オープンカーなんて恥ずかしいと思っていたのに…。乗ってみて感じたロードスターの魅力
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マツダ・ロードスター(NCEC型)
幼少の頃、自宅にあったレガシィ・ツーリングワゴンを足がかりにクルマ好きの道を歩み始めたという『ヤシロ』さん。
レガシィについて色々と調べを進めると、スバルというメーカーの歴史に関心を持つようになり、WRCでの数々の栄光の足跡を知り、当時第一線で活躍していたラリーカーのベースとなったインプレッサ(GRB型)に憧れを持つようになっていったという。
そんなスバルファンのヤシロさんに転機をもたらすキッカケになったのは、父親が買ってきた1台のクルマだった。
「父が職場までの通勤距離が遠くなったことをきっかけに、通勤用としてロードスター(NCEC型)を買ってきたんです。ただ、当時の私はインプレッサ(GRB型)のようなハッチバックスタイルのクルマが好きだったので、ロードスターにはあまり興味が湧きませんでした」
しかし、毎日嬉々とした表情を浮かべながらロードスターで会社へと出掛ける父親の姿を見るにつれ、次第に“なるほど、そういった世界もあるのか…”と、心境の変化が。
それから数ヵ月が過ぎた頃、「父の運転するロードスターの助手席に乗る機会がありました。その途中でオープンにしていざ走り出すと、身体に伝わってくる空気感が次第に変わっていったことを鮮明に覚えています」
幼少の頃の印象が強く残るレガシィよりも低い目線、コーナーを抜ける度に伝わってくるクルマとの一体感、そして見上げれば空という圧倒的な開放感。あまり興味を抱けずにいたロードスターの2シーター、オープンカーという個性に惹かれ始め、「クルマを判断する上でのストライクゾーンが広くなりました」というように、自身のクルマ観も変化していった。
そんな体験をしながらクルマ好きとしてもすくすくと成長したヤシロさんは、大学入学祝いとして父親からロードスターを譲り受けることとなり、自ら進んでオープンでのドライブを楽しむように。さらに、大学では自動車部に入部したことで、クルマ熱は一気ヒートアップを見せる。
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(写真提供:ご本人さま)
「色んな工具が揃えられた最高の環境で、自分のクルマを自分でバラし、組み立てる面白さにすっかりハマりました。大学の敷地内には自動車部用のちょっとした広場があって、日頃からパイロンを置いてドラテクの練習に取り組んでいるのですが、何度か走らせていると足まわりの剛性不足が感じられたので、色々と部品を調べて、サスペンションアームやブッシュ類も交換したんですよ」
「その後、モータースポーツにも興味を持つようにもなりましたが、ロードスターでのジムカーナ参戦は数回程度で、あとは同級生の助手席でコ・ドライバーとしてラリーに専念していました。もちろんまったく未知の分野でしたが、友人から『お前、Bライセンス持ってるやろ? ちょっと手伝ってくれ』と言われてズルズルと。コマ図は読み飛ばすし、ドライバーの言うことは聞かないし、自分でも決して良いコ・ドラだったとは思えませんが(笑)、それでも2023年度のRH6クラスでチャンピオンが獲れたんですよ!」
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(写真提供:ご本人さま)
ちなみにRH6クラスとはAT車限定で排気量1,500cc以下のFF車、および1,800cc以下のハイブリッド車が対象。ヤシロさんチームの参戦車両は、友人が所有するホンダ・CR-Zで、素性的には競技には不向きという声も多かったが、その分、いかにして戦闘力を高めていくかという創意工夫の過程を大いに楽しむことができたと語る。
このように、自らドライブすることはもちろん、構造や理論といった点に於いてもすっかりクルマの世界に傾倒したヤシロさんは、来年(2026年度)から、晴れて自動車メーカーに就職。その開発部門の一員となることが決定している。
「いろんなメーカーを検討しましたが、インターンで一ヵ月ほど実務を経験してみて、ここなら自分のやりたいことができそうだと、入社を決めました。改めて思い返せば、いつも機械に触れたいという気持ちが、小さい頃からあったような気がします」
「幼稚園の頃は漠然と“カーデザイナーになりたい!”なんて言ってたけど、小学校に上がって、いろんな本とか文献を読んでいくうちに、自動車の中身の面白さに気づいて、小学校の高学年になる頃には“自分仕様のトランスミッションを作りたい”と本気で思っていました。大学で理工学部を選んだのも、将来はクルマに関する何らかの仕事に携わりたいという気持ちが根底にあったから。会社ではどのような部署に配属されるのかまだ分かりませんが、次の世代を見据えたクルマ作りに少しでも関わることができたら良いですね」
現在、大学院の修士2年のヤシロさんは就職すれば九州を離れることになるが、もちろん赴任先にはロードスターも同行している予定だという。
父親から譲り受けた時点で8万kmを刻んでいたオドメーターは現在17万kmと、大学、大学院生活の5年間で9万km以上を走破したことになるが『10万kmまでがナラシなので、本当の楽しみはこれからです』と、手放す気持ちはまったく無いご様子。
「就職すると学生時代ほど時間の自由が利かなくなるかも知れませんが、せっかくロールバーを組んでいることだし、いずれは仲間と一緒にサーキットも走ってみたいと思います。小キズが増えたり、年々ボロくなって行く姿を見て、父からは“もう少し大事に乗ってくれ”と言われることもありますが、中身のメンテナンスは欠かさず行ってきているし、決して乱暴に扱っているワケではありません。乗る度にまだまだ、このクルマで遊び足りていないなとつくづく感じているので、最低でも30万、いや40万km走行を目指します!」
年々厳しさを増す環境対策や自動運転技術の進化など、古くからガソリンエンジン車を愉しみとしてきたクルマ好きからすると、正直明るい材料ばかりとは言い難いと感じられる未来のカーライフシーン。しかし、ヤシロさんのように若くしてロードスターでドライビングの楽しさをキッチリと経験された人材が、開発部門の要所を担ってくれるとなれば、そんな次世代のクルマ作りにも一筋の希望の光が見えてくるハズ。
ご活躍、期待しています!!
(文: 高橋陽介 / 撮影: 西野キヨシ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所: 大分大学 旦野原キャンパス(大分県大分市旦野原700)
[GAZOO編集部]
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