キャンピングカー仕様の1976年式ワーゲンバスは、クルマもアウトドアも楽しめる最高の相棒!
アウトドアが好きでクルマも好きだという人にとって、キャンピングカーはひとつの到達点ともいえる存在ではないだろうか。
中でも最近のようなキャンプブーム以前からクルマ好きのアイコンとして親しまれたフォルクスワーゲン・タイプ2 のキャンピングカー仕様は、アウトドアが盛んなドイツで磨き上げられた実用性と、旧車ならではのファッション性を両立する至高のキャンピングカーといえるだろう。
そんなタイプ2をベースにウエストファリア社が仕上げたキャンパーを10年前に手に入れ、キャンプやイベント参加に活用しているのがオーナーのえりもぐさんだ。
今回は神奈川県相模原市で開催された『レッツチルアウト』のカーショーキャンプエリアで、愛車とともに素敵なキャンプサイトを構築し、イベントを楽しんでいるところを取材させていただいた。
フォルクスワーゲン・タイプ2は、日本では『ワーゲンバス』などの愛称で知られているモデルの総称で、大別すると1950年から1967年までのアーリーモデルと、1968年から1979年までのレイトモデルがある。
ひと昔前はアイコニックなファニーフェイスが特徴のアーリーモデルに人気が集中していたが、現在は味のあるレイトモデルの人気も高まり、世界的にも価格帯が高騰しているという。
ちなみに、タイプ2にはパッセンジャーカーのバスやコンビ、荷物を積載するためのパネルバン、ピックアップなどがラインアップされ、さらにこれらをベースにコーチビルダーが製造するキャンピングカーや救急車など多彩なバリエーションが用意されていた。
えりもぐさんのタイプ2は、そんなレイトモデルの中で最も性能が高いと言われる1976年以降のキャンピングカーに限定して見つけ出したという1台だ。
「10年前はランドローバー・ディフェンダー90でキャンピングトレーラーを引っ張ってキャンプをしていたんですよ。でもキャンピングトレーラーは入れるキャンプ場が意外と少なくて行動範囲も限られてしまうのが難点で。そんな時にタイプ2のキャンパーならどこでも行けるんじゃないかなって思ったんです」
キャンプが主目的とはいえ、最新のキャンピングカーではなくヴィンテージキャンパーを選ぶあたりは、クルマ好きだからこその選択と言えるだろう。
購入にあたって最も重視したのが搭載するエンジン。同じ空冷フラットフォーを搭載しているとはいえ、アーリーモデルでは最大排気量が1500㏄のためパワー不足が目に見えている。
対してレイトモデルでは空冷フラットフォー最終世代のTYPE4と呼ばれるエンジンを搭載していて、さらに1976年式からは排気量が2000㏄まで拡大されたことで、パワー不足はかなり解消されている。
だからこそ、えりもぐさんはターゲットを1976年式以降のTYPE4エンジンを搭載するキャンパーに限定して埼玉県のフォルクスワーゲン専門店にオーダー。そして運よく見つかったのが、アメリカのノースダコタ州から輸入された1976年式ウエストファリア社製キャンパーというわけだ。
ちなみにタイプ2キャンパーといっても、このウエストファリアをはじめドアモービルやリビエラなどいくつものコーチビルドモデルが存在し、その仕様や使い勝手もさまざま。そんな中でもウエストファリア社製はフォルクスワーゲンのカタログモデルとして販売され、ドイツだけでなくアメリカなどにも輸出されていた実績を持つ。
その信頼性はキャンピングカーとしての実用性にも直結していて、ポップアップルーフを広げれば上下でベッドルームが活用できるうえ、キッチンは2コンロを備えているため、調理場としての実用性も高い。
普段は奥さんと愛犬のポムくんとともに、朝霧高原や長野エリアのキャンプ場に通うなど実際に活用しているだけに、キャンピングカーとしての使い勝手は妥協できないというわけだ。
実はタイプ2の購入を考えはじめた当初は、レイトモデルではなくアーリーモデルを検討していたというえりもぐさん。しかし奥さんの「ATじゃなきゃダメ」というひと言で、ATモデルもラインアップされているレイトモデル狙いへと方向転換。それによって結果としてはパワフルなエンジンという選択基準も生まれたという。
レイトモデルではベース車の性能はもちろん、キャンピングカーとしての使い勝手も進化していることから「10年間不満なくキャンプが楽しめる愛車に出会うことができたのは奥さんのおかげ」というわけだ。
とはいえ購入当初でも40年近くの時間が経過した旧車である。不安なく乗るための準備として購入時にエンジンとATをオーバーホールし、さらにインジェクションなども新品に交換。ボディもそれなりにヤレていたため、純正カラーと同様のカラシ色でリペイントして仕上げ直されている。
さらにオールシーズン快適にキャンプを楽しめるようにエアコンやヒーターも追加。特にエアコンはコンデンサーの設置場所に悩んだ結果、フロア下に電動ファンを増設して取り付けたという。
こうして走りもキャンプも快適に楽しめる理想的なキャンピングカーが完成したというわけだ。
また、1970年代を印象付けるポップなオリジナル内装がダメージなく残されているのも特筆すべきポイント。
回転式のシートはちゃんと動作するだけではなく、当時のままのタータンチェック柄シート表皮も健在。さらにコットンの目隠し用カーテンなど、今も現役で活用できるコンディションをキープしているのだ。
唯一社外品に交換されていたオーディオも、純正品を見つけ出して交換し直しているため、空冷フォルクスワーゲンマニアも納得するほどオリジナル度の高い仕上がりとなっている。
「このタイプ2キャンパーを手に入れてからキャンプの手軽さは一気にアップしましたね。テントを設営しなくていいのでボディサイドに山岳用のクランプを使ってタープを広げれば、あとはのんびりと過ごすだけです。行動範囲も広がってさらにサイト設営の手間もかからなくなりました」
現在なら巻き取り式のサイドオーニングなど手軽な製品もあるが、走行中の抵抗になってしまうのを嫌って、あえてサイドタープを選択しているという。
ある程度の手軽さは求めつつも、やはりハンドルを握る楽しみもスポイルされたくないというこだわりも、えりもぐさん流のスタイルというわけだ。
手軽さや快適性、さらには信頼性といった面では最新のキャンピングカーに軍配が上がることは間違いない。しかしクルマとともにキャンプを楽しむと考えるなら、ヴィンテージキャンパーが持つ独特な雰囲気はとても魅力的だ。
アウトドアファンのあいだでは、ランタンやストーブなどもヴィンテージ志向が好まれる傾向があるし、ひとつの道具を大切に使い続けることで唯一無二の“味”がでてくるのも醍醐味のひとつ。そういった意味でも、時代を超えて愛され続ける名車のタイプ2キャンパーは、えりもぐさんにとってカーライフもアウトドアライフも思いっきり楽しむことができる最高の選択肢なのだ。
取材協力:レッツチルアウト
(文:渡辺大輔 / 撮影:中村レオ)
[GAZOO編集部]
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