【おしゃれなあの人の気になるカーライフ】ペーパードライバーに終止符を打ったディナンの街での出会い

「街で出会ったおしゃれな人のあの雰囲気に憧れる〜」。と、ウキウキした経験はありませんか。その人はきっと、ファッションや、行く先、趣味、生活模様だけでなく、クルマの乗りこなしに至るまでも、自然でさり気なくて、その人全体が魅力的なはず。そんな人たちの、おしゃれでさり気ないクルマとの暮らしを、ちょっと覗いてみました。

サックスとマイカーが彼女の癒しのひととき

薄曇りの雨の日に、しっとりと雨に濡れても美しさを放つ、オペラボルドーという特別色をまとまった限定車、フィアット500 Collezione(コレッツィオーネ)で現れた水飼和美さん。運転するときの靴からハイヒールに履き替えて、クルマから降り立つ様子は手慣れた様子。イタリアのデトックスの生地と日本の着物を融合したレナクナッタのスカートもとてもよく似合う。

運転するときの靴は、レペット バレエシューズ

水飼さんは10年以上ものペーパードライバーの時期を経て、今のクルマを手に入れた。いまは少しずつドライブの距離を増やして、練習という名のマイドライブを楽しんでいるそう。
「仕事は看護師をやっています。コロナ禍の中ですので毎日、ビニールガウンを着て勤務に勤しんでいます。仕事後のリフレッシュは趣味のサックスを演奏することです。でもいまはコロナで環境が大きく変わってしまいました。なかなかみんなで集まって練習することや演奏会ができなくなったことは寂しいですね」

そんな環境が変わる中でもうひとつの大切なリフレッシュタイムが、マイカーで過ごす時間。
「自分のクルマを手に入れてからは、ドライブしながら車内で音楽を聞くことはわたしにとって大切なリフレッシュのひとときです。車内でひとり、歌を歌うこともあります(笑)あとラジオが好きなので、ラジオを車内で聞くのも気分転換ができる時間です」

ペーパードライバーを脱出したきっかけはディナンの街での出会い

彼女がこのクルマに辿りつくまでには、少し長い物語がある。はじめて素敵だと思ったクルマは憧れのプロのサックス奏者が乗るアルファロメオ。それから数年が経ち、免許を取得し、1度はマイカーを手にするものの、すぐにクルマに乗らなくなり、ペーパードライバーとしての長い年月を過ごすことに。

「最初にクルマって素敵だなと思ったのは中学生のころ。サックスを始めようと思ったきっかけになった憧れのプロの奏者がアルファロメオに乗っていたことなんです。免許もまだ持っていないころでしたが、それがとてもかっこよく目に映りました。実際にサックスを教えていただいた奏者の方も赤のかっこいいスポーツカーに乗っていました。そういうのが重なって、素敵な大人はかっこいいクルマに乗るものなんだなという印象がついたのです。わたしもいつか大人になったらかっこいいクルマに乗ってみたいと思いました」

でも実際は免許を取得できる年齢になり、マイカーを購入することになったときに、自分が乗りたいクルマではなく、両親のすすめでクルマを選ぶことになってしまったそう。
「自分で購入するのにおかしな話なんですが、両親がとても厳しくて。自分がほしいクルマではなく、両親のすすめで言われるがまま購入してしまったので愛情を注ぐことができず、いつしかクルマに乗らなくなりずっとペーパードライバーの状態になっていました」

いつの間にかクルマは自分で運転するモノではなくなり、運転しない日々が続く中で、もう一度『自分でクルマを運転したい!』という気持ちに火がついたのは、ベルギーのディナンで開催されたサックスのコンクールを見に行ったことがきっかけになったという。

水飼さんが旅行に行ったときに撮影したベルギーのディナンの街並み

「ベルギーのディナンでは4年に1度、サックスの世界大会が開催されるんです。以前からずっとコンサートを見に行きたくてディナンへ行ったのですが、コンサートの帰り道に電車が停まってしまい、立ち往生して困っていたときに、とても親切な老夫婦の方がクルマで送ってくれました。そのときに乗ったクルマがアルファロメオ。道中も本当に親切にしていただきました。優しく親切な老夫婦との出会いを通して『そうだ、かっこいい大人は素敵なクルマに乗っているんだった、、、』という心のときめきも思い出しました」

わざと遠回りしてクルマとの時間を楽しむ

帰国後。さっそくディナンで思い出したときめきをそのままに、自分でマイカー探し。あれこれ見る中で琴線に触れたのが今のクルマ。

「まだまだぜんぜん自由に走ることはできないのですが、自分の好きなクルマを運転できる日々はとても楽しいです。コロナ禍なのでいまは制限がありますが、買い物へ行くときはわざと遠回りしたりしてクルマと過ごす時間をつくっています。以前は実家に帰るときは電車でしたが、いまはクルマで帰っています。最初はドキドキして緊張疲れをしていましたが、その道のりも苦痛ではなくなりました。少しずつですが、ロングドライブが楽しくなっています」

走ったことがない道を自由に走りたい、そして愛犬とのドライブも

「本当に不思議ですよね。ずっとペーパードライバーだったのに、運転もまだ怖いのに、クルマに乗りたくなる。やはりクルマは妥協せずに自分の気に入ったものを納得して選びたいですね。そのほうが断然、愛着がわきます。まだ運転には自信がないけれど、少しずつクルマとコミュニケーションをとって、いつか通じ合えるようになれたらいいなと思っています」

車内にはフィアットの小物を置いて自身が心地よくなるアイテムでコーディネートも楽しんでいる。赤いフィアットのティッシュケースは、ノベルティのポシェットをアレンジしてティッシュケースに仕上げたもの。
「ひとつ、ひとつ、お気に入りを置いています。クルマの中はわたしのもうひとつのお部屋ですね。マスコットはクマなのですが、なぜか昔飼っていた愛犬に似ているんです。心がほっとするので目に見えるところに置いています」

クマのマスコットと愛犬の写真。茶色がレオくん、アイボリーっぽい毛並みのコがココくん

自分で選んだクルマに乗るコトで愛情が芽生えて、ペーパードライバーに終止符を打った水飼さん。彼女にとって第二のクルマ生活ははじまったばかり。

「いまははじめてここに行けたとか、ひとりでロングドライブできたとか。そんな小さな目標をクリアしていく過程が楽しくて、ワクワクしています。首都高にもひとりで乗れるようになりたいし、参宮橋にあるサックスの練習場まで自分のクルマで行ってみたい。まだまだ都内の道は難しくてひとりで出かけられないのですが、いつか冷や汗をかかずに気負いなく、スマートにどこへでもクルマと行けるようになりたいなと思っています。それから犬を飼えるように整えようといま準備をしています。犬とのドライブも楽しみです」

プロフィール/水飼和美さん
みずかい・かずみ/埼玉県出身。職業看護師。趣味のサックスは学生のころから。2年前に新たなクルマを購入してから、ペーパードライバーに終止符を打ち、ただいま自分で選んだ車種で第二のクルマ生活を満喫中。

トップ/MERCURYDUO、ピアス&スカート/renacnatta、パンプス/Mode et Jacomo、バッグ/PRADA

(取材・文/鈴木珠美(officetama,Inc.) 写真/村上悦子)

[ガズー編集部]

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