永遠に不滅です! 初代ロードスター・・・懐かしの名車をプレイバック
免許がなくても気になったクルマ
1989年9月の発売当時は「ユーノス・ロードスター」と名乗り、民草からは単に“ユーノス”と呼ばれていた、栄光の初代ロードスター。その成り立ちやスペック等々については、いまさら読者各位にご説明するまでもないだろう。「栄光の初代ロードスター」というひとことで、おそらくは十分だ。
しかし1989年9月、筆者の人生にとってユーノスは、まったく関係のないサムシングだった。
なぜならば、当時の筆者はクルマというものにまったく興味がなく、運転免許すら持っていなかったからだ。ただ、世間の人々がユーノスなるマツダ製のオープンカーに熱狂していたことは、運転免許を持たぬ筆者の耳にも届いていた。「美しく、そしてなんだか知らないけどカッコいいクルマだなぁ。カネがないから買えないし、免許ないから乗れないけれど」と、免許を持たぬボンクラ大学生ですら思っていたのだ。
1990年になるとボンクラ学生も一応社会人となり、「営業車のライトバンを運転しなくちゃならないから」という理由だけで運転免許を取得したが、結局は営業車を運転する必要がない部署で数年間を過ごした。世間では相変わらずユーノスが大人気だったようだが、当時の筆者は「あのオープンカー、よく見るなぁ」と思っている程度だった。教習所を卒業して以来、ずっとペーパードライバーだったからだ。
このクルマは「終わらない」
そんなボンクラ若手社会人だった筆者が、まるで雷に打たれたかのように突如「クルマ」というものに興味を持ち始めたのが、確か1992年のこと。そして初代ロードスターに関する短い文章を読み、これまた雷に打たれたかのような状態となったのが――おぼろげな記憶によれば1996年頃であったように思う。
雷に打たれた文章とは、当時『NAVI』という自動車雑誌の編集長を務めていた鈴木正文さんの、以下のような文章だ。手元に原典がないため、記憶に基づき大意を引用させていただく。
「君たちは『ロードスター、終わってるね(笑)』などと言う(※引用者注:この頃モデル末期となっていた初代ロードスターは、ライト層ユーザーからの人気=販売台数に陰りがみえていたようだ)。何を言っている。終わっているのは、そんな浅はかなことを言いながら、せっかくのロードスターの幌(ほろ)を閉めて走らせることしかしていない君たちのほうだ。ロードスターは決して終わってなどいない。終わってないどころか、純情オープンスポーツカーであるところのマツダ・ロードスターは“永遠”なのだ」
細かい言葉づかいなどは原文とまったく異なっているはずだが(大変申し訳ございません)、おおむねこういった内容のことを、スズキさんは文中でおっしゃっていた。
「そうか、マツダのロードスターは“永遠”系のクルマだったのか……」と、当時20代だった筆者は初めて知った。すでにいっぱしのクルマ好きになっていた筆者だったが、もっぱら輸入車だけを愛好し、そっち方面の知識のみを仕入れていた。そのためマツダ・ロードスターについて「終わってるね(笑)」などという、まるで一発屋の芸人さんに対するような態度をとることはなかったが、正直、ロードスターのことはよく知らなかったのだ。
20年の時は過ぎても……
そんなスズキさんの文章に衝撃を覚え、わたしは初代ロードスターの中古車をすぐさま購入した――という事実はなく、筆者の輸入車偏愛はその後も20年ほど続いた。
そして2016年2月。「中古の輸入車を買う」という行為にいささかの飽きとマンネリを覚えていた筆者は「そうだ国産車、買おう。」と、まるで京都に行くかのように思いつき、よくは知らない国産車についての調査と検討を開始した。
そしてそのときに思い出したのが、鈴木正文さんの例の文章だ。
「あのスズキさんが『永遠である』と言うのだから、あれから20年がたった今でも、初代ロードスターは素晴らしいに違いない。たぶん。ならば買ってみようではないか。そんなに高くはないし」
そう。現在は「最高値の1.6リッター『Vスペシャル』は340万円!」みたいな状況になっているユーノス・ロードスターの中古車相場だが、2016年2月の段階では、まださほど高騰してはいなかった。
筆者が某中古車サイトで目をつけ、宮崎県の松元エンジニアリングまで買いに行ったのは車両価格98万3000円、支払総額109万7000円の1996年式1.8リッターVスペシャルだったが、それでも「中古車サイトで上から2番目か3番目くらいに高い物件」だったのだ。今では信じられないくらいの相場だったのである。
いまの人気も当たり前
そうしてユーノス・ロードスターの国内デビューから27年後、初めてマトモに乗ってみることになった、シャストホワイトのVスペシャルは――確かに“永遠”だった。
無駄を削(そ)ぎ落としているが、しかしどうしたって印象に残らざるを得ない、美しくも可憐(かれん)なフォルム。ダイレクト感にあふれているものの、決してレーシングカーのようにピーキーではない操縦性。軽さ。まるで手の内におさまるかのようなサイズ感。屋根を開けた際の爽快感。しかし入ってくる風のうっとうしさと、うっとうしさと同時に感じてしまう原初的な喜び。
……確かにこれらの価値は“永遠”であり、“終わる”などということは絶対にあり得ない。海と溶け合う太陽が永遠であるように(←ランボーの詩のパクリ)、風と溶け合う初代ロードスターは“永遠”なのだ。
そしてその永遠性は、筆者が初代ロードスターを手放してから数年がたった今もなお、当然ながら継続されている。中古車相場が下がらないのも(というか上がる一方なのも)、当たり前の話であろう。
(文=玉川ニコ)
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