僕はスバル レヴォーグを選んだ。釣場へのラスト数百メートルの利便性よりも走る楽しさを求めて

  • スバル・レヴォーグとオーナーの恩田直人さん

ある調査によると、日本の釣り人口は約560万人。ピークである1990年代には2000万人を超えていたことを考えるとかなり少なくなっているが、それでもすごい人数だ。

筆者は小学校の時に川やお堀でフナ釣りをしたくらいだが、釣り人と話していて面白いなと感じるのは、仲間にも秘密にしているポイントを持っている人が多いこと。渓流釣りを楽しんでいる人は特にこの傾向が強い。

今回ご登場いただいた恩田直人さんもその一人。恩田さんは子どもの頃から釣りに明け暮れて、高校卒業後はルアービルダーなどを育成する釣りの専門学校に入学した。そして現在は新潟県南魚沼市にあるフィッシングショップの店長として、地元の釣り好きの人たちからのさまざまな相談に乗っている。

  • スバル・レヴォーグに座りロッドを調整する恩田直人さん

我々は東京から取材に伺うため、数日前の夕方に最終的な段取りを確認しようと連絡したところ、「もうすぐ電波が届かない場所に入ってしまうから、翌日戻ってきてからでもいいか」と言われた。恩田さんは早起きが苦手なので、翌朝の釣りのために前日入りするのだという。

「渓流はいいポイントが限られていますからね。仲間内にも秘密にしているような場所でさえ、まったく知られていないとは限りません。もし先に別の人が釣りをしていたら、その場所は諦めなければいけないから必死ですよ。だから時間があるときは前日からポイントに入っています」

  • 渓流釣りのポイントに行く恩田直人さん
  • 渓流釣りのポイントに行く恩田直人さん

山奥に入って渓流釣りを楽しむ人の愛車というと真っ先に思い浮かぶのはSUV。最近はリフトアップして釣り仕様にした軽1BOXも流行っている。いずれにしても最低地上高が高く下回りをヒットしづらいクルマに乗っているイメージだが、恩田さんの愛車は初代スバル レヴォーグだ。ステーションワゴンで誰も知らない山奥のポイントまでたどり着けるものなのだろうか。

「レヴォーグの前はローダウンしたインプレッサスポーツに乗っていたので、これでも楽になりました(笑)。もちろんフロントのリップやマフラーをガリッとやってしまうことはありますが、オイルパンを突き破って大事になったということはないので、そこまで心配していません。これ以上進むのは無理だと思ったら手前の駐車場にクルマを置いてポイントまで歩けばいいのですから」

では恩田さんはスポーツワゴンであるレヴォーグに何を求めて釣りの相棒に選んだのか。スバル車に興味がある人ならすぐにピンとくるだろう。“走りの良さ”だ。

SUVの最低地上高が必要になるのは、ポイントまであと数百メートルからせいぜい数キロという距離。一方、釣り場までは高速道路やワインディングなどさまざまな道を走る。渓流はもちろん、海や湖などさまざまなフィールドで釣りを楽しむ恩田さんは、新潟から栃木や千葉、大阪などにもクルマを走らせるそうだ。

だからこそ“圧倒的に長い移動時間を楽しめるクルマ”に乗ろう。そう考えて車高の高いSUVではなくステーションワゴンを選んだという。

  • スバル・レヴォーグ

「周りにはSUVやワンボックスに乗っている人も多いのですが、横に乗せてもらってロングドライブに出かけると、コーナーなどで車体がふらついているのがわかります。それが好きではなくて。やっぱり路面に吸い付くように走って気持ちよくコーナーを抜けられるのが楽しいですから」

恩田さんがクルマに興味を持つようになったのも、釣りがきっかけだった。まだ子どもの頃に従兄弟の家に泊まりに行き、早朝に従兄弟の運転でブラックバスを釣りに行く。クルマで知らない場所に遠出をするのがワクワクしたという。地元では友人と一緒に自転車で隣の市まで釣りに出かけていた。釣りはもちろんだが、遠くまで自転車を走らせるのが楽しかった。

運転免許を取得後は親戚から譲ってもらった初代スズキ ワゴンRに乗るようになった。ただ、ワゴンRはFFだったので、冬になって雪が積もった状態だとすぐにスピンしてしまう。そこで1年ほど経ってから、初代日産 ノートのe・4WDを搭載したライダーに乗り替える。

「e・4WDはタイヤがスリップしたときなどだけモーターが作動して後輪を駆動させるシステム。当時は仕組みをよくわからずに乗っていましたが、ワゴンRとは雪道での安定感が全然違うので、『4WDってすごい!』と思いました」

  • スバル・レヴォーグのオーナーの恩田直人さん

ノートは新車で購入して8年ほど乗り、手放すときの走行距離は23万kmを超えていたという。平均の年間走行距離は約3万km。恩田さんがいかにロングドライブを楽しんでいるかがわかる。ノートで4WDならではの安心感に気づいた恩田さんは、4WD性能に定評のあるクルマに乗ろうとスバル車に注目する。選んだのは初代スバル インプレッサスポーツだ。

「一番乗りたかったのはインプレッサSTIでしたが、当時は手が出せませんでした。車両価格が高いというのもありますが、STIはエンジンがハイオク仕様なんですよね。僕くらい距離を走るとレギュラーとハイオクの価格差は経済的なダメージが大きくて」

インプレッサスポーツを選んだのは妥協もあったに違いない。でも手元にやってきて印象はガラリと変わった。ロングドライブでも疲れず、水平対向エンジンはアクセルを踏み込むとレスポンスよく加速する。雪道でも安定感があり、滅多なことでは滑らない。小さくてもGT性能が高いインプレッサスポーツは、各地に出かける恩田さんのよきパートナーとして、恩田さんのフィッシングライフを支えてくれた。

恩田さんはノートに続き、インプレッサスポーツも24万kmも乗ったそうだ。コレくらい乗るとさすがにあちこちトラブルが出てくる。次のクルマへの買い替えを考える際、スバル車以外の選択肢は思い浮かばなかった。インプレッサ以上に走りが楽しめそうなモデルとして頭に浮かんだのがレヴォーグだった。

  • スバル・レヴォーグとオーナーの恩田直人さんのリア

「僕は基本的に新車派。買い替えのタイミングではすでに2代目のVN5が発売されていましたが、レヴォーグは初代のデザインのほうが好きだったので、走行距離が少ない中古車を探すことにしました。ターボ車に乗るのも楽しみでしたね」

恩田さんがレヴォーグを手に入れたのは3年ほど前。もちろん、高速道路からワインディングまでさまざまな道を走った。スバルらしいGT性能やコーナリング性能は思っていたとおりだが、不満もないわけではないという。

「僕が選んだのは1.6Lターボ。いわゆるドッカンターボではないのですが、それでも多少のターボラグを感じます。ポイント近くのタイトなコーナーが連続する道だと、どうしても一瞬加速がもたつく感じがあるんですよね。

レヴォーグに乗ってから僕はターボよりNAエンジンのほうが好みなのだなと気づきました。でもレヴォーグはコーナリング性能が高いからエンジンの回転をそこまで落とさないでもコーナーをクリアできます。レヴォーグに合わせた走り方はマスターできたかなと思います」

  • スバル・レヴォーグの運転席に座る恩田直人さん

好きな釣りとSUVでは味わえないスポーティな走り。どちらも妥協したくない恩田さんにとって、ステーションワゴンは最良の選択だった。きっとこのレヴォーグも、これ以上乗り続けるのは難しいと感じるようになるまで、20万km以上走り続けることになるだろう。

「レヴォーグから降りるときがやってきたら、きっと次もスバル車を選ぶと思います。ただ、次は水平対向エンジンをNAで楽しみたい。乗り替えるのはまだ先になると思いますが、今はGT2のインプレッサスポーツに乗りたいと思っています」

  • 森の中の未舗装路を進むスバル・レヴォーグ

日本車唯一の水平対向エンジンとシンメトリカルAWD。スバル独自の機構は、“釣り”という恩田さんのライフワークに、“走る楽しさ”という付加価値を与えてくれた。

1台のクルマですべてを満たすのは案外難しいもの。だったら長距離移動をワクワクする時間にするために、最後の数百メートルくらい、歩けばいいじゃないか。この割り切りが恩田さんのカーライフを豊かにしてくれていることを強く感じた。

(取材・文/高橋 満<BRIDGE MAN> 撮影/柳田由人 編集/vehiclenaviMAGAZINE編集部)

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