オンリーワンの小ワザが光る軽自動車好き職人の愛車フェローMAX(L38)

1972年の排ガス規制よりも以前の軽自動車といえば、走りを重視したモデルが各社から発売されていたパワー競争全盛期。この60~70年代の軽乗用車や軽トラックをこよなく愛する人たちがいる。

今回取材させていただいたダイハツ・フェローMAX(L38)のオーナー、杉浦年春さん(70)もそのひとりだ。

「免許をとって初めてホンダT360というピックアップトラックに乗ったのをキッカケに、軽自動車をレッドゾーンまでブンまわして走る楽しさにはまっちゃったんですよね。それからはN360やコニー、S600、S800などいろんな軽自動車に乗ってきました。なかでも当時の僕がどうしても欲しかったのがフェローMAXだったんですよ。試乗会イベントにはなんども行きましたが、あの頃の経済力ではどうあがいても手に入れることが無理だったんです」

フェローMAXは1966年に発売されたダイハツ初の軽乗用車フェローの2代目にあたり、1970年に発売を開始。パワー競争が激化していた当時の軽自動車市場のなかでもトップクラスを誇る40psを発揮した、当時の軽自動車最強といわれたクルマである。

1972年に排ガス規制が開始されてからは燃費や実用性を重視した方向性へと路線転換され、1977年にMAXクオーレと名称変更、その後も現在のミラへと続くダイハツ軽自動車の礎ともいえるモデルだ。ボディバリエーションも2ドアセダンや3ドアバン、ハードトップや4ドアセダンと豊富でグレードも多い。

杉浦さんが今年の5月についに手に入れたフェローMAXは、1975年製のZM型と呼ばれる356ccシングルキャブ仕様の2サイクルエンジンを搭載し、グレードはGHLというハードトップ最終モデルだ。

「いつもクルマを買うときは知人からがほとんどなんですけど、このフェローMAXはインターネットで見つけて即購入を決めました。フェローMAXならなんでもよかったわけではなくて、やっぱりハードトップの形が好きだったんですよ」とオーナー。

ずっと軽自動車を楽しんでいた杉浦さんだが、結婚して30才を過ぎたころから10年ほどは軽遊びから一度離れている。その間は仕事後に毎日バイクをいじり、月1〜2台ペースでレストアしていたそうだ。

「1台造ると欲しいという人が出てくるんですけど、一時期はガレージが30台以上になることもありました」というからもはやレストアバイク屋さん状態!?
しかし40才を過ぎてから再び軽自動車に乗りたいと思うようになり、現在は修理中のスバル360や仕事用の軽トラなど4台の軽乗用車を所有。本職の外構施工職を生かしご自身で建てた自宅ガレージにピッタリサイズで保管されている。

もうお気づきとは思うが、杉浦さんの趣味はレストア。とはいうものの、これまで趣味の範疇を超えるレベルでクルマやバイクの再生を何台も手がけている。当然このフェローMAXも購入を決めたと同時にインターネットでパーツ等を物色していたそうで、取材させていただいたのは購入からたった3ヶ月しか経っていないタイミングだったにも関わらず、すでにセンスの光るカスタムが随所に施されていた。

「ぼくは職業柄か、細かい作業が好きなんです。それと、誰かと同じクルマじゃなくてオンリーワンのクルマに仕上げて乗りたいんです。だからただの純正レストアではなくて、お金をかけずどこか他との違いを出すように心がけていますね。そのために、インターネットオークションは毎日2時間以上にらめっこしています(笑)」とそのこだわりを語ってくれた。

そんなフェローMAXの外装でまず目を引いたのが、メッキ塗装部分の美しさ。基本的にどんなクルマでも必ずメッキはキレイにするのが杉浦流だそうで、ワイパーも元のブラックからメッキ塗装に変更されていた。

マフラーは純正の出口にマフラーカッターを追加することで上品さをプラス。純正ホイールはドラムブレーキをブラックで塗装し、赤リム追加でアクセントを出せるか試している最中だという。サイドミラーも交換したいというがバラさないと取れないそうだ。
ちなみに塗装は前オーナーにより純正カラーに塗り直されていたものだという。

そしてこだわりの内装も見どころ満載。車体カラーとマッチするレッド&ブラックのカラーシートカバーは、汎用の市販品を杉浦さんが裁縫して仕上げたワンオフ仕様。また、ラジオやカセットテープを聴くためのスピーカーも土台部分を含めてすべて手作りだ。他にもエアコンの代わりに2機がけされたUSB小型扇風機や追加メーター、ウッドステアリングなどでセンス良くまとめられている。

エンジンルームは購入時のままだそうだが、横置きエンジンの後ろのバルクヘッドの形状に驚かせられた。杉浦さんも「小さいクルマですが、このおかげで足元が広く確保できています。このトシなのでもう飛ばすことはありませんけど、軽くて走っているとすごく楽しいんですよ」と満足そうに語ってくれた。

現在はこのフェローMAXをはじめ4台の愛車を同じくらいの頻度で日頃の足やお出かけに使っているという杉浦さん。
「今年はとりあえずこのフェローMAXを完成させて、旧車のイベントに乗っていきたいですね」と完成にむけて意欲を見せる。

エンジン音を動画でチェック!

(文:西本尚恵 / 撮影: 土屋勇人)

[ガズー編集部]

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