新車から30数年乗るRX-7を、自分オリジナルの「アンフィニ」仕様へと進化させ楽しむ
初めての出会いが、永遠になる──。RX-7(FC3S)だけを乗り替え、30年以上添い遂げ続けるオーナーは、早川 勲さんです。
マツダのサバンナRX-7(FC3S)。ロータリースポーツというハードウェアとしての魅力はもちろんですが、早川さんがRX-7を選んだ理由はもうひとつあります。それが、コミック『バリバリ伝説』(しげの秀一/著)の存在です。
──でも、そもそも『バリバリ伝説』って、バイクが主役のコミックですよね
もちろんその通りです。『頭文字D』(イニシャルD)や『MFゴースト』でおなじみの、しげの秀一先生の作品ですね。
高校生だった主人公の巨摩 郡(こまぐん 以下:グン)が、峠バトルをきっかけにサーキット走行会を通してライディングに覚醒していき、プロのワークスライダーへと成長していくストーリーです。
全日本から始まり、果ては世界ロードレース選手権までステップアップしていく様は、これまで何度読み返したか覚えていないほど繰り返し読んでいますが毎回、涙と感動です。
──クルマ(RX-7)は、どう関係してくるんですか?
グンがプライベートで乗っている設定の愛車が、前期の白いRX-7だったんです。ほとんど誌面には登場しないのですが、恋人の伊藤歩惟(いとうあい)が危ない目に遭っているのを助けたりと、節目節目で存在感を放っていました。
カーチェイスの見せ場も用意されていて、両側をトレーラーに挟まれそうになる場面があるのですが、そんな窮地をドアミラーをたたんだ状態で間一髪ですり抜けるスリル満点のシーンに惚れました。
──最初にRX-7を購入したのはいつ頃ですか?
それに憧れて、RX-7を購入したのが19歳の頃でした。1台目は、当時で半年落ちだった中古車を買いました。本当はグンと同じ白のボディカラーが欲しかったのですが、シルバーにしました。
「ロータリーエンジンは燃費が悪いぞ」などと親からは反対されましたが、半年かけ頭金を100万円貯め、その気合で親には納得してもらいました。
シートにレースカバーが付いているほどの、新車に近いコンディションでした。当時、先輩がAE86で峠で遊んでいて走る楽しさを知ったのもこの頃です。
──次のRX-7にはなぜ乗り替えたのですか?
およそ2年が経ち、車検が近づいた頃に後期に替えたくなりました。ちょうどいい感じの車両が見つかり、1台目が良い条件で下取ってもらえたので乗り替えることができました。ボディカラーは黒になりました。
ここまでの2台は過度なカスタマイズはせずノーマル感を大事にしながら乗っていたのですが、1991年9月にお世話になっているマツダディーラーのセールスさんから運命のささやきがありました。
そのセリフが「FC3Sの新車を買うなら、今が最後ですよ」というものでした。
そのセールスさんが言うには、11月にはフルモデルチェンジすることが決まっており、なおかつル・マン優勝記念の特別仕様車「ウイニングリミテッド」のシェードグリーンのカラーが残り1台とのこと。もう迷わず契約しました。3台目にして、初の新車です(笑)
──でも、現在の見た目はどう見ても「アンフィニ」ですね
納車されて5年ほどは、ほぼノーマルで乗っていました。その後、友人にサーキット走行に誘われてから、カスタマイズに目覚めました。それから十年ほど経ってふと「この車をアンフィニにしたらどうなるだろうと」構想しはじめ、パーツを集めはじめました。
当時、4つのバージョンがあった特別仕様車「アンフィニ」で最終型はアンフィニⅣ(フォー)でしたが、私の考えたコンセプトは「アンフィニⅤ(ファイブ)があるとしたら、きっとこうなるだろう」という仕様です。
歴代アンフィニはストイックに2シーター化されたモデルでしたが、私は走りを意識した4シーターがあってもいいと考えていました。リヤシートを撤去することで前後重量配分が崩れてしまう点にも不安があったので、リヤシートは残しアンフィニ化を進めました。
2002年には後継のFD3Sの最後を飾った特別仕様車「スピリットR」が出ましたが、BBSホイールを履いていたりどことなくアンフィニの匂いを感じました。
このスピリットRには4シーター版の「タイプB」もあって、私の考えた「アンフィニⅤ」のコンセプトにとてもよく似ていると感じました。
アンフィニといえば数々の専用装備があります。そのひとつがブロンズガラスやドアミラーのブルーレンズ化です。ここはしっかりと押さえていきました。ドアトリムもアンフィニ用です。
ホーンボタンも「∞」マークの入りです。ドライバーを支える左右のニーパッドも装着しました。
また、助手席用のフットレストバーと専用のフロアカーペットもアンフィニ用です。助手席のパートナーがGに耐えられるよう足を踏ん張るためのバーを標準装備していたなんて、あらためて振り返るとかなりスパルタンですよね。
そして歴代アンフィニの足元を飾っていたのがBBSアルミホイール。ここは私のこだわりで、R32スカイラインGT-R のVスペックのものを流用しています。
歴代アンフィニは16インチでしたが、私の考える「アンフィニⅤ」は17インチ。サイズアップしたことにより、走りに磨きをかけることができました。
──エンブレムを含めて完璧に再現しながらの、早川さんらしいプラスαが効いていますね。
あとメーターをカナダ仕様の260km/hスケールに交換したり、純正然の雰囲気は壊さないようにしています。
私としては理想の姿に完成し、そのうれしさから距離を重ねていきました。現在のオドメーターはおよそ15万kmなんですが、実はエンジンは5機目なんです。
いろいろと失敗を重ね学んだおかげもあって(笑)、パンスピードでイチから組み上げた現在のエンジンがもっとも調子がいい感じです。現在でもときどきサーキット走行を楽しんでいます。
──早川さんの『バリバリ伝説』愛は、お持ちのバイクにも注がれてますね。
グンの乗るバイクといえば赤いCB750Fが有名ですが、残念ながら盗まれてしまい、ストーリー第2部からはNS400Rへ乗り換えています。そのロスマンズカラーに憧れて、手に入れました。パーツの供給状況は厳しくもありますが、エンジン、フレーム、サスペンションなど各部をオーバーホールし現在は絶好調。このまま維持管理していきたいです。
ライディングギアも、頭の先から足もとまですべてグン仕様が揃っています。ヘルメットはグンのレプリカで、作中にも登場していたJレーシングプロジェクトというお店で、グンと同じ配色のツナギやブーツも購入しました。もちろん現在は絶版です。
『バリバリ伝説』の世界観を四輪・二輪両方でリアルに堪能している早川さん。作品内のキャラクターがいつまでも歳をとらないように、作品への思いを語る早川さんは、きらきらと若さに満ちあふれていました。
【instagram】
hayakawa.isao7さん
(文:畑澤清志)
“一生モノ”として愛されるRX-7(FC3S)
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