ミドシップカーの魅力、ここにあり2代目トヨタMR2・・・懐かしの名車をプレイバック
日本生まれのミドシップスポーツカーとして多くの人を魅了した「トヨタMR2」は、1989年にフルモデルチェンジ。直線的なデザインが特徴だった初代とは見た目も異なる、2リッターエンジン搭載の2代目へと進化した。
日本車豊作の時代に登場
まだ学生だった1989年に自動車雑誌の編集部でアルバイトを始め、1991年には卒業と同時にそのまま社員として居着いたのが、筆者の場合、モータージャーナリストという現在の職業につながるきっかけだった。
アルバイトでも新型車に触れられる機会はたくさんあって、クルマ好きとしては夢のような日々を送っていたが、なかでも世界に誇れる日本車の登場には興奮していた。
「日産スカイラインGT-R(R32)」に「ユーノス・ロードスター」「ホンダNSX」「トヨタ・セルシオ」「スバル・レガシィ」……。1990年には、就職も決まってローンが組めるようになったから初めての愛車を購入すると決心し、ユーノス・ロードスターを選んだのだが、その理由は運転がうまくなりたいからだった。実は「プジョー205 GTI」にも心を奪われて迷っていたのだけれど、先輩編集部員や付き合いのあるモータージャーナリストから「練習するなら絶対に後輪駆動」とアドバイスを受けてのことだ。
それは大正解で、最初は下手っぴだったけれどサーキット走行会などに通って徐々にマシになっていった。エンジンパワーやタイヤのグリップが限られていたから、初心者でもそんなにビビることなく限界に近づけたことがよかったのだろう。
そんな頃、もう1台気になるクルマがあった。やはり1989年に登場した2代目のトヨタMR2(SW20)だ。
乗りこなすにはウデが要る!?
クルマが大好きだけれど22歳まで愛車を持てず、自動車雑誌を読みふけることで欲求を満たしていたゆえ、頭でっかちになっていた自分にとって、コンパクトなミドシップカーはひとつの理想。ただし「君にはまだ早い」という、やはり周囲のアドバイスでMR2はリストから外したのだった。これも後から考えれば正解だったのだろう。
それでも、取材で知り合って仲良くさせていただいたジムカーナのレジェンドである森田名人(森田勝也氏)が、SW20の競技車両を手足のようにコントロールして走る姿にはしびれた。デモランでは、人間をパイロンに見立てて、サブロクターンを延々と続けるなど曲芸を披露。「あんなふうに操れたらさぞ楽しいだろうな」と憧れたものだ。
その後、運がいいことに社用車としてSW20が入ってきた。サーキットでの練習に借りてもいいとのことで、何度も連れ出した。ところが、これが超絶に手ごわかったのだ。ユーノス・ロードスターで月2回のサーキット通いを2年ぐらい続けたことで、少しは上達していたつもりだったのに、SW20だとなかなか上手に曲がれず、曲がったと思ったら今度は即スピンモード。走行会では、いつコントロールを失うかわからないので、後ろにクルマがいたら譲りまくって単独状態で走れるようにしていたほどビビっていた。
森田名人って宇宙人なの? と思った。もしも最初の愛車に選んでいたら、怖くなって積極的に走りに行けなくなっていたかもしれない。自分にドライバーとしての素質がなかったのが原因だけれど、選ばなくてよかったのだと思い知ったのだ。
進化を重ねて楽しいクルマに
そんなことがあって、憧れだったミドシップカーに対してトラウマを抱えてしまっていたけれど、それを克服させてくれたのもSW20だった。
マイナーチェンジのたびに進化してコントローラブルになっていくのを実感。V型と呼ばれる最終仕様などは夢のように乗りやすくなっていて、名人レベルまではいけなくても、自分なりにサーキットを楽しく走ることができた。
特に印象的だったのが秀逸なABSだ。当時のABSはスポーツ走行には邪魔になることが多く、ヒューズを外して機能しないようにすることすらあったものだが、「スポーツABS」と呼ばれたSW20のそれは、ABSを作動させたままターンインすれば、思いどおりにノーズをインに向けていけた。それできれいに姿勢をつくりアクセルを踏み込んでいけば、ミドシップカーらしい強力なトラクションが得られるとともに、ターボパワーを路面にたたきつけながら素早く立ち上がっていける。ロードスターでは味わえないハイレベルな走りに魅了され、手の内におさまるコンパクトなミドシップカーへの憧れが再燃したのだ。
タイミング的なこともあってSW20を手に入れることはなかったものの、今でもコンパクトなミドシップカーは大好物。今では新世代の「アルピーヌA110」を手に入れて満足度の高いカーライフを送っているのだが、SW20の「ミドシップは怖い」というトラウマから徐々にフレンドリーになっていった自分なりのストーリーがあるからこそ、愛着もひとしお。そういった意味で、SW20は感謝の念を抱いている一台なのだ。
(文=石井昌道)
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