【東京オートサロン2019】パーツメーカー取締役営業本部長が30年かけて育て上げた愛車を展示した理由とは?

東京オートサロンといえば、各社ともにパーツを含め最新のカスタマイズを提案する場として注目を集めているイベント。それだけにメーカーブースに展示される車両は、そのメーカーが力を入れていく車種やパーツがディスプレイされるため、現行車種や人気の高いモデルが並ぶことが多い。
そんな中、チューニングパーツメーカーHPIのブースには1972年式のGC10スカイライン、通称ハコスカが展示され、来場者の注目を集めていた。

旧車ブームが再燃している今、メーカーブースに旧車が展示されることは少なくはない。しかし、HPIといえばシルビアやスカイラインなど比較的高年式(とは言っても90年代以降)から現行車種を中心としたレーシングパーツを供給しているイメージが強い。昨年もS15を展示していたことからも、ハコスカのような旧車はメーカーの視野には入っていないと思われていた。

今年のHPIの顔としてハコスカを採用したのは、この車両に30年乗り続けてきたオーナーであり、HPI取締役営業本部長の役職を務める堀之内さん。
「おっしゃるようにHPIはシルビアなどに対応したレーシングパーツを数多くラインアップしています。しかし扱っているオイルクーラーなどは汎用性が高いため、車種を問わず使用できます。さらにサーキットを走った場合など、旧車の方がシビアに油温管理しなくてはいけないため、当社の製品をさらに広いユーザーに訴求できればと考えた結果、自分のハコスカを今回展示したというわけです」

旧車の集まる走行会を中心にこのハコスカでサーキットを走っていたという堀之内さん。その経験から冷却系の強化は必須だと感じてきたという。キレイに磨き込まれた車体にはHPI製のオイルクーラーやデフクーラー、ミッションクーラーなど汎用品として用意される冷却コアが装着されている。
さらにラジエターはHPIの特注品を装着することで、サーキットで周回を重ねても安心できる現代流のスペックに強化されているのだ。
また、ミッションもHPIの6速強化タイプを使用。本来はシルビア系に向けた製品ながら、L型エンジンのケースに合うように加工が施されているという。
ちなみにエンジンは亀有のピストンやTOMEIのカム、ソレックスのパイ50キャブなどを利用し定番のL2.8改3.1L仕様に変更され、最高出力は320psまでアップ。この仕様でサーキット走行を楽しむのであれば、各部の温度管理が必要になるというのもうなずけるだろう。

機関系のアップデイトはもちろんのこと、やはり東京オートサロンで一般ユーザーにアピールするにはそのスタイリグも重要なポイント。多くのファンが存在するハコスカといっても、単なるノーマルフォルムでは900台を超える会場内で注目を集めることはできない。
そこで、フロントリップは大阪にあるカスタムスポーツマンディ製を装着。TSサニーなどで使用されるボックスタイプとなっていて、ハコスカとの組み合わせはあまり見かけないスタイリングということもあり高い注目度を集めていた。

さらに、ボンネットやバリス製改リアディフューザーなどカーボンパーツも多数装着。ベースは旧車であっても現代のチューンドカーにも負けない『走れる旧車』をアピールしている。
同時にブレーキもフェラーリ・F50のパイ355ローターを組み合わせるなど、現代流のカスタム技術がいたるところに取り入れられているというわけだ。

ここ10年はレストアを主体としたカスタムが行われていたという堀之内さんのハコスカ。長く乗り続けているこのハコスカには格別の思い入れがあるという。
若い頃にやりたかったカスタマイズメニューや、技術が進化した現代のパーツなどを思い通りに試せるようになった現在は、ハコスカをさらに楽しむためのセカンドステージに突入しているという。

「今回のハコスカをきっかけに、旧車オーナーの中でも冷却性能を考えた時にHPIの選択肢がもっと増えてくれれば嬉しいですね。今後はユーザーが多い1Gツインターボや7Mなどの車種にも専用品をラインアップする可能性がありますよ」
好きこそ物の上手なれとはいうが、好きで実際に普段から乗っているからこそ本当に必要なモデファイ箇所が見えてくる。
HPI×ハコスカのアプローチは、単に旧車ブームに乗っかったのではなく、自分と同様に長く旧車に乗るオーナーをサポートし、これから旧車に乗りたい人に快適を提供したいという営業本部長たっての希望でもあり、同社のパーツをさらに広く伝えるためのコンセプトが隠されていたというわけだ。

(テキスト:渡辺大輔 写真:平野 陽)

[ガズー編集部]

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