんが日本で走らなくなった時に、自分をコ・ドラとして選んでくださるドライバーがいれば、現役で続けていると思いますが、それもわからないですしね。
また事故の心配もあって、命がかかっているのも感じます。世界的にはコ・ドラが亡くなる事故も起こっています。
そのことも考えると、自分のモチベーションと身の振り方も考えて…きっとスパッとはやめず、何か続けていると思います。ヘイキさんは、チームのコーディネートに興味があるとおっしゃっていましたが、でもプレーヤーとして活動される人生の方が長いでしょうね。
…vol.2へ続く!
〇関連ページ
Rally Team AICELLOのYouTube
(写真、テキスト 大谷幸子)
レポーター(お)ねえさん・大谷幸子
随時、クルマに関する様々なイベント・テーマでレポートしていきます!
[GAZOO編集部]
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