心のスーパーカー 2代目トヨタ・セリカXX・・・懐かしの名車をプレイバック
出会いは偶然だったものの、その後はすっかりほれ込み、結果的に3台を乗り継ぐことになった「セリカXX」。そのうちの一台を現在も所有しているという西川 淳は、XXのどこに魅了されたのだろうか。
師匠との中古車店巡り
自分で言うのもなんだけれど、私は昭和40年男でスーパーカーブームの申し子だ。あの漫画がなかったら、全く違った人生を送っていたに違いない。当時、ミニカーやプラモデルにハマるくらいのクルマ好きは男子であればフツウだったから、子供心に「将来絶対に乗ってやる!」と思わせるほど強烈な出会いとなったあのブームは、そしてまがりながらもそのとおりになった人生を振り返ってみれば、そのゆくえを決めた大きな出来事だったというほかない。
そんな筆者が18歳になると同時に免許を取って、雑誌の中古車情報をめくりにめくりたどり着いたターゲットは、実のところS130の「フェアレディZ」だった。確か5年落ちで70万円くらいが相場の最安値だったと思う。要するに乗り出し100万円くらいの予算で考えていた。
クルマ好きの師匠だった叔父の「ローレル」に乗せられて、大阪の中古車ロードである“ソトカン”を走り、いろんな130Zを物色した。Tバールーフのマンハッタンカラーはかっこいいけれど高かった。2+2の2リッターならなんとかなるか。でも白は嫌だなぁ。なかなか良いタマが見つからない。諦めてまた次の日曜にでも別の中古車銀座へ出かけてみるか、なんて話をしながら赤信号で止まった。ふと角の中古車店を眺める。1台のクルマが目に飛び込んできた。
フェラーリの面影
「おじさん、あのクルマが見たい!」。それが私の2代目セリカXXとの出会いだった。もちろんセリカXXは知っていたし、憧れのモデルではあった。けれども昭和56年に登場したばかりで当時はまだ現行モデルだったから、ハナから検討外だった。ところがその個体は150万円を切っていた。おそらく当時の最安値。しかもカラーはちょっと朱色がかった赤と黒の2トーン。憧れていた色味だ。マニュアルトランスミッションで2リッターのSOHC、つまり「G」グレードだったことが安い理由だった。それでもサンルーフとデジパネは付いている!
もう予算のことなどどうでもいい。とにかく欲しい。親に頼んでローンを組めばなんとかなる。実は同行した叔父もかつて学生のころに赤に白レザートップの「セリカ」(A20)に乗っていたから、甥(おい)が同じ車名を持つモデルに興味を持ったと知ってがぜん、背中を押してくれた(手付金の援助をしてくれた)。今でも中古車店取材などでひと目ぼれし、購入に至ることがある。すべてはこの経験があったからだろう。
欲しかったモデル(130Z)のことなどすっかり忘れてしまうほど、どうしてセリカXXにほれたのか。たぶんそれは私が子供のころに将来乗ると決めていたフェラーリの「BB」とよく似た要素があったからに違いない。リトラクタブルライトで赤と黒の2トーン。形はまるで違うけれど、そんなことを気にするようになるのはもっとひねくれてからのこと。若いころはすべてがみずみずしいまでに記号的だった。
今も所有する最初の愛車
最初のクルマだったから、思い出もたくさんある。なかでも北海道まで運んでドライブし、友人と車中泊をした翌日、大型バイクに衝突されハッチゲートがダメになったことは一番の思い出だ。それを機に、リアゲートウイングを付け、所々を北米輸出仕様にドレスアップした。ピットイン青山で買ったのだ(今もあの店を見るとセリカXXを思い出す)。グリルに「TOYOTA」の金バッジ(プラスチック)が輸出仕様の証し。ハンドルをイタルボランテに替え、フロアマットはrenomaだった。
夜な夜な信貴生駒スカイラインへ走りに行って、腕を適当に磨いた。買って1年もたつとSOHCゆえさほど走らないことに気づいてはいたし、金持ちの友人が乗る「Z31」「ソアラ」「マークII GTツインターボ」などの速さについていけないことも悔しかったけれど、それでもマニュアルトランスミッションを駆使して一生懸命走れば大いに楽しめるということをフェラーリ風のセリカXXは教えてくれたものだ。
社会人になって『カーセンサー』編集部に異動し、念願のBBを手に入れてなお、セリカXXへの思いは断ち切れなかったのだろう。“世界の名車”を乗り継ぐようになってからも、2度ほどA60セリカXXを買っている。いずれも「GTツインカム24」で、1台は最初の個体と同じ2トーンの前期型、もう1台は貴重な後期型「スーパーGTホワイトリミテッド」。若いころに買えなかった高性能グレードだ。平静を装いつつ、あのころ実は悔しかったのだと思う。後者は今も所有している。
それでも最初の愛車=原点であったセリカXX 2000Gは今もなお“私の名車”であり、“心のスーパーカー”なのだと思っている。
(文=西川 淳)
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