40年以上乗り続ける初めての愛車シビック1200RS(SB1型)は超希少な無限仕様
この1975年式の初代シビック1200RS(SB1)は、現在65才となるオーナー田玉周一さんにとって初めての愛車であり、生涯を共にすると誓った1台だ。
1972年にホンダが世界戦略車として販売を開始したシビックは、今でも現行車が生産され続け、『市民の(CIVIC)』という意味を持つその車名の通り、世界中のファンから愛されている。
なかでも、74年にシビック初のスポーティモデルとして発売されたこのRS(ロードセーリング)は、排ガス規制によりわずか1年弱で廃盤となってしまった希少なモデルだ。
「シビック1200RSが発売された頃はまだ学生で、当時はまだ乗ることができませんでした。学校を卒業した23才の頃には絶版となっていたもののどうしても欲しかったので、中古車屋を探しまわってやっと見つけて買ったのがこのクルマです」
それから40年以上、現在に至るまで一度も車検を切らさず、ピカピカな状態で今なお現役で活躍しているというのは驚嘆に値するが、このRSの価値はそれだけではない。
なんと、ホンダ車のアフターパーツブランドである『無限』のMS-1フルキットでチューニングされているのである。
MS-1というのは、無限が市販車用の海外専用パーツとして初めて発売したキット。キャブレター&エアクリーナー、インマニ&エキマニ(インマニのみヨシムラ製を装着)、カムシャフト、ピストン&コンロッド、シリンダーヘッド、バルブ&スプリング、サスペンションにスタビやL.S.D.などがあり、その存在を知るファンにとってはヨダレもののパーツばかりだ。
組み付ける前にパーツを並べて撮影したという写真も大事に保存されていた。
「ボクはアバルトにも憧れていましたが、やっぱり無限が心底大好きで。当時は雑誌の売買欄を使ったり直接電話したりしてコツコツとMS-1の中古パーツを集めました。特にエンジンヘッドカバーは10年かけて探して手に入れましたね。ちなみに譲ってくれた方とはお会いしたことありませんが、現在も年賀状でのやり取りが続いていますよ」
パーツの情報ひとつ集めるのも苦労した時代だからこそ、人との繋がりが重宝されることがうかがえるエピソードだ。
現在は建築設計の仕事をしている田玉さんだが、元はクルマ関係の職種を希望し高校は機械科に所属していたという。そのためエンジン内部や塗装を除きモディファイ作業はすべて自らの手で行っている。
またパーツの収集にも余念がなく、MS-1エンジンパーツは一式ストックしているうえに、部品取り用のRSや純正部品も所持しているなど、この先も愛車を維持していくための準備も万全だ。
カスタムに関しては「オリジナルの良さを残して性能を求める」ことを意識。例えばノーマルより太いタイヤを履かせたいフロントフェンダーは、ほんの少し叩き出しでワイド化。また購入から10年ほど経過した頃におこなったレストア時に、純正時より少し明るめのオレンジでオールペンも施している。
「横から見たときのシルエットが好きなんですが、フェンダーミラーだけが納得いかなくてドアミラーにしました」というお話や、フロントグリルの雰囲気に合わせて自作したというフロントスポイラー、内側から脱着可能なフロントガラス上部の無限ロゴ入りバイザーなどからは、職業柄のこだわりも感じられる。
もちろん外装だけでなく室内も見どころが多い。ステアリングやシートも変更し、オーナー自ら加工したインパネに油温や油圧、電圧、水温計などのメーターがズラリと並ぶ。中でも最高速200km/h、回転数1万回転の林レーシング製メーターは超お宝パーツと言えるだろう。
ロールバーやタワーバーも700kgという車重の軽さを損なわないものが追加され、40年以上前という古さを感じさせないボディ剛性を維持している。
エンジンを始動して走り出すと、バイクとクルマの音を合わせたような心地よいマフラー音が響く。いつまでも聴いていたい。そして驚いたのはその動きだ。オーナーの運転でしっかりと加速しキビキビと走る姿は古さを感じさせず、快調そのもの。軽量ボディと無限仕様のエンジンという組み合わせはもちろん、フロントに組み込んだL.S.D.の効果も絶大だ。
30年以上前にレストアしたにもかかわらず、艶やかなボディと軽快な走りは未だに健在…となるとほどんど乗っていないのではないかと想像しがちだが、全くそんなことはない。
「僕が住む長野県の上田はドライブするのには最高の場所。昔から冬眠中以外の時期は休みの日にRSでの走りを楽しんでいます。ただ、雨の日は基本的に乗りません。RSは錆びやすいので…。だから洗車もしないんですが、代わりに走らせたあとは必ず固く絞った雑巾ですぐにゴミやチリを拭き取るようにしています。」
そう、長年走りを楽しみながらもピカピカのボディが維持できているのは、ひとえにオーナーの愛情の賜物なのだ。
ちなみにオーナーはRSの他にビートやホンダのバイクなども複数所有する生粋のホンダ党でもある。
無限(現在の会社名はM-TEC)の創業者である本田博俊氏のサイン入りの年賀状は宝物のひとつ。また1987年から毎年9月に開催されているSB1のミーティングには第1回から皆勤賞だ。
「建築設計士として若い頃の修行時代に辛く泣きながら仕事をしている頃、ボクにとって唯一の心の拠り所がこのシビックでした。ボクは大好きなクルマ関係を仕事にはしなかったけれど、RSと楽しく走りたいがために、大変なことも多い仕事を今も続けることができている。それはすごく幸せだなと思いますね。このシビックはボクにとってかけがえのない宝物。今は走ることに忙しくていじる時間が取れていないのですが(苦笑)、生涯大事に乗り続けます」
オーナーにとって初めての愛車となった名車シビック1200RSは、40年以上の時を経て、今なお愛情をたっぷり注がれ、これからも唯一無二の個性を放ちながら現役で走り続ける。
この愛車のエンジン音を動画でチェック!
(文: 西本尚恵 / 撮影: 土屋勇人)
[ガズー編集部]
最新ニュース
-
-
ホンダ『プレリュード』、米国でも25年ぶりに復活へ…次世代ハイブリッド車として2025年投入
2024.12.22
-
-
-
名機・A型エンジン搭載の歴代『サニー』が集結…オールサニーズ・ミーティング
2024.12.22
-
-
-
軽自動車サイズの布製タイヤチェーン「モビルシュシュ」が一般販売開始
2024.12.22
-
-
-
スバル「ゲレンデタクシー」5年ぶり開催へ、クロストレックHVが苗場を駆ける
2024.12.22
-
-
-
「カスタマイズは人生に彩りを与える」、東京オートサロン2025のブリッツは『MFゴースト』推し
2024.12.22
-
-
-
ヒョンデの新型EV『インスター』、東京オートサロン2025で日本初公開へ
2024.12.22
-
-
-
スズキ『スイフト』新型のツートンカラーが「オートカラーアウォード2024」特別賞に
2024.12.21
-
最新ニュース
-
-
ホンダ『プレリュード』、米国でも25年ぶりに復活へ…次世代ハイブリッド車として2025年投入
2024.12.22
-
-
-
名機・A型エンジン搭載の歴代『サニー』が集結…オールサニーズ・ミーティング
2024.12.22
-
-
-
軽自動車サイズの布製タイヤチェーン「モビルシュシュ」が一般販売開始
2024.12.22
-
-
-
スバル「ゲレンデタクシー」5年ぶり開催へ、クロストレックHVが苗場を駆ける
2024.12.22
-
-
-
「カスタマイズは人生に彩りを与える」、東京オートサロン2025のブリッツは『MFゴースト』推し
2024.12.22
-
-
-
ヒョンデの新型EV『インスター』、東京オートサロン2025で日本初公開へ
2024.12.22
-