新車購入から30年。走りとスタイリングに惚れたトヨタ MR2と共にスポーツな人生を歩む
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トヨタ・MR2(SW20型)
「この2月でちょうど30歳を迎えました!」
そう嬉しそうに話し始めたのは、ご自身初の愛車としてMR2(SW20型)を新車で購入し、30年経った今でもファーストカーとして愛用し続ける『まやのおとん』さんである。
1989年に発売が開始された2代目のトヨタ・MR2(SW20)は、初代MR2(AW10/11)の後継モデルとして誕生。その一番の特徴であるミッドシップレイアウトを引き継ぎつつ、先代に比べるとボディサイズはひと回り大きくなり、そのスポーティなスタイリングも人気となった。その後、SW20型は4度のアップデートが繰り返され、通称『V型』まで、述べ10年間発売された。
このMR2が発売されていた1990年代は、シルビアやスカイライン、RX-7にスープラなどの魅力的なFRスポーツカーが多く存在していた全盛期。その中で「まやのおとん」さんの琴線に触れるパッケージング、スタイリングをしていたのがこのMR2だった。
子供の頃から乗り物が好きで、自宅にあった田んぼを耕すトラクターに乗せてもらうのも楽しみだったという「まやのおとん」さん。18歳で運転免許を取得してからは、実家の軽トラや軽自動車に乗っていたそうだが、住んでいたのは一人1台クルマを持っていないと生活できない地域。そのため、大学を卒業する前のタイミングで自分のクルマを買うことになったそうだ。
「カッコ良いFR車が欲しかったので色々なスポーツカーを見たんですが、その中でデザインを見て一番気に入ったのがMR2やったんです。ただ、2人乗りというのにはちょっと悩みましたけどね。そんな時、ちょうどMR2がマイナーチェンジするという情報を知って、スタイルを見た時に『これや!』と思って買うことに決めました」
こうして、そのデザインに一目惚れした「まやのおとん」さんは、22歳でこのMR2を新車で購入。購入資金は事前にアルバイトなどをして貯めていたそうだ。
MR2は4回のマイナーチェンジが行なわれているが、1994年4月時点で彼が購入したモデルは、1993年11月に発売開始となった通称『Ⅲ型』となる。グレードはNAモデルのG-Limitedのノーマルルーフ。トランスミッションは運転好きなオーナーらしい5速MTが選ばれた。
Ⅲ型の外装はリヤスポイラーやテールランプのデザインが一新され、さらにサイドモールとフロントリップスポイラーがボディと同じ色に変わった。
「色々変わった中でも特にお気に入りは、テールランプが目に入る、斜め後ろから眺める姿が僕の好みにぴったりだったんです。ですので、ボディの色もこのテールが一番映える白にしました。自分の運転技術が未熟なのに、ターボ車のようないきなりハイパワーのクルマは扱えきれなさそうだと思ったので、NAを選びました」
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(写真提供:ご本人さま)
そんな「まやのおとん」さんは、MR2を手に入れてから程なくしてジムカーナ競技を始めたという。
「買った時はそこまで興味はなかったんです。でもちょうど自分の周りでジムカーナをやっている友達がいたので、どんなもんかなと思うて軽い気持ちでやってみたんですけど、これが思った以上に楽しかったんですよ。僕が理系の人間だからか、自分で運転してみると垂直抗力と摩擦力の関係性だったり、前荷重にしたら舵が効きやすくなったりとか。そういった物理現象が理に適っていて、実際に体感して腑に落ちるのが楽しかったんです」
「それにジムカーナって低・中速域での競技ですからクルマの動きもわかりやすいし、限界を超えてもサーキットと違うて大きな事故にはならないですか。だからモータースポーツを始めるきっかけがジムカーナだったのは、非常に良かったな、と」
余談だが、彼の大学の専攻は電気力学だったそうだが、MR2と出会ってからは物理学のほうが好きになってしまったのだとおっしゃっていた。
そして、その後7年間はご自身の普段の移動手段として、そしてジムカーナ競技にとMR2ライフを謳歌していた。しかしそんな彼の順風満帆なカーライフを揺るがしたのが、結婚と海外転勤だった。
「結婚した時に、嫁の嫁入り道具の照明とかを積もうとしたけど、やっぱり無理やったんです(笑)。そんなこともあってちょっとMR2だと不便だったので、実家のクルマを使わせてもらっていた時期もありました。その後、子供を授かったこともあって、とりあえずしばらくMR2を実家に保管しておいて、ミニバンを買うために見積もりを取って、あとは支払うだけの状態となっていた時に、上海への異動を命じられたんです」
その後、「まやのおとん」さんは7年近く上海で過ごすことに。上海での生活は、会社の規則で自家用車を持つことができなかったため、クルマとは縁のない生活を送っていたそうだ。そしてその間、MR2は、時々いとこに動かしてもらいつつ、実家に保管されていた。
「40歳手前で帰国した時は、とにかくこのクルマに乗りたくてしょうがなかったですね。そこで、50万円かけてリフレッシュしたんです。ウォーターポンプやデフ、タイミングベルトにオルタネーター。それとブレーキホースも一新。さらに、効かなくなっていたエアコン一式なども交換しました。けど、嫁さんには内緒でやっていたんで、後でバレた時にえらい怒られました(笑)」
カーライフから離れていた7年の間、MR2への愛情が薄れることは一切なかった。手放すことを考えるどころか、いち早く乗るためにお金をかけてリフレッシュさせたことからも、彼がどれだけこのクルマに愛着を持っていたかが良くわかる。
ちなみに、帰国後は奥様用にシエンタを購入。こちらもメンテナンスをしつつまだ乗り続けているそうだ。また、取材時に着ていたこの赤いブルゾンは、学生の頃にはじめてのアルバイトで購入したものだという。そんな所からも、彼が大切なモノは末永く大事にするお人柄だということが伺える。
MR2をしっかり復活させたその後、仕事が忙しくなって、思うように時間が取りにくくなってしまった。さらに、ジムカーナ仲間との繋がりが途絶えてしまったこともあって、現在は週末に出かける時の相棒として活躍しているという。
「僕はゴルフが好きなので、このクルマでよくゴルフに行くのですが、その時にゴルフバックを2個積んでいくと結構びっくりされます(笑)。あと今は、たまにですがセントラルサーキットを走るようになりました。サーキット近くのショップさんが主催されている走行会なんですけど、これも結構楽しいですね」
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(写真提供:ご本人さま)
「以前、鈴鹿サーキットを走った時にはホームストレートのかなり手前でブレーキングをしてしまったんですが、セントラルサーキットで経験を積んでだいぶブレーキを詰められる様になったので、鈴鹿サーキットでリベンジしたいと思っています」
そんな「まやのおとん」さんのMR2は、取材時の走行距離19万9748km。その外観は純正形状を保ったままで、とても綺麗な状態だ。
「僕はこのMR2のデザインが気に入っていたし、ドレスアップにも興味がなかったので外装はイジらず、主なカスタムは機械式デフ(LSD)、TRD製のエンジンマウントとクラッチ、バケットシートとステアリング、あとはジムカーナの先輩にいただいたタワーバーというかんじです。機械式デフ(LSD)はジムカーナを始めてすぐに追加したんですけど、とにかくすごかったなと。デフを入れていなかった時は、リヤの片輪だけで駆動している感じだったのが、デフを入れた途端にアクセルでスッとクルマの向きが変わってくれて」
また、日々のクルマの点検、消耗品交換などのメンテナンス、整備などは全てご自身でやられているという。そして、その際に愛用しているのが、今では貴重なMR2の整備マニュアルだという。
「最初に発売されたものからモデルチェンジ時のもの、それとまだ活躍していないんですがエンジン修理書もあります。何かあった時はこの整備書を見れば数字的なものなどは全て書いてあるので、これを見ながら整備できるのですごく助かってます。エンジン修理書はきっとこの先、オーバーホールとなった時などに役に立つかなと思っています」
“絶対値”が明確に記載されている整備マニュアルは、理論的に考える理系の「まやのおとん」さんにとって、この上ないピッタリなアイテムと言えそうだ。
今後も愛機MR2を乗り続ける気満々の「まやのおとん」さんだが、他に所有してみたいクルマはないのかと伺ったところ、なんと「マクラーレンとAE86」という、大きく趣旨の異なる車種が出てきたので驚いた。
「マクラーレンは、『泉大津フェニックス』というだだっ広い場所で開催された試乗会に行ったんですけど、いやぁ~、あれはすごく楽しかった! えらいパワーがありますから、アクセルをちょっと踏んだだけでぶっ飛んでいくので、今まで体感したことのない世界に連れていかれました。超高速域からのフルブレーキ体験とかもできてその性能の高さに驚きました。ぜひまた乗りたいですね」
「AE86は、先輩に乗せてもらったことがあったんですが、馬力はなくてもMR2以上に自分でクルマをコントロールしている感覚がすごく楽しかったからです。僕の好みはあくまでも自分のコントロール下において楽しめるクルマが性に合っているんです。マクラーレンはそういうのを通り越して、逆に優雅に楽しみたいですね」
そう楽しそうに話して下さった、「まやのおとん」さんの顔がとても印象的だった。
そんな憧れのクルマがありつつも、現実では新車から30年乗り続け、20万kmを迎えるこの愛車を「これからもできるだけ長く乗り続けたい」という。
結婚や海外転勤、事故など、別れを決意してしまうような分岐点が幾度かあったにも関わらず、ただの一度も『手放す』ことなぞ考えないほど、このMR2が大好きな彼。きっとこの先も変わらず、共に笑顔で歩み続けていくことだろう。
(文: 西本尚恵 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:ジーライオンミュージアム&赤レンガ倉庫横広場 (大阪府大阪市港区海岸通2-6)
[GAZOO編集部]
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