クルマ好きになった理由は『奥さんの影響』。マニュアル車3台で楽しむ夫婦のカーライフ
“夫の影響でクルマ好きになった”というのは取材をしていてよく聞くが、”妻の影響でクルマ好きになった”という話はなかなか耳にしたことがない。そのレアケースに当てはまるのが、トヨタ・86(ZN6)とダイハツ・コペン(L880K)で取材会に来場いただいた竹内さんご夫婦だ。
クルマに興味はあったものの、なんとなく1歩を踏み出せなかったという旦那様を一変させたのは、マニュアルミッションのインテグラに乗った奥様だったという。
「はじめて奥さんがインテグラに乗ってきたときは『あれ?なんか女の子が乗るクルマとは少しちゃうんやけど…』って驚きました(笑)。僕は、両親に家族も乗れるAT車を勧められて以降、ずっとそういうクルマに乗ってきたから余計に」
「どんなクルマなのか全然知らないから、クルマ好きの友達に写真を見せてみたら、『えっ、インテグラ!? しかも4つ目! これ、めっちゃレアやし、めちゃくちゃ走るよ!!』とテンションが上がっていて。それを見て、なんかよう分からんけどすごいんやな、ってことを理解しました(笑)」と、インテグラとの衝撃の初対面を語ってくれた大輔さん。
当時、望美さんが乗っていた3代目インテグラ(DC2)は、前期モデルのなかでは最もスポーティなグレードのSi VTECで、180psを発生する1.8リッター直4DOHCのVTECエンジン『B18C』を搭載している。
特徴的な丸目4灯のデザインは、日本では販売が振るわず直ぐに販売終了となってしまったという時代背景もあり、3代目インテグラ初期型の中古車は非常にタマ数が少ないモデルなのだ。
「1番ネックだったのはマニュアルミッションということでした。自動車免許を取ってから長い間オートマしか運転してなかったですから。そしたら奥さんが『家族のクルマでもあるんやから乗れなアカンで。免許持っとるんやからいけるやろ、乗れ』って(笑)。近所の広い空き地まで連れていかれ、3周回って調子がついてきたころに、スーパーまで運転しました」
無事にインテグラでの公道デビューを果たした大輔さんに変化が見られたのは、ちょうどこの頃からだったという。
「マニュアル車がどんどん楽しくなってきたんですよ」と満面の笑みを見せる大輔さんに「これ、私のクルマやねんけど、っていうくらいの頻度で旦那が乗るようになったんです。そこで、もうそれやったら、MTのオープンカー買おうや!コペンなんかどう?と提案しました。実は私がコペンに乗りたかったから、旦那が飽きたら私のクルマにしようと思ってたんです」」と望美さん。
ところが、望美さんの企みとは裏腹に、コペンを手に入れた大輔さんのカーライフはどんどん充実していったという。
週末はコペンオーナーと集まりカスタム談義に花を咲かせ、そこで得た情報を活かしてリアウイング、リップスポイラー、リアスポイラーなどを装着。エアクリーナーとマフラーなどはD-SPORT製のものに交換するなど、コペンは瞬く間に姿を変えていったそうだ。
「ガルウィングにした時点で、あぁ、もう私の所にコペンは来んなと(笑)。インテグラを知らないくらいクルマに疎かったのに、私よりもカスタムしはじめてるんやから、人生何があるか分からんなって思いました」
「でも、旦那はもともとクルマ好きで、色々な理由があってクルマを我慢していたのを知っていたんです。やけど1回しかない人生やから、好きなクルマに乗って楽しんだらええやんか!って。塞いでいた心の蓋を外してあげた感じですね」と笑う望美さん。
その後、柔らかい眼差しでコペンを見つめ夫婦で過ごしたコペンライフについて教えてくれた。
長野県にあるビーナスラインで開催されるオフ会に2人で行ったこと。
10年間オフ会に参加し続けたら、今やスタッフになってしまったこと。
オープンにして風を浴びながら、2人で色々な場所を訪れたこと。
なにより、大輔さんがクルマ好きになるキッカケをくれたクルマというのが、たまらなく愛しいという。
きっと、コペンは竹内さん夫婦にとって素敵な思い出が沢山詰まった玉手箱のような存在なのだ。
「思い入れがあるから、たとえ動かなくなっても置いておきたいんです。走らなくてもいいから、側にいて欲しいんです。早いもので購入してから13年経ちます。いつの間にか古いクルマという部類になってしまったので、純正パーツが無くなりつつあるんです。やから、壊れても純正部品で修理できなくなってしまうんじゃないかと不安になることもあります」と望美さん。
そんな思いから、普段乗り用としてスイフトスポーツも購入したのだという。
「これからは、コペンはなるべく走行距離を伸ばさず、大事な時だけ乗りたいんですけど…あんたは、何でしょっちゅうコペンに乗るんや!そのためにスイストスポーツ買ったんやからな、乗ったらアカンでって言うてるやろ!!」と突っ込む望美さんだが、大輔さんいわく「奥さんの今の愛車が86なんですけど、燃費が悪いから家計のためを思って…」とのこと。
「僕の奥さんは、小学生の頃からスポーツカーのラジコンで遊んでいたというくらいスポーツカー好きなんです。しかも、マニュアル車。以前、ヴィッツを購入しようということで試乗をさせてもらったんですけど『ん~普通やな~』とか言い出して、隣にあった86に試乗してみたら『うん、私はこれやな。しっくりくるわぁ~』と(笑)」
「でも、好きなんやったら、やっぱり乗って欲しいやないですか。やから、奥さんの愛車は86になったし、これからもスポーツカーのマニュアル車やと思います。オートマ車ばかりの時代になっていますが、ウチはコペン、86、スイスポと3台ともマニュアル車なんで、オートマ車という逃げ道はないんですよ。インフルエンザで熱がでても、めっちゃ体調悪くても、マニュアルミッションのクルマで病院に行かないといけないんです(笑)」
コペンでカスタムを楽しむ大輔さんに対して、望美さんは純正で綺麗な状態を少しでも長く維持できるようにしていきたいという考え方だというが、マフラー音だけは譲れないという。
「ちょっとうるさくなくちゃいけないんです。も~、これは絶対!インテグラの時は無限のマフラーを装着していたし、86はTRDにしています。音が響くと、走ってるぞ感があるでしょ?それが気持ちいいんです。高速道路の合流の時にもたつかずにスムーズに加速して、なおかつ音も鳴っていたら気持ちいいやないですか」と前のめりに話す姿は、まるで少女のように無垢で、クルマに対して真っ直ぐだった。
大輔さんから見ても”根っからのクルマ好き”だという望美さんだが、今回の取材で望美さんが1番楽しそうに答えてくれたのは、自分の86についてではなく、大輔さんのカーライフについてだった。コペンの隣で写真撮影をしている大輔さんを見る眼差しは愛情に満ち溢れていた。
一方で、大輔さんは望美さんとクルマについて自慢気に語る姿が印象的だった。望美さんが86の撮影で車両を動かしている間に、奥様のエピソードについて沢山教えてくれた。
同じくらいよく話し、笑い、うなずき合う姿からは、お互いが思いあっていることをヒシヒシと感じさせてくれた。そして、そこにクルマという存在があることが、竹内さん夫婦にとってとても重要なのだ。
取材協力:大蔵海岸公園
(⽂: 矢田部明子/ 撮影: 平野 陽)
[GAZOO編集部]
GAZOO愛車広場 出張取材会 in 兵庫
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