全国のチェリーオーナーから頼られる、45年間チェリーX-1(PE10)に乗り続けてきた名物オーナーの素性とは?

「18才で免許を取って最初に買ったのが、このチェリーX-1でした。それからずーっと持ち続けて、もう46年目になります。参加したイベントなどで『イチバン長く所有しているで賞』みたいなのがあると、けっこうな確率でいただいてしまいますね(笑)」という竹口英三さん(64歳)。

日産・チェリーといえば、2ドアクーペにオーバーフェンダーが装着された『X-1・R』を真っ先にイメージする人も少なくないと思うけれど、1970年の発売当初は4ドアセダンと2ドアセダンのみのラインアップからスタート。
その後3ドアクーペやバンが追加となり、1973年3月にオーバーフェンダー付きのクーペX-1・Rが発売されたという経緯を持つ。

竹口さんの愛車は1971年式の2ドアクーペX-1(PE10型)。「購入当時はディーラーのサービスマンで、もちろんX-1・Rが欲しかったけど高くて買えなくてね。周りに程度のいい中古車が入ってきたら教えてくれと声をかけておいて、当時3年落ちで走行4万4000kmだったコイツを手に入れたんです」という1台だ。

もともと搭載されているエンジンは、B110サニーなどと同じツインキャブレター仕様のA12型だけれど、この車両には1500ccに排気量アップされたA14型エンジンが搭載されている。車重700kgを切る軽量ボディをぐいぐいと前に押し進めてくれる、トルクフルな仕様となっている。

これまでにエンジンは数え切れないほど載せ換えてきたそうで、その度に自らの手でカリカリのサーキット仕様にしたり、燃費重視にしたりと、さまざまな仕様を楽しんできたという。「ディーラーにいた頃は、日曜日の朝から会社に行ってエンジンを降ろして、エンジンルームをピカピカに磨いてから夜までにエンジンを載せ直して帰ったりしていましたね」と、まさに実物大のプラモデル感覚!!
隣で昔話を聞いていた奥様も「私と出会う前から乗っておったもんね。このクルマで初めて家まで送ってもらった時のことは今でも忘れられんねぇ。ウチの親が家の前で仁王立ちして待っとった(笑)」と、家族の思い出もギッシリ詰まっているようだ。

車内に目を向けると、タコメーターは9000回転までメモリが刻まれた社外に交換されていて、もともとラジオが装着されていたスペースには追加メーターも埋め込まれている。
また、運転席の右脇に装着されているキルスイッチは「バッテリー端子を外すとき、いちいちボンネットを開けて作業するのは面倒じゃろ。だから運転席に座ったままでバッテリーをカットできるようにしておるんよ」と、実用性だけでなく遊び心も兼ね備えたカスタマイズを楽しんでいるようだ。
ちなみにこのチェリーは1993年に、走行20万kmのタイミングでフルレストアをおこなっているそうだ。

そんな竹口さんが1991年に独立して立ち上げた広島県の『竹口自動車』は、チェリーに乗る全国のオーナーさんたちから、このショップなしでは愛車を維持できない「駆け込み寺」として名前を知られている存在だったりする。

「そんな大袈裟なもんじゃないんよ。昔からガスケットやシール類、パネルなど1個使ったら2個注文しておく、という感じで部品を集めておったんよ。今でもいろいろな在庫パーツを持っとるけん、全国から問い合わせがくる感じですわ」と謙遜する。

「でも、古いクルマやけん、ただ部品を新品にすればいいというわけじゃないんよ。例えば、ブレーキキャリパーのシールキットを譲ってもらえませんか〜?と連絡が来るじゃろ。でも、大抵のクルマはキャリパーのピストンもボロボロになっているから、またすぐに漏れたり固着したりと、トラブルが出てしまうんよ。ウチではピストンも削り出しで作っているから、キャリパーごと送ってもらって、オーバーホールして送り返すんですわ」と竹口さん。
自らチェリーに長年乗り続け、いじって楽しんできたからこそのノウハウが、全国のチェリーオーナーさんを救っているのだ、ということを強く感じさせられたお話である。

他にも、ラジエターホースなどは早い段階で新品パーツが欠品になってしまったため、オリジナルパーツとして製作・販売。また、このチェリーでサーキット走行も楽しんできたという竹口さんは、他車種用ラジエターを加工して装着することで冷却性能を高めたり、FRP製フロントフェンダーやカーボンボンネット、純正ベースの車高調整式サスペンションなどのカスタマイズパーツを製作したりと、しっかり走りを楽しむためのパーツも作ってきたという。
「やっぱり、クルマは飾っとくだけじゃなくて、楽しく乗ってしっかり走れんとね」と竹口さんは笑う。

今回、お話を伺った『ノスタルジック2デイズ』は、広島県を拠点とする竹口さんにとって、関東のチェリー仲間やお客さんと顔を合わせるための重要なイベントのひとつ。「昔はオリンピックと同じで4年に1回を目標に出展していたんじゃけど、この数年は来るたびに新しいチェリーオーナーさんと出会える機会をたくさんいただくようになったので、毎年参加しています」という。
しかも、今年はチェリー生誕50周年ということで、秋に全国的なオーナーズミーティングの開催を予定しているそうで「主催者から『竹口さんがイチバンたくさんのオーナーさんを知ってるでしょう』いうて、声かけを手伝うように言われているんですわ」とのこと。
「数百台規模のチェリーが集まったら壮観でしょうね〜」と笑う竹口さんに、全国から集まったチェリーオーナーやチェリーを手に入れたいと考える人たちが相談を持ちかけてくる様子が容易に想像できる。

また、今回のイベントでは、チェリーの隣にレストアしたサニーGX5(B110型)も展示販売していたのだけれど、こちらもチタンバルブやコンロッドを組み込んだシリンダーヘッドなどエンジン内部にまで手が加えられたカスタム車両。
そして、組み込んだ部品や作業の様子を細かく撮影した写真が1冊のアルバムにまとめてられていた。「こうしておけば、どうイジられているか?というのがわかるからお客さんも安心じゃろ」と、レストアを手がけたクルマのオーナーさんには、こうして撮った写真を納車時にプレゼントしているのだという。

ちなみに奥さんのお話によると、関西の有名チューニングショップでメカニックとして修行していた息子さんが数年前に実家へと戻り、今ではエンジンの組み上げなどもおこなう『右腕』として成長している、とのこと。
きっと『チェリーオーナーの駆け込み寺』は、その息子さんへと受け継がれていくことだろう。オレンジ色のチェリーとともに。

この愛車のエンジン音を動画でチェック!

[ガズー編集部]

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