【スバル レヴォーグレイバック 新型試乗】グランドワゴンの現代版? 悠々、洗練、「大人のレヴォーグ」…島崎七生人
「最近の市場は6、7割がSUV。その中でSUBARUはアウトドア系のイメージは定着できていたものの、都会的なイメージにはチャレンジできていなかった。そこで新たなスタイルに上質感を加えたのがレイバックです」(商品企画本部・PGM・小林正明さん)の説明どおり、実車はアウトドアのイメージから離すためにルーフレールはあえて非装着。ただし最低地上高は200mmとってあり、これは初代『レガシィ グランドワゴン』以来のSUBARUの知見でもあり、街中でも段差などで下回りを擦らないようにしたためだそうだ。
◆洗練された「大人のレヴォーグ」
一方でデザインは、フロントとリヤ回り、ホイールアーチ部のクラッディングが専用デザイン(ボンネット、ランプはレヴォーグと共用とのこと)。とはいえ、写真でもおわかりのとおり、とくにフロントのデザインはこれまでのスバル車のエッジを立たせたデザインからは一転、ここだけ見てもグッと洗練された大人びたクルマのイメージが伝わってくる……というのが実車から受けた筆者の印象だ。
「顔まわりは、グリル、バンパーと要素ごとにデザインするのではなく、ひとつの大きな面が繋がっているような考え方。リヤもボディ色と黒の部分の比率を微調整して安定感を持たせ、SUVらしく縦方向の厚みももたせた。アルミホイールもシャープなスポークと面が変化するスポークを組み合わせ、これもレイバックのテーマだった“凛と包”の考え方」(デザイン開発主査・源田哲朗さん)とのこと。
ちなみに市場で人気の高いトヨタ『ハリアー』に何となく雰囲気が近いとも感じたので、「寄せてません?」と前出の源田さんに向けると、「デザイン的にそれはしていない」(源田さん)という。
◆走りの印象は「穏やかさ、心地よさ」
走りについては「『アウトバック』がラグジュアリーでゆったりしているのに対して、クルマとの一体感があり、取り回しもいいところを楽しんでほしい」(前出・小林さん)という。今回の取材は発売前のプロトタイプとされる試乗車に、佐渡島のワインディング路(大佐渡スカイライン)の一部を占有する形で乗った。距離も時間もシーンも限定的ではあったが、走らせて印象的だったのは穏やかさ、心地よさなど。
乗り味は基本的に路面からの不快な突き上げや煽られ感のないものでフラットライド。だが曲率の小さいコーナーでもロールはよく抑えられており、不安感はなかった。装着タイヤはオールシーズン(FALKEN ZIEX ZE001 A/S M+S)で、平地や高速道路を流すような場面ならもっと良さが実感できたはずだが、ロードノイズが低めで発生する音もカドの取れたものだったことも確認。
1.8リットル直噴ターボ+CVT(走行モードの選択も可能)も、少なくとも試乗コースの範囲のアップダウンでも、場面を問わずドライバーの意志に対して齟齬のない性能を発揮してくれた。
◆『レガシィ グランドワゴン』の現代版か
「ここが売りというより、いいとこ取りをバランスよくやっているクルマ。1番いい先進装備がつき、走り、乗り心地、操縦安定性もSUVながらしっかりしている。レガシィのグランドワゴン、ランカスターの頃をイメージしていただくとわかりやすい」(商品企画本部・主査・夘埜敏雄さん)の説明も納得がいく。
確かにBG型『レガシィ』の時代の1995年に登場した最初のグランドワゴン(1997年から「ランカスター」に改名)の、手頃感のあるボディサイズとスムースで心地いい走りを現代に甦らせた……そんな風にも思った。晴れてナンバー付きの試乗車が用意されたら、標準のハーマンカードンのオーディオなど楽しみながら、然るべきシーンでもじっくりと走らせてみたい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
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