【鈴鹿サウンド・オブ・エンジン2018 愛車紹介】フィフティーズカーの代名詞をドラッグモデファイ!ゼロヨン10秒台を叩き出す1957年式シボレー・ベル・エア
日本はもちろんヨーロッパやアメリカなど、世界各国のヴィンテージカーが並ぶ鈴鹿サウンド・オブ・エンジン2018の『タイムトラベルパーキング』。そんな中でも強烈な個性を際立たせていたのがこの1957年式シボレー・ベル・エア(BelAir)だ。
アメリカ車の中でも特に『THE アメリカンカー』と呼ばれる豪華な装飾が施されたデザインに加え、注目は見た目にもわかる極太リアタイヤが組み合わせられたその姿。アメリカンモータースポーツの頂点であるドラッグレース用にモデファイされ、実際に日本国内のドラッグレースイベントでも走らせているという1台だ。
シボレー・ベル・エアはシボレーが誇る最上級フルサイズモデルで、当時はハードトップやセダン、ステーションワゴンといった様々なボディバリエーションがラインアップされていた。中でも1955年から1957年の3年間に生産されたモデルは『トライシェビー』と称され、多くのアメリカ車好きを生み出した珠玉のモデルとして特別視される存在だ。
しかも、イヤーモデルとして1年ごとにモデルチェンジを行っていたアメリカ車だけに、トライシェビーも年式によって印象はまったく異なる。
さらに同じボディのシェビーでも、最上級のベル・エアに対して低グレードモデルとして210や150といったバリエーションもラインアップされているなど、デザインやバリエーションの違いもアメリカ車好きが深化する理由のひとつ。『あの年式のあのモデルに乗りたい』と、よりマニアックな選択基準を設けるようになるのだ。
話を戻すと、この個体は2ドアハードトップの最上級モデルで、V8エンジンや豪華な装飾品の数々を搭載する、マニア垂涎の名車だ。
そんな1957年式ベル・エアを愛車として選択したオーナーさんは、大阪のアメリカ車専門店スタッフ。これまで第三世代を2台、第一世代を3台と合計5台のカマロを乗り継いできたという、アメリカ車マニアのひとりだ。
アメリカ車に限らずヴィンテージ志向の人は、そのクルマにハマるとどんどん古い年式に興味が湧き、そのルーツを辿って行きたくなるというもの。その例に洩れず最初のカマロが90年代だったのに対し、3台乗り継いだ初代モデルは1969年式、そして同じシボレーでも1957年式とよりコアなモデルにたどり着いてしまったのだという。
「やっぱりアメリカ車を知れば知るほどトライシェビーは憧れのモデルでしたね。中でも装飾がシンプルな1955年式が最終的に欲しいんですが、でもやっぱりこのテールフィンデザインも1度は経験してみたい。そう思っていた時に、このナロード(リヤのホーシングをカスタムして太いタイヤが履けるようにすること)された車両がアメリカで購入できたんです」と語るのはオーナーさん。日本ではまず見かけないこのナロードスタイルこそ、1957年式シェビーを買う決め手となったのだ。
ドラッグレースを楽しむためにナロードされたリヤには、31×18.5-15というサイズのドラッグレース用タイヤを装着。室内もロールケージを張り巡らせ、メーター類からシフター、シートまでドラッグレースで使いやすいようにモデファイされる。
もちろんエンジンもドラッグレース仕様として540ビッグブロック(排気量8.8L)を搭載しながら、キャブレターもホーリー製1050CFMの4バレルをセット。NOSも追加することでピークパワーは740ps、最大トルクは90.0kgf-mというハイパワー化を実現している。
兵庫県にあるセントラルサーキットで開催されるドラッグレースイベントでは10秒56というタイムを記録するという。これらはアメリカで購入したままではなく、手に入れた後に日本でもしっかりと走れるよう手直しが施され、不具合なく日常でも楽しめるクルマに仕上げられているからこそのパフォーマンスでもある。
余談ではあるが、このベル・エアの燃費は高速道路で3.5km/L、街乗りだと2km/Lほど。アメリカ車=燃費が悪いと言われるが、通常のアメリカ車よりもさらに燃費が落ちているのは、使用の目的を考えれば仕方のないところだ。
それでも休日など気が向いた時にはファミリーカーとしてドライブに活用しているため、レース参加時以外は後部座席にチャイルドシートを搭載するというから、そのギャップもポイントといえるだろう。
アメリカ車の多くは今も純正、社外を問わず新品パーツが調達できる。そのため60年以上経過したモデルでも、メンテナンスやコンディションの維持は以外と難しくない。このベル・エアも美しいコンディションをキープしている。
ただし、このオーナーさん所有の個体にはフロントエンブレムが装着されていないようだ。理由を聞くと、他のパーツ同様フロントエンブレムも、今でも普通に入手可能だが、パーツが出ることへの安心感からパーツオーダー時にいつも忘れてしまうんだとか。所有歴6年にして未完の状態がキープされているが、今後ドラッグレースで納得のいくタイムが出るようになったら、完成の証としてフロントエンブレムが戻される…かもしれない。
(テキスト:渡辺大輔 / 写真:平野 陽)
[ガズー編集部]
「鈴鹿サウンド・オブ・エンジン2018 愛車紹介」の記事
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