もうすぐ50年10万キロ、一度も車検を切らすことなく人生を共にしてきたカローラレビン(TE27)
父親の影響もあり、もともとクルマ好きだったという武隈さんが、このTE27カローラレビンを購入したのは20才の頃。
「当時はまだ学生だったのですが、その頃流行っていた筑波サーキットのレースに出てみたいなと思っていたら、クルマ好きな父が協力してくれるというので喜んで購入しちゃいました。候補は当時まだ格安だった130万円のハコスカGT-Rと150万円のフェアレディ240Z、そしてこのカローラレビンの3台。中でも一番扱いやすそうなレビンにしたんです。当時はオプションで運転席のサンバイザーひとつとノンスリップデフをつけて92万円だったのをよく覚えています」
それが、純正モンテローザオレンジが今でも美しく映えるこのカローラレビン。
「モスグリーンだったら即納だったんですけど、僕はどうしてもオレンジが良かったので納車までに40日くらいかかりましたね。後からオレンジは希少で200台くらいしか生産されていなかったと聞いてビックリしました(笑)。ちなみにトレノを選ばなかったのは、トレノの方が10kgほど重かったからです。レビンは850kgしかないんです」
その後、このレビンでのレース参戦は親の承諾が得られず断念するも、武隈さんの遊びの大切なお供として活躍。特に20代はいろんなところに出かけたそうで、ウインドサーフィンをやっていた頃はキャリアをつけてボードを積んで出かけていたこともあったとか。
こうして48年が経った今の走行距離は99,800kmを刻んでいる。
そんな武隈さんのカローラレビンは、最高出力115psの2T-G型1.6L 直4エンジンを搭載し、ボディサイズは全長3,965mm×全幅1,595mm×全高1,335mmと小柄なスポーツクーペ。
「当時からオリジナルがベストと思ってチューニングやカスタムはあえてほとんどしないで、ステアリングをMOMOにしたくらいでした。それでいてダッシュ力は結構良かったですね」と、当時からノーマルでの完成度でも十分に満足していたのがわかる。
ちなみにステアリングも現在は純正に戻されている。
また、48年間ノンレストアながら、これまで致命的なトラブルや事故もなく現在も色褪せなく美しく維持されている。それはある意味奇跡に近いのではないだろうか。
「保管はガレージだったり室内だったりで、ボディカバーもつけて大切にしてきました。トラブルといえば例えば社外品のディストリビューターが壊れたりしたことがありましたけど、元の純正品に戻すとしっかり回りました(笑)。それだけ純正がすごいってことですね」
ちなみに現状で社外品となっているのは、フロントガラスとホイールのみとのこと。ホイールは純正のスチールホイールが手に入らないため、エンケイ製ホイールが使用されている。
ボディの手入れはシュアラスター製ワックスを40年以上愛用しているとのこと。
ちなみに、レビンを購入した際、友だちが同じレビンを同時にもう1台買っていて、その車両の方をラリー仕様にして1〜2年ほど一緒にラリー競技をやっていたそう。というのも武隈さんはモータースポーツ好きで、ラリーの他にもバイクのモトクロスなどいろんなレースをその時の気分で楽しんでいたそうだ。
ガレージには今でも多数のバイクや限定モデルのロータスエリーゼも保管されている。
そんないろんな乗り物に乗り慣れた武隈さんからみて、レビンのフィーリングはどうだったのか。
「ライトウェイトなところと、ソレックスキャブの吸気音が力強いところが魅力ですよね。ガソリン臭いところもあるけど、フィーリングが最高。シフトレバーもブルブル震えるんですけど、あんなのもいいじゃないですか。吹け上がりもおもしろいですよね。軽いからか特にヒルクライムとかはすごい楽しかったですよ」とベタ惚れのようす。
「デザインもあの当時にしては素晴らしいじゃないですか。いろんなクルマと比べてもこれがいちばんいい。あの時代から今のクルマの原点ともいえる基礎が完成したのかなぁと思いますね」と、デザイン面も含めて“今のクルマの原点とも言える、おもしろいクルマ”というのが武隈さんのこのTE27を好きな理由というわけだ。
「駐車代や車検代、保険代など合わせた48年間の維持費をざっと計算したら、2,000万円くらいかかっているんですよね。なので仮にこれを300万くらいで買うという人がいたら絶対お得だと思います。でもさすがにここまでくると手放さずに買った時のままのナンバーで、そのまま動態保存したいというのが今の想いです」
新車からワンオーナーで50年、そして走行距離10万kmを迎えてオドメーターが0にもどる日はもう目の前だ。
エンジン音を動画でチェック!
(文: 西本尚恵 / 撮影: 土屋勇人)
[ガズー編集部]
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