3度目の沖縄赴任で念願のスカイラインGT-Rオーナーとなったカーガイ
沖縄のオリオンECO美らSUNビーチに、美しいベイサイドブルーのBNR34型スカイラインGT-Rに乗って颯爽と登場したジョーさん。米国人カーガイとスカイラインGT-Rの出会い、そして今後の夢を教えていただいた。
R34型スカイラインを代表するカラーリングのひとつである“ベイサイドブルー”の名前にふさわしい『オリオンECO美らSUNビーチ』で開催した『GAZOO愛車広場 出張取材会in沖縄』に、夫婦でお越しいただいたテイラーご夫妻。沖縄県という土地柄からご想像の通り、こちらの日産・スカイラインGT-R(BNR34)のオーナーであるジョーさんは在日米軍基地の関係者だ。
アメリカ合衆国のサウスカロライナ州出身のテイラーさんが日本にやってきたのは1998年12月のこと。アメリカ空軍に入隊したテイラーさんが、日本での赴任地である嘉手納基地に訪れたのが最初だったという。
そのころ30代にさしかかろうというジョーさんがアメリカで乗っていたのはフォード・マーベリックに始まり、カマロやトランザムといった数々のアメ車たち。いわゆるマッスルカーといったジャンルが好みだったようだが、その好みがガラッと変わったのは日本に来てからだった。
ジョーさんが来日してすぐの1999年1月に開催された『東京オートサロン』にて、スカイラインGT-RがBCNR33からBNR34へとフルモデルチェンジされ新車発表されたことは、大きなトピックスとして話題となった。デザイン面でも大きなアップデートが施されたそのボディ形状は、20年以上経過したいまでも新たなファンを生んでやまないほどだ。
そして、ジョーさんもBNR34スカイラインGT-Rのルックスの虜になったひとり。発売されたばかりだったベイサイドブルーのBNR34スカイラインGT-Rを愛車として手に入れ、基地内を走り回る空軍人に出会ったのがキッカケだったという。
そのオーナーとはすぐに知り合いとなり現在も続く仲だというが、マッスルカーらしさも兼ね備えた独特なスタイリングに加え、ツインターボのRB26DETTエンジンのパフォーマンスの高さなど、彼からBNR34の良さを聞くたびに憧れは増していき「いつかは自分もオーナーになりたい!」と思うようになるまでに時間はかからなかったという。
だが、ここで浮上するのがアメリカへ輸入する自動車に関わる、いわゆる“25年規制”の問題。大雑把に言えば、現地で初年度登録から25年が経過するまでは、アメリカに愛車を持って行こうと思っても簡単には輸入登録ができないというものだが、新車で発売されたばかりのBNR34スカイラインGT-Rはその規制に引っかかるうえ、日本で所有しようと思っても、当時のジョーさんにとって手が出る価格ではなかった。
そこで購入したのがHCR32型のスカイラインGTS-tタイプMだった。憧れのBNR34ではなかったものの、コンパクトかつFRのレイアウトはキビキビ走る楽しさがあり、当時はドリフトも楽しんだという思い出を話してくれた。
そして嘉手納基地での任期を終える2002年には沖縄県内で奥様とも出会い、2人は新たな赴任地であるフロリダ州タンパにある米空軍基地へ。愛車だったスカイラインは日本を発つ際に、友人に譲ることになったという。
そして2005年から3年間ほど、再び嘉手納基地へ赴任することが決まると、今度は手頃な価格だったECR33型スカイラインを日本での愛車として購入。スカイラインを乗り継ぐことはできたものの、BNR34スカイラインGT-Rへの憧れは満たされず、むしろGT-RではないR33とのギャップを感じたことにより、いっそうスカイラインGT-Rに乗りたい気持ちが高まっていくことになっていった。
2008年になると、再びフロリダ州タンパの米空軍基地へ戻ることとなり、そこではカマロ、コルベットと2台のアメ車を乗り継ぐことに。そのあいだにはBNR34スカイラインGT-Rをアメリカで手に入れられる手段を模索したものの、25年規制の壁は厳しく断念せざるを得なかったそうだ。
そんなジョーさんに転機が訪れたのは2016年のことだった。米軍での兵役の一区切りとなる20年間の勤務を終え、晴れて退役となることが決まると、その後のセカンドキャリアとして空軍基地で軍属の民間人として働くことを選択。
そして、赴任地として3度目となる嘉手納基地での勤務を志望。これは日本人である奥様の両親の都合も考えてのことだったが、もちろん憧れのBNR34スカイラインGT-Rを愛車として手に入れたいという気持ちも大きかった。
2016年10月に夫婦で沖縄に戻ってきたジョーさんの行動は素早く、その2ヶ月後には宮城県で売られていた車体を購入し沖縄へ輸送。1999年式でグレードはVスペック、ボディカラーはあのときに基地で見た色とおなじベイサイドブルーだった。
購入後は沖縄県内のパワーチューンを得意とするプロショップPS Racingのもとで、全方面でのカスタムを実施。タービンはHKS製のGTIIタービンに交換し、街乗りでの乗りやすさも維持したうえでの700馬力というスペックを誇るという。
米軍人による日本車カスタムにおいては、価格などで有利な海外製パーツを使用する例も多く見かけるが、ジョーさんはパーツ選びにおいてはJDM(日本国産品)をリスペクトする気持ちが強く、ニスモをはじめとした国産パーツメーカー品を中心に選択するこだわりがうかがえる。
いっぽうで、ドレスアップを重視したい場面では海外製のパーツを導入する部分もあり、車種専用品として美しくレイアウトされているオイルキャッチタンクやヒューズボックスカバーといったパーツはニュージーランドからの輸入品とのことだ。
BNR34スカイラインGT-Rオーナーとしてのこだわりは室内にも。フルスケールのニスモ製メーターやチタン製シフトノブを贅沢にレイアウトし、ステアリングはGT-Rを得意とする日本のプロショップとして名高いマインズ製をチョイス。
高出力のエンジンパワーに対応できるブレーキがほしいとPSレーシングにオーダーしたのはR35GT-R純正の大径キャリパー。BNR34に適合させるためのブレーキローターのベルハウジング加工やアルマイト加工といった工程を経るために、いちど海外まで部品を送って作ったという特注品だ。
また、リヤビューはジョーさんの個性が垣間見えるパーツチョイスが随所に。ニスモ製のカーボンリヤスポイラーに、海外から輸入したハイマウントキットでレベルアップ。テールランプのポジションライトがLEDとなっているのも、海外から輸入したキットを使い自らDIYで装着したパーツだそうだ。
そして、BNR34スカイラインGT-Rオーナーとなったジョーさんの楽しみとなっているのが『Cars and Coffee』や『Customs Night』など、沖縄在住の米軍人を中心として催される様々なカーミーティングへの参加だ。
沖縄県には陸・海・空軍に海兵隊の4軍の基地が存在し、普段はそれぞれの基地に所属する軍人のあいだでの交流もあまりないなかで、クルマ好きという共通点を持って集まれる機会はとても貴重で、そこでの交流はとても息抜きになるし、出会った仲間とのつながりがアメリカに帰ってからも続くこともあるのだという。
そんな念願だったBNR34スカイラインGT-Rオーナーとなる夢が叶ったジョーさんの3度目の沖縄赴任の期間は、あと2、3年で終了することが予定されているという。それまでに既に注文済みでバックオーダー待ちだというニスモZチューン仕様のフェンダーやボンネットといったパーツが到着すれば、装着に併せてヤレが見え始めているベイサイドブルーの塗装を同じカラーリングでリフレッシュしたいとも考えているそうだ。
そして最終的には、愛する家族だけではなく愛車とともに海を渡り、故郷でスカイラインGT-Rを走らせたい、と今後の夢についても語ってくれた。
いつかその願いが叶った暁には、ぜひアメリカでのGT-RとのカーライフをGAZOOモビことにも投稿してくださいね。
取材協力:オリオンECO 美らSUNビーチ
(⽂:長谷川実路 / 撮影:平野 陽 / GAZOO編集部)
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