新車から11万キロ、そして次の10年へ。“令和を駆ける”2009年式ホンダ・S2000(AP2型)とオーナーのカーライフ

「絶版車」となってもなお、人気の衰えないクルマがある。例えば、スカイラインGT-Rや、RX-7、「ハチロク」ことカローラ レビン&スプリンター トレノ(AE86)といった、80~90年代に一世を風靡した日本のクルマたちだ。近年では「ネオクラシック」と呼ばれ、世界中のクルマ好きをも魅了している。

今回登場するホンダ・S2000も、誕生して丸20年を迎えた「ネオクラシック」な1台といえよう。このクルマがデビューした1999年は「世紀末」だったが、奇しくも誕生20年目は「令和元年」という新しい時代で迎えることとなった。

S2000は、コンセプトカー「SSM」として、1995年に開催された東京モーターショーで初披露され、大きな反響を呼んだ。それから4年後の1999年4月15日、本田技研工業創立50周年記念のモデルとしてデビューを果たした。

車名でもある「S」は、スポーツの頭文字だ。本田宗一郎によって世に送り出された、ホンダ初の四輪自動車のひとつ、スポーツカー「Sシリーズ」の血統を受け継いでいる。 “先代”のS800からは、29年ぶりとなるFRスポーツの復活だった。

「初期型(AP1型)」に搭載される、2000ccの直列4気筒DOHC VTECエンジン「F20C」は、NAながら250馬力を叩き出し、レッドゾーンは9000回転を許容するという高回転型エンジンだ。ピストンスピードはF1マシン級といわれた。駆動方式はFR。加えて、前後重量配分50:50を達成していることから、一級のコーナリングマシンとしても評価を得た。

2005年には型式が「AP2型」となり、排気量は2200ccにアップ。エンジン型式は「F22C」となった。許容回転数は8000回転に落とされたが、トルクアップされたことでより性能が高められ、ユーザーへの間口を広げた。その後、空力性能を高めた「TYPE S」を最終モデルとし、2009年6月に生産を終えている。

近年「S2000が新型となって復活?」といった噂がささやかれているようだが、仮に復活したとしても、それはあくまで別の「Sシリーズ」であるように思う。10年間という生産期間のなかで排気量アップ、そして「TYPE S」への進化を遂げてストーリーを完結させたことで、S2000は本当に「唯一無二」の存在となったのではないだろうか。

今回登場するのは「AP2型」を所有するのは49歳の男性オーナーだ。彼のS2000は、2009年に新車で購入して今年で10年目を迎えた「ワンオーナー車」だ。オドメーターは約11万4000キロを刻んでいる。この「AP2型(以下、S2000)」のボディサイズは全長×全幅×全高:4135×1750×1285mm。排気量が2000ccから2200ccにアップされた「F22Cエンジン」は、エンジンヘッドカバーがゴールドに塗られている点も、初期型とは異なる。

今回は、オーナーがS2000を選んだ理由や、モディファイへのこだわりなどを詳しく紹介したい。まずは、オーナーの愛車遍歴から伺った。

「学生の頃はクルマに興味がなく、好きになったのは免許を取ってからでしたね。20歳のときに日産・シルビアK's(S13型)を新車で購入しました。20歳で新車を買うのは大変だったので、ローンを組みました。当時はガソリン代と維持費で精一杯でしたね。次にマツダ・RX-7(FC3S型)に乗りましたが、ロータリーエンジンと相性が合わなかったようで、もう一度シルビア(S13型)を、しかも2リッターターボの後期モデルを購入しました。その後、ホンダ・シビックタイプR(EP3型)に乗り、フルモデルチェンジしたシビックタイプR(FD2型)に乗り換えています。しかし、スポーツセダンがそれほど好きではないことに気づき、売却したシビックタイプR(EP3型)を買い戻しました。実は、手放した個体が店頭にまだあったので、運良く買い戻せたんです。続いてホンダ・インテグラタイプR(DC5型)に乗り、このS2000に出会いました。今まで10年・10万キロも乗ったクルマは、このS2000が初めてなんです」

スポーツカー好きが羨む愛車遍歴だ。このS2000を選んだ理由は?

「キビキビ走るクルマが好きなんです。今までの愛車は排気量2リッタークラスのコンパクトスポーツばかりです。過去に大排気量のスポーツカーも検討したこともあったんですが、結局購入までには至りませんでした」

愛車遍歴ではS2000が唯一の「オープンカー」だが、そこにこだわりは?

「オープンカーといえばマツダ・ロードスターが思い浮かびますが、私の弟が乗っていたので、自然と候補からは外れていました。そもそも、オープンカーが欲しくてS2000を手に入れたわけではありませんし…。今までサンルーフさえ付けたことがなかったのですから(笑)。初めて『屋根を開けて移動できることがすごいこと』に気づきました」

オープンドライブの魅力は、実際に乗ってこそ理解できるものだ。しかもS2000の場合、幌を開け放つことで官能的な「VTECサウンド」をダイレクトに味わうことができる。これもオーナーとしての醍醐味だろう。では、S2000を手に入れようと決めたきっかけは?

「生産終了の告知がきっかけでした。S2000の存在はコンセプトカーの時代から注目していて、東京モーターショーで見たSSMに惚れ込んでいました。初期型のカタログも持っていましたが、当時は実際に買おうとまでは思っていなかったんです。しかし2009年に生産終了という告知が出て、このクルマが二度と新車で乗れないとわかったとき『買うなら今しかない!』という心境に変わり、すぐに動きました」

オーナーの個体は「シンクロシルバーメタリック」と呼ばれるボディカラーだ。その当時、ディーラーでは生産終了直前の駆け込み契約の影響で、ボディカラーさえ選べなかったのでは?

「実は、選べました。ハードトップもオプションで付けられたんです。しかし、オープンで乗ることを決めていたので、付けようとは思いませんでした」

実際に所有してみて、どんなクルマだと感じたのだろうか?

「今まで乗ってきたクルマのなかでは、最も旋回性能が高いと感じています。回頭性の良さに加えてFRならではの高いトラクション性能、着座位置の低さも良いですね。ユーザーレビューではトルクが低いという声がありましたが、私は不満を感じていません」

S2000は高回転エンジンゆえに「低速トルクが不足していて街乗りでは不便」という声が初期モデルから多く聞かれてきた。トルクアップした「AP2型」は、街乗りもしやすくなっているのかもしれない。

オーナーには「主治医」的存在のショップがあるそうだ。車内を覗くと、S2000オーナーにはおなじみのショップ「ASM」のロゴが入った、RECAROのシートが2脚。外観も含めて、ひと目見ただけでも、かなりのモディファイが施されていることがわかる。こだわりを詳しく伺ってみた。

「4ピストンのブレーキを含めた足回りは、ひと通りSACHS製のものです。オーバーフェンダーや叩き出しをせずに入れられないかと探していたところ、ASMと出会いました。車高調もASMですね。ノーマルよりはバネレートが高いですが、しなやかで突き上げも少ないです。ホイールはASMのデモカーS2000に装着されているものと同じProdrive製で、オレンジに塗装しています。ほかにも、インテークホース・ラジエーターホース・エキマニ・カーボンコンポジットのフロントバンパー・シート・フロアマット・マフラー・サイレンサーはASM製で揃えています。エアクリーナーのみ無限製のものです」

ASMのパーツが多いが、統一感を意識しているのだろうか?

「統一感は意識していますね。ASMには製品の品質、アフターも含めて絶大な信頼を寄せています」

オーナーのS2000は、ホイールとサイドミラー、ルームミラーカバーがオレンジにカラーリングされ、全体のアクセントになっている。ホイールは、10年の年月が経っているとは思えない美しさだ。これでリペイントをしていないというから驚きだ。綺麗に保つコツを尋ねてみた。

「ダストの少ないブレーキパッドを選んでいるからだと思います。あとは、悪路を走らないようにしていることでしょうか(笑)。このカラーリングは、ASMのデモカーをイメージしているんです。レーシーながらストリート寄りの仕様でカッコ良かったので、そのイメージに近づけようと思いました。フロントバンパーも、デモカーを意識しています。このオレンジはポルシェ・911GT3 RS(997型)のカラーをイメージしています。ボディがシルバーなので同系色のホイールは避けたかったですし、個人的にホワイトもピンとこなかったので、あえて鮮やかなカラーで塗装しました」

最後に、今後この愛車とどう接していきたいかを伺ってみた。

「S2000の満足度は120%です。私にとって代わりとなるクルマはもう存在しないですし、次の10年も乗っていきたいです。メンテナンスとリフレッシュをしっかりやっていきたいですね」

一人のオーナーの下で大切に乗られているこの個体は、本当に幸せだと思う。できれば10年後も、その先も走り続けてほしいと願うと同時に、S2000というクルマが後世に伝えられていくことを願わずにはいられない。

クルマを残していくためには、愛することだ。ホンダ・ビートの部品が一部再生産されたきっかけも、その残存台数だったといわれている。今は旧車となったS2000が、これからも多くのファンに愛され続けていくように、そしてメーカーがその愛に応えられるようにと、誕生20年の節目に心から願いたい。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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