数百台の愛車を乗り継いできた自動車整備士が、無償の愛を注ぐ2代目ローレルSGX(C130)

今回ご紹介する茨城県龍ヶ崎市の山崎仁さんは「気になるところをキレイに直したら、以前は気にならなかったほかの劣化部分が目についてそっちも交換…ということを繰り返しているうちに、気がつけば新車以上の輝きに!?」という『旧車好きあるある』を実践したオーナーさんのひとりだ。

しかし、そのこだわり具合と完成度は並大抵ではなく、事前に電話でお話を伺った際には「キレイさはほかのローレルに負けない自信があります!!」と自信満々にアピールをいただいた。しかも、この輝きを放つ2ドアハードトップのローレルは、まだまだ進化の途上にあるという。

“ブタケツ”の愛称で知られる2代目ローレルは、G18型、G20型、G20型ツインキャブ、L20型、L20型ツインキャブ、L26、L28とエンジンのバリエーションが豊富で、当時流行していた“グラチャン仕様”のベース車としても人気が高かったこともあり、現在まで程度のいい状態で残っている個体はかなり希少だろう。

そんな1975年製の日産ローレルSGX(KHC130)を山崎さんが手に入れたのは約6年前のこと。
「もともとはケンメリを探していたんですけど、なかなか良い個体が見つからなかったんです。そんな時に『ローレルだったらあるよ』という話があって早速見にいくと、これがものすごく程度が良くてびっくりしました。外装はもちろんトランクの中を覗いてもフロアマットをめくってみてもサビや腐りはなく、ダッシュボードもヒビひとつ入っていない。長い間納屋保管されていたらしく、走行距離もわずか1万6708kmでした」

こうして程度極上のローレルを手に入れた山崎さん。
「ある時イベントで出会った方が下まわりまでピカピカにレストアしているのを拝見して『自分の愛車もあんな風に仕上げたい!』と思ってレストアをはじめました。足まわりのアームやロッドはサンドブラストをかけてパウダーコーティングしています。クロスメンバーも程度の良いものを譲ってもらって足まわり同様の処理を施して、タイロッドやクロスロッドも全部新品に交換しました。ボールジョイント部分やデフはサンドブラストをかけた後に、熱で溶けてしまうパウダーコート加工ではなく職人さんに塗ってもらっています。フロントの車高調は、茨城県取手市の旧車専門店イーストカーに依頼してワンオフで作ってもらいました」と、いっさいの妥協なく仕上げている。

ブレーキ周りやドライブシャフトはもちろん、エキマニからのパイピングなど排気系もイチから特注で作り直し、下まわりは新車以上にピカピカの状態だ。
「デフカバーを鏡面仕上げにしようと思って、自分でコツコツと1ヶ月くらい磨いていたんですが、あまりにも力を入れてゴシゴシ揺らしたので台にしていたコタツの足が折れたこともありましたね(笑)」と、当時の思い出を語ってくれた。

そして次に手をかけたのがエンジン。
「もともとはL20エンジンでしたが、乗り味を自分好みにするために“神の腕を持つ職人”と言われる後輩のショップ、牛久市のトラストライトサクセスさんでL28を3000ccにボアアップして組んでもらいました。キャブレターは新品のソレックス44Φ、ハーネスも新品をワンオフで作ってもらい、ブレーキマスターやクラッチマスターなどもすべて新品にした結果、新車以上の仕上がりになったと思います。ミッションも新品に近いものに積み替えています」

ちなみにエンジンルームも、総剥離して鉄板ムキ出しにしてからサビ止めを塗布したうえで、2ヶ月かけて耐水ペーパーで研いだのちに、ボンネットと一緒に塗り直しているという。また、純正では黒いサビ止めが塗られたボンネットヒンジも、カラーリングのバランスを考慮して黄金色のクロメイト仕様に加工しているというこだわりようだ。

ちなみに、ここまで仕上げた結果、劣化で黄ばんだウォッシャータンクが目立って気になるようになったそうで「撮影やイベント時のみ新品に交換するようにしています」と、今回も撮影時に差し替えていた。

そして内装はというと、山崎さんが絶対の信頼をおき、下まわりのレストアの方法を伝授してくれた須藤自動車工業(東京都台東区)に依頼。
「天井はもともとキレイだったのでそのまま活かしていますが、シートは須藤さんが同じ純正の生地を持っていたのでそれで貼り直してもらったし、内張りやスピーカーボード、カーペットなども気になるところを交換してもらっています」

落ち着いた渋みを感じさせる純正色のディープグリーンメタリックカラーの外装は、気になる箇所だけ塗り直した以外はラインオフ時のままだそうで、光が当たるとプレスラインがクッキリと浮かび上がる。

「多くのパーツはローレルのクラブの会長さんから分けていただいたんですが、だんだん部品が集まってくるといろんなところが気になってしまって。前後のバンパーやテールランプ、ラジオのアンテナからナンバー灯まですべて買い集めました。旧車の絶版パーツはプレミア価格になってしまうので、サイドのドラフターバッチなんかは片方10万円もしましたね(苦笑)」と、妥協なく仕上げるためには出費も惜しまない。

「フロントガラスに飛び石を食らったことがあったんですが、左側のAピラーにも小さな傷があったことに気づいたんです。なかなか新品が手に入らなくて悩んだ末、インターネットでピラーのモールがきれいなローレルをもう1台買ってモールを交換しちゃいました(笑)」という驚きのエピソードも!
たとえ小さな傷ひとつでも徹底的に修繕にするのが山崎流なのだ。

こうして、購入時の3倍近い金額をかけて外装、内装、下まわりまで美しく仕上げられたローレルは、ハイパワーで新車以上の輝きを放つ唯一無二の個体へと生まれ変わった。
「コンセプトは特になくて、オリジナルにこだわっているわけでもありません。自分が気になっている箇所を一つずつ仕上げていくうちに、気がついたらこの仕様になっていた感じですね(笑)。これからも劣化してくる部品を見つけたら、それを交換していく形で維持していくと思います。もちろん劣化を最小限にする工夫はしていますけどね」とのこと。

ガレージ保管で雨に乗らないというのは基本中の基本で「クルマは湿気に弱いので、ガレージのエアコンは常にオンの状態です。それから以前テレビの通販番組でみた“炭八”という湿気取りを一箱買ってエンジンルームなどに置いているし、ダッシュボードにももちろんカバーをかけています。あとはブレーキローターも保管時はタイヤを外してグリスを塗って、週に1回くらいエンジンをかけたりコンビニに行ったりするときなど動かす時だけグリスを拭き取るということも毎回やっています」と日頃のメンテナンスにもかなり気を遣っているそうだ。

「僕は幼稚園の頃から前から走ってくるクルマの車種をぜんぶ言えるくらいクルマ好きで、18才で免許を取って初めて乗ったのがトヨタカリーナ1600GTでした。これは親父の形見でいまでも持っているんです。高校卒業後は自動車整備学校へ行き、その後はディーラーや町工場でメカニックサービスをした後に、独立して今の職業である自動車整備士をやっています。とにかく休みの日でも自分や仲間のクルマをイジるクルマ漬けの日々で、作ったクルマは後輩たちに売って乗り換えてという形で、これまで300台以上を乗り継いできたと思います」

これまで乗ってきた歴代の愛車のなかで好きなクルマは?と伺ってみたところ「1番は青春の思い出が詰まっている1973年式のケンメリスカイライン、2番が1967年式のフェアレディSR311(これまでに5台も乗り継いでいる)、3番目に1990年式のフェラーリ・テスタロッサ、4番目に1961年式シボレー・インパラのコンバーチブル、そして5番目が今回のローレルSGXですね」とのこと。

旧車から外車まで実に幅広く、根っからのクルマ好きだということを改めて認識することができるラインアップだ。
ちなみに取材時にも当時からの友人やクルマ好きの親戚が集まり、ローレルを囲んで話が弾んでいた。

最後にこのローレルの今後について尋ねたところ「とにかく劣化しないように細心の注意を払いながら維持して、いずれはクルマが好きな娘に譲りたいと私は思っています。娘がどう思っているかはわかりませんけど(笑)」と家族に愛車を引き継いで欲しいようす。

とはいえ、まだしばらくの間は山崎さんの手によって劣化したパーツが新品に交換されていくだろうから、ローレルはさらに輝きを増していくに違いないだろう。
その愛情の注ぎ方は、家族の一員と変わらず、見返りを求めない『無償の愛』に他ならない。こんなに愛されているC130ローレルは日本中を探してもなかなかいないのではないだろうか。

エンジン音を動画でチェック!

(⽂: ⻄本尚恵 / 撮影: ⼟屋勇⼈)

[ガズー編集部]

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