ジムニーで北海道上陸…安東弘樹連載コラム

  • 北海道JR函館駅の近くにて

以前のコラムでも書かせて頂きましたが、一通りのカスタムを終えたジムニーで、念願の北海道に行って参りました。

とは言え、長期の休みを取れる訳でもなく、北海道に滞在できるのは48時間が限界です。

その時間で北海道の何処に行くのかを考えるのは非常に難しく、茨城県の大洗港から北海道の苫小牧港に行くフェリーを前日に予約出来た事から苫小牧を拠点に考え、今回は富良野経由で美瑛、という道央まで行くのが限界という結論に達しました。

コロナの影響でイベントが中止になり、3日間の休みが取れる事になったものの3日間で北海道に赴くのは無理だと思っていたのですが、休みの前日は午後には仕事が終わる事が分かり、急遽、その時間から乗れるフェリーを予約することにしたのです。

その日の19時45分大洗港発で翌日の13時30分に苫小牧港に到着です。
そして、その日と、翌日の2泊だけして、三日目の昼に函館から青森港へフェリーで向かい夕方から深夜に掛けて陸路で千葉の自宅に向かい、翌日には仕事、という強行軍で北の大地を目指す事にしたのです。

殆ど観光をする時間はないので、今回の目的はジムニーで雪道を存分に走る事です。
そして、その模様を動画で撮影し、自分のYOU TUBEチャンネルに上げる為の旅、という事にしました。

旅支度を前日に済ませ、仕事が終わった後、そのまま大洗港に向かいます。
これで二度目の大洗港ですが、フェリーに乗る時は、いつもワクワクします。

ターミナルで手続きを済ませ、乗船の前に自分のクルマで待機している時も子どものように興奮してしまうのは何故でしょう。

やはり乗り物に乗って、乗り物に乗る、という、他では味わえないカタルシスがフェリーには有るのだと思います。

既に暗くなった港に停泊している全長約200メートルの巨大な船に後部のハッチからクルマが入っていく瞬間は、乗り物マニアの私にとっては、至福の瞬間です。

興奮状態のまま車両甲板からエレベーターで客室階に向かい、今回、予約した簡単なバスルーム付きの個室に入りました。

一応、部屋にはバルコニーが付いているのですが、この日はかなり強い雨が降っており、少し部屋のサッシを開けただけで雨が吹き込んでしまい、景色を見るのも外に出て風に当たるのも諦める事にしました…。

コロナ対策を施した船内のレストランで食事を済ませ、後は部屋で、ゆっくりすることにします。

船専用のWi-Fiで映画を観られる様になっていたので以前から観たかった映画を観て、シャワーを浴び、眠りにつきました。

実は、以前の同じ航路での航海では、かなり船が揺れ、殆ど眠ることが出来ませんでした。
今回も強い雨が降っていて太平洋上は低気圧の影響を受けていたので、船が揺れる事を覚悟していたのですが、予想に反して殆ど揺れる事はなく、ぐっすりとは言えませんが、ある程度の時間は寝ることが出来ました。

そして翌日、天候は快晴。昼食を食べて、いよいよ下船です。

車両甲板に下り、クルマに乗って動画撮影用のカメラを回しました。

快晴とは言え、真っ白な景色に期待して下船。しかし、その直前、驚きの光景が!
車両出口の手前に何と陸上自衛隊の最新戦車、10式(ヒトマル式)が2台、停まっていたのです! 思わず、ヒトマル式です!とカメラに向かって叫んでしまいました(笑)
映像では見た事はありますが本物は初めてでしたので、また興奮してしまいました。
そう言えば自衛隊のユニフォームを着た乗客が、複数人いらっしゃったので、これで納得です。

興奮したまま、下船すると、そこは雪景色!ではなく眩しい太陽とアスファルト…。

路肩には雪が見られるものの、路面には一切、雪が有りません…。前日に慌てて新品ながら4年落ちのスタッドレスタイヤを買ってタイヤショップの閉店間際に装着したのですが、そのタイヤが泣いています。

しかし、苫小牧に雪が無くても、今日、宿泊する富良野まで行けば2月の北海道ですから雪は有るだろう、と思い、そのまま富良野に向かう事にしました。

ジムニーは切り替え式のパートタイム4輪駆動車です。

雪の路面になったら4輪駆動に切り替えようと思い、暫く2輪駆動のまま走り続けました。

しかし、いつになっても雪は現れません。

大雪に悩まされている方や、それどころか被害に遭っている方には大変、申し上げにくいのですが、30年以上前から、雪を追い求めて雪道を走る為の旅をしてきた私は、実は豪雪地帯と言われる場所に行くと雪に恵まれないという事がこれまで何度もありました。

例えば2年前の1月、日本一の豪雪地帯、青森県、八甲田地区の酸ヶ湯温泉に雪道を走破する為だけに行った際にも、八甲田のホテルに着くまで、路面に雪が1ミリも積もっていない、という経験をした事があります。ホテルのレストランの50代の支配人の方が「1月に、この地区で路面に雪が無い状態になった事は人生で一度も無かった」とおっしゃっており、自分の運命を呪った事があります。帰路につくまで雪は降らず、帰宅するまで、東北の他の地域も含めて雪が積もった道を走る事は一度も有りませんでした。

その2日後には東北地方全域が大雪に見舞われ、愕然とした事を思い出します…。

まさか2月の北海道で同じ事が起こるのではないか?

嫌な予感がしながら、2時間程走り続けると山合の道で少し雪が見え始め、ここで初めて4駆に切り替えます。しかし、雪が「積もった」道に遭遇する事無く、ホテルに到着してしまいました。救いは、国道からホテルに向かう細い道、1キロ程の区間だけ雪が積もっており、北海道に来て初めての、ちゃんとした?雪道を走る事が出来た事でしょうか。

前後に車は走っていなかったので、試しに40km/h位から急ブレーキを踏んでみましたが、倉庫で長く眠っていたであろう4年落ちのスタッドレスタイヤは、しっかりと停まってくれました。ひとまず安心です。

富良野では、某ドラマで有名になった富良野料理のお店で(万全のコロナ対策が施されていました)、ローストビーフ丼を頂き、心地よいホテルのベッドで眠りにつきました。
翌日の雪景色を夢見て…。

そして翌日。
恨めしいほどの快晴…。

勿論、路面に雪は見られません。

相変わらずホテルから国道までの細い道にのみ雪が残っていましたが、国道に出た途端、路肩以外には雪はありません。仕方が無く美瑛まで走り始めると、どうやら国道を離れると、雪が残っている事が分かり、わざわざ雪の路面を走る為に、交差する県道などを走って遠回りする、という訳が分からない事を繰り返して美瑛の「セブンスターの木」、「マイルドセブンの木」「ケンとメリーの木」を目指しました。

今回、唯一の「観光地」巡りです。

  • 美瑛にて

それぞれの場所は、国道から離れるので、そこまでの道で初めて「北海道らしい」景色と路面に出会える事が出来ました。

やはり広大な雪景色は素晴らしい、の一言。
やっと北海道に来た事を実感し、車載のカメラを外し、外で景色を撮影しました。

しかし、これが失敗だったのです。

外での撮影を終えて車に戻りカメラを設置して再びカメラを回そうとした所、ウンともスンとも言いません。主電源を切る事すらできず、完全にフリーズしてしまったのです。

仕方なく、バッテリーを、はずし電源を強制的に切り、再び電源を入れようとしましたが、電源は入りません…。気温マイナス8度位でしたが、この程度で機能しなくなるのは想定外です。このカメラでの撮影は諦め、保証期間内でしたので、帰宅後にメーカーに連絡して、交換して貰う事に決め、その後は自分のスマホで撮る事にしました。これは撮影が大変になりますし、車載映像は撮れなくなる事を意味します。

しかし快晴時の映像は十分に撮れているので、気持ちを切り替えて、今日の宿泊地、函館に向かうことにしました。

翌日は函館から青森までフェリー移動ですので、今日中に函館に向かう事にしていたのです。時間は午後2時半位になっていたのですが、同じ道内ですし、夕食の時間には函館に着くだろうと思いナビゲーションに函館のホテルをセットした瞬間に、え?こんなに時間が掛かるの?!と叫んでしまいました。距離は450キロ(東京から京都間と同じ)到着予定時刻は夜の9時頃。

私は日頃から日本全国を車で巡っている為、各県間の距離は知り尽くしていますが、北海道内の地域間の距離は把握していなかった事に、その時、気付きました。

北海道の距離感をなめてはいけない、と胸に刻んでいたつもりでしたが、甘かったです。

思わず、「お見それしました。」と誰に、か分かりませんが、謝ってしまいました。

そして、高速道路に乗り、一路、函館を目指します。

その日の夕食は北海道名物?のラッキーピエロというハンバーガーショップで食べようと決めていましたので、焦りました。

時節柄、ホームページに記載されている営業時間と関係なく早く閉まってしまうお店も多いので飲食店が確実に営業している午後8時までに到着しなければ、と思っていたからです。

しかし運命とは異なもの。

急ぎたいときに限って、これまで、ずっと快晴だった雲行きがあやしくなり、「ここにきて」急に横殴りの雪が降り始めたのです。

正に北海道が「本気」を出してきました。

高速道路の制限速度は50km/hになり、あっという間に路面に雪が積もってきたのです。

急いでいなければ喜ぶ所なのですが、今は、そうでありません。しかも風が強く、真四角の軽自動車であるジムニーにとっては危険な状況になりかねません。

しかしジムニーは、そんな状況でも逞しく走ってくれました。クドい様ですが4年落ちの新品スタッドレスタイヤも、しっかりと路面を噛んでくれています。

焦る気持ちと雪路面を走れている嬉しい気持ちの半々で運転していると益々雪の量が増えていき視界も悪くなってきて、気付いたら午後5時を過ぎ、辺りは真っ暗になっていました。
車の外気温計は、マイナス17℃。

フロイントガラスが凍ってきたので、ウォッシャー液を出そうと思ったら、予想通り?ノズルが凍ってしまっていて全く機能しません。

危険な為、パーキングエリアに停まり、北国のコンビニやパーキングエリアやサービスエリアには必ず置いてあるー35℃でも凍らないウオッシャー液を購入し、半分位まで減っていたタンクにウオッシャー液を入れてみましたが、やはりノズルの中で凍っている為か、モーターは動かず、液は出てきません。

仕方なく、フロントガラスに、こびり付いた氷を除去して再び走り始めました。

それ以降、休憩を取らず何とか函館のホテルに付いたのが夜の8時前。

急いでラッキーピエロに向かいましたが、営業は10時まで、との事。

安心して、食事をする事が出来ました。

食べたのは、まさかの、バンズ(パン)で挟んでいない肉だけバーガー。
驚いて写真も動画も撮り忘れ、完全にYouTuber、失格です。

元来、私は写真も動画も、記念に撮る、という習慣が無い為、これまでの旅も殆ど写真が残っていません。ですのでYouTubeを始めても、頻繁に撮影を忘れるのです。

これは何とかしないといけませんね…。

話が逸れましたが、食事を済ませホテルの大浴場で身体を温め眠りにつきました。

函館の街は、すっかり雪景色でしたが、明日はここからフェリーに乗り帰らなくてはなりません。つくづく、雪道には縁が無いようです。

雪が積もった函館の街は美しいのと同時に恨めしく見えた事を白状しておきます。

翌日は函館港から青森港までのフェリーでしたが、3時間40分の船旅を「ビューシート」という進行方向に向いた窓から景色を観る事が出来る座席に乗り、乗り物好きの私が大満足の航海となりました。夕方に青森に着いて、これから750キロの陸路での移動になります。

ナビによる到着予定時刻は午前5時前…。

翌日は朝9時には起きなければならない為、思わず苦笑いです。

しかし長距離運転が大好物な私は、750キロのドライブが嬉しくて、顔がにやけてくるのも抑えられませんでした(笑)。

しかも青森で高速道路に乗った辺りから横殴りの、しかもクルマに向かってくる雪が降り始め、益々、私のテンションも上がってきます。

フェリーでノズルが溶けたのと、―35℃対応のウオッシャー液が効力を発揮してくれたのでしょう。ウオッシャー液は勢いよく出てくれます。このお陰で快調に走行する事が出来、到着予定時刻もどんどん早くなっていきました。

しかも、私は、そう「ゾーン」に入ったのです。

私は時々、トイレに行く事も忘れるくらいに、運転に集中して、一瞬もクルマから降りたくなくなる時があるのです。

これまでも何度か、その様な状態になり、新潟や金沢から一瞬もクルマを降りず、自宅まで着いてしまった事があります。

今回も、その状態になり、青森から千葉の自宅まで750キロ、8時間半を二回の休憩、しかも、それぞれトイレに行っただけの10分未満の休憩だけで、走破してしまいました。

休憩してもトイレから出たら、早く運転したくて小走りでクルマに戻った位です。

この時の模様は函館のホテルの部屋で温めた結果、復活したカメラで撮影しましたので、後日YouTubeで公開させて頂きます。

お陰で午前3時前には帰宅し、ある程度の睡眠時間を確保する事が出来ました。

こうして、海産物を全く食べなかった、普通の人には全く理解出来ない北海道の旅は終わりました。

ようやく収益化出来たYouTube動画の登録者数と再生回数を伸ばさなければならない、という使命もありますが、純粋に殆ど、クルマを運転するだけの旅に満足している自分がいます。しかしジムニーが手こずるような雪道を運転する事が出来なかったのは心残りです。

今回も私が北海道を離れた正に翌日から大雪となりました。
そこで生活をしている方にとっては、憎い雪かもしれませんが、清濁を含めて全てを覆う、そして静寂を生む、雪が私は大好きです。

殆どの方が春の到来を心待ちにしていますが。私は冬が終わるのが毎年、少し寂しいのです。

今回も北海道を後にする時、また来年まで雪とお別れだと思うと少しセンチメンタルになった事を告白しておきます。

来年も雪を求めて北国に赴こうと思います。

安東 弘樹