伊勢湾岸自動車道の役割

およそ10年前、首都圏から関西圏まで車で移動する場合、東名高速道路(以下 東名)か中央自動車道と名神高速道路(以下 名神)を利用するのが主流だった。

しかし、このルートは至るところで慢性的な交通集中をはじめ、事故、道路工事などによる渋滞が発生していた。

日本の大動脈たるこのルートの渋滞緩和は経済的にも必須であり、代替路線として新東名高速道路(以下 新東名)と新名神高速道路(以下 新名神)が誕生した。

新東名と新名神は、この半世紀で大幅に進化した建設技術により施工され、ドライバーが高速道路をより走行しやすいような設計が施されている。

その結果、東名や名神を利用していたドライバーの多くが新東名や新名神を利用するようになり、首都圏と関西圏を結ぶ新たな主要ルートとなっている。そして、この新東名や新名神をつなぐのが、伊勢湾岸自動車道だ。

中京圏に誕生した新たな高速道路、伊勢湾岸自動車道(伊勢湾岸道)の概要

新東名と新名神の間は、伊勢湾岸自動車道で結ばれている。伊勢湾岸自動車道は、愛知県豊田市の豊田東JCTから三重県四日市市の四日市JCTまでの全長約56キロからなる高速道路だ。

起点は豊田東JCTで新東名、終点は四日市JCTで新名神と接続しており、新東名と新名神をつなぐパイプラインになっている。

伊勢湾岸自動車道も最新の建設技術が使われている。また、全線通してほぼ直線でカーブや勾配が少なく、片側3車線で道幅も広いため走行しやすい道路となっている。全線の約94%が高架や橋で設定されているのも特徴だ。

首都圏と関西圏を結ぶ新しい主要ルートとして活躍中の伊勢湾岸自動車道について、深掘りしていこう。

東名や名神のバイパス的役割

新東名と新名神をつなぐ伊勢湾岸自動車道は、正式には新東名と新名神の一部という位置づけになっている。

実際は、豊田東JCT~東海ICが第二東名高速道路(新東名)、東海IC~飛島ICが一般国道302号線(伊勢湾岸道路)、飛島IC~四日市JCTが第二名神高速道路(新名神)である。

そして、道路公団が、豊田東JCT~四日市JCTの区間を「伊勢湾岸自動車道」という名称で運営しているのである。

新東名・新名神・伊勢湾岸自動車道が徐々に開通したことにより、首都圏から関西圏への行き来は、従来の東名と名神を利用するルートよりも、距離・所要時間ともに大幅に短縮された。

実際、東名の起点である東名ICから、現時点で首都圏側の名神と新名神の最終接続地点となる草津JCTまでの距離と所要時間を比べてみると

東名~名神ルート・・・478キロ 5時間30分
新東名~伊勢湾岸自動車道~新名神ルート・・・432キロ 4時間45分
(東京IC~御殿場JCTは、両ルートとも東名利用)

距離にして46キロ、時間にして約45分短縮される。

さらに、上記の所要時間は高速道路が順調に流れていた場合であり、渋滞があると所要時間は延びる。その点でも、新東名・新名神・伊勢湾岸自動車道が開通したことにより、渋滞緩和が進んでおり、首都圏と関西圏の移動がスムーズになっていると言えるだろう。

都市高速や環状線、有料道路との接続も多く中京圏内のバイパスとしても活躍

  • (引用:NEXCO中日本)

伊勢湾岸自動車道は、中京圏の都市計画道路として計画されたので、中京圏内のバイパスとしての役割も大きい。

伊勢湾岸自動車道の開通により、並走する高速道路や一般道利用時に比べて大幅な所要時間短縮が実現している。

豊田JCT~四日市JCT・・・約26分短縮(東名阪道利用時と比較)
豊明IC~みえ川越IC・・・約51分短縮(国道23号線利用時と比較)

これにより、名古屋市近郊や愛知県東部から三重県へのアクセスが良くなり、格段に三重県が近くなった。今まで遠いと感じていた観光スポットが身近になったことは大きなメリットと言えるだろう。

また、伊勢湾岸自動車道は名古屋高速をはじめ、名古屋高速の名二環・東海環状自動車道(以下 東海環状道)などの環状線や、中部国際空港へつながる知多半島道路などとも接続しており、中京圏内の新ネットワークとしても価値の高い道路となっている。

中京圏内は交通渋滞が激しいところが多いが、伊勢湾岸自動車道の開通により交通が分散されるため、中京圏内の移動において有用な高速道路と言えるだろう。

沿道には知名度が高く魅力的な観光スポットが豊富

伊勢湾岸自動車道の沿道には有名で魅力的な観光スポットが数多く存在する。

まず、伊勢湾岸自動車道にある刈谷PAはハイウェイオアシスとなっている。通常の休憩施設の他に遊園地や観覧車、温泉施設さえ備わっている。そのため、レジャー施設としては東京ディズニーリゾート、ユニバーサルスタジオジャパンに次いで年間第3位の来場者数を誇っている。

名港トリトンで有名な名港中央ICの近郊には、レゴランド、リニアや新幹線の他JR東海の在来線の車両が展示されているリニア・鉄道館、500種を超える海の生き物が展示されている巨大水族館の名古屋港水族館などがある。

そして、湾岸長島IC近くには、日本最大級の遊園地として知名度の高いナガシマスパーランドや三井アウトレットパークが入ったナガシマリゾートがあり、連日多くの人が訪れている。

全長が50キロほどの高速道路でこれほど観光スポットが連なっているところも珍しく、これは伊勢湾岸自動車道の魅力であり特徴であろう。

また、伊勢湾岸自動車道の沿道は観光産業だけではなく、工業地帯としても発展している。さらに名古屋港や四日市港などの物流拠点も存在することから、まさに観光と工業と物流が融合された近代的高速道路と言えるだろう。

まだまだ進化する伊勢湾岸自動車道!

伊勢湾岸自動車道は、大きなネットワークから小さなネットワークへのアクセスを良好にし、都市と都市を結ぶという働きを担っている。多くの人の目的に合った総合的な要素を持つ高速道路だと言える。

首都圏で言うところの首都高湾岸線に近い役割であり、中京圏にとってなくてはならない高速道路になった。

そんな中、2022年3月26日に伊勢湾岸自動車道の刈谷PAに新たなスマートインターチェンジが設置された。このスマートインターチェンジの近郊には自動車工場やその他工業施設が多数存在していることから、近隣住民の利用だけではなく、物流のさらなる促進も期待されている。

さらに、交通集中による渋滞が著しかった豊田南ICや豊明ICの渋滞緩和にも期待がかかるなど、その効果は計り知れないだろう。

一方で、伊勢湾岸自動車道は海岸沿いを通っているため、台風や強風の影響を受けやすいことや、その先の新名神の一部では冬季に雪が降るため、たびたび通行規制や通行止めとなることがある。

伊勢湾岸自動車道を走行する際は、伊勢湾岸自動車道やその先の交通情報をよく確かめてから利用し、もしもの時は名神や東名阪道などの代替えルートを検討することをおすすめする。

とは言え、首都圏・中京圏・関西圏の新たなネットワークとしての役割を担う伊勢湾岸自動車道は、今後もたくさんの人の交通を支える基盤となることが期待される。

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(テキスト:のっぴー、編集:GAZOO編集部)