偶然の出会いがつなげた「フォルクスワーゲン パサート」とバックカントリースキーの縁
以前「ゴルフ32R」を愛車としていたころ「ゴルフ32R」のユーザークラブの仲間から誘われたのがバックカントリースキー。その頃はスキーも初心であったが、参加してみたら大自然の中でのウィンタースポーツにハマってしまったそうだ。その活動期間は12月から残雪ある8月までと期間も長い。バックカントリーの魅力と愛車について伺った。
バックカントリースキーとの偶然の出会い
「フォルクスワーゲンもバックカントリースキーも、ほんとにちょっとした偶然の出会いが積み重なっただけなんですよ。たまたま出会ったという感覚です」と、にこやかな笑顔で語りはじめてくれたのは、村上竜太さん。スキーをやりはじめたのは娘さんと一緒に、それからバックカントリースキーにもハマって2年と、比較的最近のことなのですが、すっかりウィンタースポーツの魅力にとりつかれています。
バックカントリースキーとは、スキー場が管理している圧雪したコース(いわゆるゲレンデ)ではなく、降ったままの自然の状態の雪でスキーを楽しむスタイルを言います。冬だけでなく、春や夏に雪が残っている山の斜面で楽しむこともあります。管理エリア外の山中なので遭難リスクもあり、もちろんリフトもないため、自分の足で登山もすることになります。
体験したことがないと、熟練のスキーエキスパートのみが楽しめるエクストリームスポーツのように思えますが、村上さんの楽しむ様子を聞いていると、注意事項を守って山岳ガイドと一緒のツアーであれば、問題なく楽しむことができるようです。
村上さんは、キャンプでアウトドアを楽しむときに、スウェーデンのスポーツファッションブランド「PeakPerformance(ピークパフォーマンス)」が好みで、ウエアをよく着ていたそうです。PeakPerformanceはさまざまなスポーツイベントやアウトドアツアーを開催していたそうで、ショップスタッフから山歩きツアーを勧められるままに参加したときに出会ったのが、PeakPerformance契約ライダーであり、日本を代表するビックマウンテンスキーヤーの山木匡浩(ヤマキックス)さんでした。
そのツアーで「バックカントリースキーを楽しんでみないか」と直接誘われたのが、大きな転機だったようです。ビックマウンテンスキーは、バックカントリースキーと同じジャンルですが、世界中の高い山(ビッグマウンテン)を対象にして滑走するエクストリームスキーで、世界的な大会も開催されています。より豪快なバックカントリースキーと考えてよいでしょう。
偶然出会ったフォルクスワーゲンのファンに
そんな行動力のある村上さんが選んだ愛車は、フォルクスワーゲン「パサート オールトラック TDI 4モーション」。とても雪山と似合いそうですが、これはバックカントリースキーを意識しての選択ではないそうです。元からファミリーでオートキャンプも楽しんでいて、荷物をたくさん積むことを考えての選択でした。四輪駆動を選択したのは、雪道走行と関係なく、そもそものドライビングフィールの好みだったようです。
村上さんは、フォルクスワーゲンを3台乗り継いできたファンでもあります。前車は「ゴルフR」、その前は「ゴルフR32」というハイパフォーマンスカー。ファミリーでの荷物の積みやすさだけを考えれば、ミニバンに行き着くと思うのですが、その選択肢はなかったとのこと。パサートに乗り換えて最高出力は落ちましたが、「ディーゼルなのでV6エンジンの官能的なふけ上がりと比べるのは酷ですが、それほど不満はありません。燃費がいいのがありがたい」とのこと。
「ゴルフR32」時代にはユーザークラブに参加して、仲間も増えたそう。「クルマ好きと、スキー&スノボをやる人って結構な確率でシンクロするんですよね」と言うように、そのときクルマを通じて知り合った友人とスノースポーツを楽しむこともあるのだとか。
「スキーのテクニックは未熟なのですが、レベルを山木さんに伝えたうえで参加しても大丈夫とのことだったので、思い切って参加してみたんです。同じフォルクスワーゲンのオーナーというつながりもありますが、同年代というのも話しやすかった理由かもしれません」と、意気投合したのが大きかったようです。
また、バックカントリースキーは一人で参加していますが、ファミリーでスノースポーツを参加するときは、Thuleのルーフボックス「Motion XT Sport」を付けて積載性をアップしています。最長175cmまでなら、スキー板も入ってしまいます。
バックカントリースキーは登山ガイドと一緒に楽しもう
村上さんは外資系IT関連会社で働き、オフィスでのサーバー運用のための機材を扱っています。その技術的なことをサポートするのが主な仕事。専門的な知識が必要で神経も使います。「週末に雪山という自然のなかで思いっきり遊ぶことで、すっきりリセットできます。無心でいられるバックカントリースキーは、とても気に入っていて、まだしばらくは続けたいです。スキー技術の向上も目指したいですね」と、すっかり雪山が気に入っているようす。シーズンになると、月に2~3回は通っているそう。12月からゴールデンウィークまではもちろん、乗鞍岳など夏まで雪が残っていれば挑むとのことで、ちょっと驚きます。
バックカントリースキーのツアーといっても、ベースは新雪が豊富なスキー場の頂上からはじめるそうで、まずはスキー場周辺の安全な場所に、山木さんのようなガイドと一緒に奥に入っていくそう。
バックカントリースキーでは、スキーで歩く必要があることから、スキーブーツのかかとが外れるような仕組みのビンディングを取り付けます。もちろんスキー板も専用に作られたもので、幅広であまりくびれがない形状をしています。雪の登り坂では、スキー板の裏にシール(クライミングスキン)を取り付けて、滑走面を引っかかりのある毛のような状態にしてから登っていきます。
また、ウエアも激しく動くため、中綿の入っていない発汗を逃がすゴアテックス素材の薄いアウターシェルを着るとのこと。もちろんヘルメットも必須です。
雪崩にあってしまったときなどに救助する三種の神器、雪崩ビーコンと折りたたみスコップ、プローブは必須です。雪崩ビーコンは発信モードにした状態で、ウエアの内側に装着しておきます。雪崩に巻き込まれた人を発見する場合には、捜索する側がビーコンを捜索モードに切り替え、信号を頼りに埋まった人をサーチします。ビーコンが反応したら、プローブを挿して深さを探り、スコップで救出するのです。一分一秒が命に関わるので、使い方の講習も必要になります。
一般的にバックカントリースキーのツアーはレベルに応じて行なわれますが、基本的にはスキー技術向上が目的ではなく、プロの山岳ガイドによって安全な場所を見きわめて、滑っても安全な場所を提供してもらう場と考えた方がよいとのこと。基本的なスキー技術の向上は、ゲレンデで開催されている教室を活用するとよいでしょう。「山木さんの場合はバックカントリースキーの滑り方レッスンのコーチと、一緒に降りるガイドの役割を両方してくれるので安心できます。もちろん埋まったときにも引っ張り出してくれますよ」だそうです。
ちなみに、ゲレンデ内でバックカントリーに見立てた非圧雪のコースが設けられていることもあるので、徐々に慣れていくこともできます。いずれにせよ、自分勝手にスキー場のコースを離れることは大変危険ですので、絶対にしないでください。必ずプロ山岳ガイド同行のツアーに参加しましょう。
「ガイドと一緒に滑って安全を確保していれば、スキーテクニックはほどほどでも大自然に降った新雪を楽しめます。どちらかといえば、ウエアやビーコンなどの装備を揃えたり、使えるようになったりすることの方が重要。フィーリングのあった、安心してついていけるガイドさんと出会えたことも、今から思うととてもありがたいキセキでした」と、これからも長く楽しんでいけそうな感じがします。安全に楽しむバックカントリースキー、ちょっとでも興味がわいたら門戸をたたいてみてはいかがでしょう。
注意)スキー場の管理区域外の自然の雪山で滑るバックカントリースキーは常にリスクを伴います。必ず適正なプロ山岳ガイドの指導のもとで、安全に行なってください。滑走技術はもとより、雪崩対策をはじめとして安全に関わる知識、専用装備などが必須です。入山時には登山届の提出も必要です。事故や遭難のときの、捜索と救出費用は基本的に自己負担になるので、保険の加入も考慮に入れてください。
(文:村上俊一 写真:中島仁菜)
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