入学早々に自動車部の先輩から引き継いだロードスターには、カーライフのすべてが詰まっている
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マツダ・ロードスター (NB8C型)
全国の大学には『自動車部』が存在するところが多くあり、モータースポーツの入り口としても機能している。今回の取材会場となった大分大学にも自動車部があり、ジムカーナなどの競技を中心に活動を行っている。そんな大分大学自動車部の現部長である『okubo』さんが乗っているのが、2000年式マツダ・ロードスターNRリミテッド(NB8C型)だ。
昨今、MT車は軒並み中古車価格が上昇しているだけに、学生でもモータースポーツを手軽に楽しめるクルマが年々減ってしまっている。そんな中でもNBロードスターは比較的手頃なプライスを保ちつつ、基本に忠実な運転スキルを磨く素材として最適な1台と言われている。また、シンプルな構造であるがため、整備や構造を学ぶにも適しており、まさに自動車部員にとって最適なベース車となっている。
そんなロードスターを okuboさんが手に入れたのは、大学に入学して自動車部へ仮入部した時のこと。先輩が乗っていたロードスターを買わないかと打診されたことがはじまりだ。
「大分大学に入学してすぐ、自動車部に入部すると決めていたので部室に足を運びました。そしたら遠くから快音を響かせたこのロードスターがやってきたんです。しかも、乗り付けた先輩が部活を見学中の自分に“買わないか?”と言ってきたんです。その時はまだ運転免許を持っていなかったのですが、メチャメチャきれいな状態で、しかも激安なプライスを提示されてしまったら買うって即答しちゃうじゃないですか。それから夏休みに運転免許を取得して、無事に譲り受けることになりました」
ちなみに、大分大学自動車部は1953年に設立した伝統ある部活。以前はダートトライアル競技にも参戦していたが、ダートラ場の閉鎖に合わせてジムカーナがメインとなり、現在は全九州学生ジムカーナや地区戦、フォーミュラジムカーナといった競技をターゲットに、週に2〜3回の練習を行なっているという。
コロナ禍によって部員数の減少や活動が制約されてしまった時期があったものの、 okuboさんの代から再び活気を取り戻しつつあるそうだ。
そんな自動車部の先輩から譲ってもらったロードスターは、直列4気筒DOHC1.8リッターのBP-ZEエンジンを搭載。前期モデルのため可変バルブ機構はないものの、はじめての愛車としては十分すぎるほど。とはいっても、手に入れた段階で走行距離は20万kmを超えていたため、整備技術を磨く素材としても活躍してくれている。
「手に入れてからはほとんど毎日乗っていました。大学の講義やバイトが終わったら必ずドライブに出かけていたくらいですから。でも走って楽しいばかりではなく、燃料ポンプが壊れたり、ラジエターファンが不動になったりとドキドキすることも多いですね。特にクラッチのマスターシリンダーが壊れた時は、徹夜でオーバーホールしましたが直せなかったということもありました。自分で直しきれない時には先輩を頼ることもあるのですが、トラブルが起こる度に色々と学べて経験値が上がっていきますよ」
激安で手に入れたとはいうものの、エンジンまわりにはオートエクゼ製カーボンエアクリーナーやマキシム製エキマニなど豪華なパーツが装着されている。これらは前オーナーが手を加えたポイントなのだとか。
もともとはアルシオーネなど、ちょっと変わったデザインのクルマが好きだったという okuboさん。しかし自動車部に入部してクルマの挙動を覚えるに従って、運転技術をさらに磨きたくなった。その点でも素直な挙動のロードスターは最適で、運転する楽しさは病みつきになってしまうほどだったという。
また、アライメントを変更したときの変化など、セッティングの練習にも大いに役立っているのだ。
「走らせて楽しいロードスターの魅力は何と言ってもオープンなところですね。屋根を開けて風を感じながら走るのはもちろん、エンジン音や排気音などがダイレクトに伝わってくるのはオープンカーじゃないと味わえないのではないでしょうか。とはいっても、クローズで走っていても十分に楽しい。特に雨が降っている時に幌に雨粒がボツボツと落ちる音も、ロードスターならではのサウンド。この雰囲気も、僕にとっては最高の演出になってくれているんです」
アールヴァンレッドマイカのボディカラーと、ソフトベージュの幌(前オーナーによってビニール製からファブリックに張り替え済み)という組み合わせは上品な印象を与え、幌を閉めた状態ではモータースポーツで使われるクルマには見えない。
ちなみに、 okuboさんがオーナーになってから最初に手を加えたのが4点式ロールバー。九州大学自動車部主催の走行会に参加するために、はじめて自分で取り付けたパーツだ。手に入れてから2ヵ月で、さっそく自動車部員の愛車らしいカスタマイズが進められたというわけだ。
リヤクォーターパネルには大小様々なキズが残されているが、こちらは競技ではなく不注意でぶつけてしまったキズとのこと。ジムカーナに出場する際にレギュレーション上、形を整えなければならなかったため、急遽内側から叩いて修復した状態だが、今後はしっかりと直して、元どおりのキレイな車体に復活させる予定だという。
乗り始めて約2年が経過し、その時間分だけ自分でメンテナンスを行なうことで整備技術も向上しているという okuboさん。そのため機関系は好調をキープしているが、経年による所々にヤレが発生しているのは気になるところ。特に助手席はシートレザーが破れてしまい、中のウレタンが露出している状態。
「友達が横に乗る時はレザーの切れ端が服についてくるなんて苦情を言われることもあります(笑)。自分で座ることがないのであまり気にしていませんでしたが、やっぱりキレイに乗ることも考えた方がいいのかもしれません。けど、シートが破れていても動かなくなることはありませんから、走らせるためのメンテナンスを最優先にしちゃっています」
「今は走らせることとメンテナンスが楽しみになっています。昨年の夏休みには愛知の実家までドライブを兼ねて下道で帰省しました。関門海峡を渡って5日間ほどかけてのんびりと走らせたのですが、いろんな思い出ができましたよ。帰省したついでに父親に手伝ってもらいながらタイミングベルトを交換しちゃいました。父もクルマ好きなので、喜んで整備費用も出してもらえたのはラッキーでしたね」
ちなみに、昨年の全九州学生ジムカーナの成績は春が5位、秋が7位という結果。クルマの仕上げが間に合わず、さらにドライバーも未熟だったことが反省点なのだとか。この結果を踏まえ、さらに走行会などに参加して腕を磨いていくのが当面の目標となっている。
「3年生になった今年は、ジムカーナ地区戦を勝ち抜く実力を備えられるように努力します。歴代主将はジュニアシリーズチャンピオンを獲っていますので、自分もジュニアシリーズを制覇できるように技術を磨いていきます!」
okuboさんにとっては日常の移動から長距離ドライブ、さらにジムカーナ競技まで、カーライフすべての相棒でもあるロードスター。しかし、ドライビングスキルから整備技術、さらにクルマ本来の楽しさなど多くを学んだこの1台は、将来的に自分が手に入れた時のようにキレイに直して後輩に譲り渡すことも考えているという。
多くの学びを与えてくれるロードスターだけに、今の自分のように受け継いだ後輩も大きく成長させてくれるはず。歴史ある大分大学自動車部の将来に向けた贈り物として、これからも走り続けていくことだろう。
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所: 大分大学 旦野原キャンパス(大分県大分市旦野原700)
[GAZOO編集部]
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