即断即決で手に入れた「アガリの1台」、いすゞ・117クーペXC(PA95型)と楽しむ旧車ライフ

「この1台」と思える理想のクルマと出会ったとき、あなたならどうするだろうか?

本当にこの個体で良いのかを吟味し、他と比較するだろうか。あるいは直感を信じ、即購入に至るのだろうか?

「決めたらすぐ買うタイプです。買うということは何かの縁があったということですし、クルマに関わるさまざまな人ともつながっているはずです」。

そう話す51歳の男性オーナーが、今回の主人公。愛車は手に入れて2年目の、いすゞ・117クーペXC(PA95型、以下117クーペ)だ。1975年式で、中期型となる。デザインはあのジョルジェット・ジウジアーロが手掛けた。スポーツマインドにあふれつつも、どこか閑麗なオーラをまとうスタイルは、70年代の若者たちにとって憧れのクルマであり、今もなお多くのファンを惹きつけてやまない。

ボディサイズは全長×全幅×全高:4310x1600x1320mm。排気量は1817cc、「G180SS型」と呼ばれる、ツインキャブレター・直列4気筒SOHCエンジンの最高出力は115馬力を発生していた。

117クーペは3度のマイナーチェンジを行っていて、前期型・中期型・後期型に分かれる。

前期型と後期型で大きく異なっている点は、ライトの形状なので分かりやすい。前期型は丸目ライトで後期型は角目ライトになっている。

オーナーが所有する個体は中期型だ。丸目のライトが一見すると前期型のようだが、よく見てみると前期型にも後期型にもない特徴がある。テールライト・ウインカーなどが大型化されている点に加え、ハンドメイドのボディから量産に変わったのも中期型からだ。

今回紹介するオーナーは、以前登場してもらった117クーペオーナーの友人なのだ。

幼少期に「カッコワルイ」と思っていたクルマが忘れられない存在に…。いすゞ・117クーペXC(PA95型)
https://gazoo.com/ilovecars/vehiclenavi/180210.html

117クーペは同車種で並んでいても、個体によって表情が少しずつ異なる。ただただ美しいコンディションを維持している印象だった。まずは、この117クーペに普段、どのように接しているかを伺った。

「晴れた日にはよく乗っていますね。買った当初は7万キロだったのに、この2年ほどで8万3000キロになっていました。ときどき通勤にも使っているから距離も延びているのでしょう(笑)。私はもともとロードバイクが好きで、以前は年間10試合に出るほど熱中していましたが、最近は117クーペと走る時間が楽しくてしかたがなく、めっきり乗らなくなってしまいました。今はロードバイクでよく走っていた定峰峠や白石峠がメインのドライブコースです。このクルマで走っていると、並走して撮影されることもよくありますね」。

今までかなりの台数を乗り継いできたオーナー。18歳で運転免許取得後に手に入れたトヨタ・カリーナ1800STをはじめ、フォルクスワーゲン・ビートルタイプ1、プジョー・504、ボルボ・アマゾン、日産・スカイラインGC10、マーチ スーパーターボなどのほか、ファミリーカーとして買い替えたクルマも数多く、覚えきれないほどだという。現在はこの117クーペと、普段の足としてトヨタ・bBを所有している。

「20代は日産が好きでしたね。漫画の『シャコタン・ブギ』を読んでハコスカが好きになりました。以前乗っていたスカイライン(GC10型)は、昼休みに外出したときに、たまたま店頭に飾ってあった個体を気に入って衝動買いしたものです」。

この117クーペも即決即断で手に入れたという。

「子どもが独立して余裕ができ、好きなクルマを買うタイミングだと思っていました。以前からいすゞ・ベレットが好きで、117クーペ以外のクルマにあえて乗るなら、今でもこのクルマがいいと思っています。そのベレットの程度が良さそうな個体を、あるときショップのホームページで見つけたんですが、すでに商談中でした。すると同じショップで、ノーマルに近い117の個体を見つけました。即購入してしまいましたね。エンジンもベレットと共通ですし、117クーペは車高を下げなくてもスタイルが決まるんです。ちなみにこの独特なフォルムの魅力は、大人になってから気づきました。フェラーリ・デイトナやディーノの良さが分かるようになった感じに似ている気がします」。

ここで、愛車のもっとも気に入っている点を伺ってみた。

「リアからの眺めでしょうね。個性的なフォルムと、直線がないところが気に入っています。室内の7連メーターも非常に気に入っていますね。昔のスーパーカーみたいに並んでいるのがかっこいいと思います」。

オーナーの個体は一見フルオリジナルに見えるが、実はエンジンや吸気系のモディファイにこだわった仕様となっている。作業は、行きつけのショップに依頼しているそうだ。

「前のオーナーが全塗装やメッキ塗り替えなどのセミレストアをしているので、エンジン・パネル・ステアリング、足回りをひととおり調整しています。エンジンは、パッキンのストックがなかったので、開けられない部分以外はすべてオーバーホールをし、バルブタイミングの調整などを行いました。ほかにも、体型に合わせてクラッチのミートポイントを調整してもらったり、アクセルにエンジンの振動が伝わらないよう、ピロボールも付けてもらっています。クラッチとアクセルの調整はショップの提案だったんです。おかげで黒煙も吐かないし、キャブレターの調子も良好です。燃調も濃すぎずベストだと思います。ここは、レースの経験が豊富で、腕がいいショップなんです」。

腕のいい「主治医」の存在は、旧車と過ごすカーライフには不可欠といえるだろう。さて、オーナーがモディファイの中でも、もっともこだわっているポイントとは?

「SOLEX製のキャブレターが付けいていたので、せっかくなので極めたいと購入したエキゾーストマニホールドです。旧車誌に掲載されていたショップの広告で情報を見つけて購入しました。マフラーもワンオフで製作してもらっています。一見ノーマルですが、エンジンのサウンドと吸気音は違うぞというギャップを見せたいです。熱が入るほどになじんで変わっていくサウンドも楽しみです。あとは純正ホイールも気に入っていますね。117クーペはホイールのチョイスが難しい。好みの問題もありますが、下手なホイールを履くなら純正かなと個人的には思っています」。

117クーペの部品供給の現状はどうなのだろうか?

「他車種用の部品を加工しています。純正品に強いオーナーがいるので、その方から手に入れることもあります。一般には出てこないゴムパーツも、そのオーナーならストックを持っていたりするんです」。

最後に今後、愛車とどう接していきたいかを伺った。

「年齢的なこともありますが、この117クーペが『アガリの1台』かもしれません。もし浮気してもベレットかな(笑)。このクルマが家にあると、生活の充実感が違いますね。それから、117クーペのような旧車を通して若いオーナーとも交流していきたいですし、若い人ももっと旧車の世界に入ってきてほしいと思います。最初は独特に感じるかもしれませんが、趣味が同じであれば多少のことは気にならないですし、年代を超えて話すことができます。部品や修理に困っていたら、仲間同士で協力して全力で助けますから」。

オーナーは大人になってから117クーペの良さが分かるようになったと話していた。オーナーのように、今までは興味がなくてもはじめて良さが分かるような旧車に、もしかするとこの先出会うかもしれない。

もし、あなたが今まで興味がなかったなら、ぜひ旧車の魅力に一度注目してみてほしい。そこには「どんなクルマに乗ったか」よりも「このクルマで何をするか」という、かけがえのない時間が待っているはずだ。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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