初代モデルからスタートしたロードスター人生はこれからもずっと
数年ごとに新型車へと代替わるモデルチェンジのタイミングは、クルマの進化を目の当たりにできる貴重な瞬間でもある。内外装のデザインはもちろん、技術の進歩による機能更新、さらにパワーユニットの刷新など、大幅なレベルアップによる生まれ変わりは、そのクルマにとって新たな時代の幕開けとなる。
歴代マツダ・ロードスターではひとつのモデルが7〜10年も継続販売されていて、現行車のND型も、2015年に誕生し、今年で10年目を迎える息の長いモデルである。そんなND型の中で、2017年式マツダ・ロードスター Sスペシャルパッケージ(ND5RC型)を、発売と同時に手に入れたのが、オーナーの『いちよう』さんだ。
『ロードスターオーナーズクラブ大分』の代表を務め、そのロードスター歴は初代NAから現在のNDまで35年、ナント!100台以上も乗り継いでいるというから驚きである。
「ND型はRFも体感してみないといけないかなと思って購入したし、おなじくクーペボディがラインアップされていたNB世代でも1.6リッターと1.8リッターの2タイプを所有していたこともあります。台数だけでなくモデルバリエーションを含んで考えると、日本一ロードスターを乗り継いでいるかもしれませんよ(笑)」
「バブル経済全盛の頃に、初代ロードスターが発売されると聞いた時には衝撃を受けましたね。日本車でオープン2シーターなんてパッケージングは久しぶり! だから必ず手に入れようと考え、ディーラーにも足繁く通っていたおかげで大分県内では2番目に納車され、そこからロードスターとの付き合いがスタートしました」
「はじめてのNAロードスターはクラシックレッドだったのですが、NDにクラシックレッドが限定車として登場したので即契約したんです。NDは発表された段階で購入することは決めていたので、ボディカラーやグレードをどうするかと考えたくらいです。だからこの限定カラーは決め手になりましたね」
そんないちようさんがNDに乗り続けている理由は、やはり想い出深い、初代のNAに近いフィーリングが再現されているからだという。特に一世代前のNCと比べると、軽量なハンドリングマシンとしての特性は同一。そのため、よりNAっぽい乗り味を再現するため、2021年に発売された“990S”のサスペンションを流用しつつ、スタビライザーを抜くというアレンジなども加えている。このセッティングによって心地良いロール感が得られるようになり、ワインディングでの走行がさらに楽しくなったという。
ND型は10年の販売期間でマイナーチェンジと呼ばれる仕様変更もいくつか行われている。
そのひとつがエンジンで、フロントミッドに搭載される1.5リッターエンジンは、当初の最高出力を131psに設定されていたが、現行モデルでは136psまでパワーアップ。とは言っても、前後重量配分を50:50に設定し、1トンを切る軽量な車体設計は、131psでも必要にして十分。『人車一体』と銘打たれたコンセプトは、現代のライトウエイトスポーツらしい気持ちの良い走りを実現しているというわけだ。
トランスミッションも気持ち良い走りを楽しむための重要なポイント。NDロードスターのために設計された6速MTは、構造をシンプルにすることで小型軽量化を実現。その甲斐あって車体重量を大幅に軽減しているのだ。もちろん初代から軽快な走りを楽しみ続けているいちようさんだけに、6速直結のクロスレシオの設定は大絶賛。NA時代から続くロードスターらしさを貫くためのギア比選択など、近代化させるだけでなく基本コンセプトをしっかりと踏襲しているあたりも、NDがロードスターファンを納得させる理由と言えるのだ。
現在はこのNDロードスターの他、NAロードスターも所有していて、そちらはレストア作業を行っている真っ最中とのこと。これまでも複数台のロードスターを同時所有していたというが、基本的にはメイン+レストア用という組み合わせなのだとか。
「最初に買ったロードスターは飽きるくらい乗り回しましたね。その後にM2 1001を運良く購入できたのですが、こちらは大切にしすぎたため、気軽に乗れなくなっちゃったんですよ。そこで、セカンドカーとしてロードスターの中古車を安く購入し、直しながら乗って、欲しいという人が現れたら譲って、新たに買い直すというサイクルがスタートしました。大切にし続けるのはもちろんですが、ロードスターは本当に素晴らしいクルマなので、その良さを多くの人に知ってもらうためには、コンディションを良くしてお譲りすることが重要なんですよ」
地元大分を中心に、19名のメンバーが在籍する『ロードスターオーナーズクラブ大分』の代表としてだけでなく、中国地方以西で最大となるイベント『ロードスタージャンボリー』の初代実行委員長も務めていたいちようさん。そのため、単なるクルマ趣味の対象としてロードスターがあるのではなく、これまでのカーライフはロードスターが中心となっている。
「ロードスターはライトウエイトスポーツの代表格として、走らせて楽しむクルマであることは間違いありません。そのため月に1回はクラブの仲間とともに、信号機の少ないルートを設定したツーリングを行っています。今回の取材会は定例ツーリングのスケジュールと重なっていたので、仲間にも来てもらっちゃいました。さらに、毎年大分県で開催しているイベントは、中国や四国地方からも500台以上が集まって来てくれています。そう考えると、ロードスターは多くの人との出会いを叶えてくれた、私の人生には欠かせない存在でもあるんですよ」
ロードスターを知り尽くしているいちようさんのNDの特徴は、できる限りノーマルの雰囲気を残すこと。スタイリングに関しては社外のエアロパーツなどは装着せず、気になる部分をリファインするのみ。また、他グレード用のホイールやサスペンションなど、いつでもノーマルに戻すことができるカスタマイズにとどめている。
数少ないカスタマイズポイントがシートの張替え。カバーではなくホワイト×ブラックの表皮に交換することで、ヨレなどもなく自然な張りのある特徴的なシートを完成させている。さらにクラシックレッドを採用した限定車ではシートヒーターが備わっていなかったため、純正スイッチを流用しつつシートヒーターも後付けされている。
シンプルなデザインのインパネには、ボディカラーと同様の赤いステッチを施したバックスキンで張り替え。シートの張替えはもちろん、こちらの作業もすべて自身の手で行っているのだとか。
オーディオに関しては、純正品の音質が今ひとつと感じたことから、yamaguchiスピーカーシステムに交換。合わせてトランクルームにアンプを設置し、オープン走行時でも満足のいくサウンドを手に入れている。
初代ロードスターとは、スタイリングこそ大きく変わっているが、いちようさんにとってのNDは若かりし頃に乗っていたNAと同じベクトル上での正常進化。それだけに、現在の仕様は進化したロードスターの理想形だという。しかしその反面、想い出に残る自身にとっての名車にもまた乗りたいと感じているという。
「4世代の中で様々な限定車やパッケージがありますが、自分にとってのベストはNBの10thアニバーサリーですね。このモデルはメーカーがバランス取りしていたので、エンジンから車体に至るまで最高のフィーリングを与えてくれました。その他では、定番ですがNAのVスペック。やはりロードスターの元祖であり、その元祖の完成形がVスペなんですよね。この2台は機会があればもう一度乗りたいロードスターです」
記憶に残る最高の1台を思い返す一方で、ロードスターの進化や、その先への興味も尽きない。
「NDも発売から10年が過ぎて、そろそろ新型に切り替わるって噂も出はじめていますよね。どちらかと言えば、次の姿を見てみたいという期待からの声が大きいのですが、ロードスター乗りとしては、やはり新型が出たら乗ってみなきゃと思っていますよ。マツダですから、ロードスターの基本コンセプトは裏切らないはずですし、オープンカーであることは間違いないでしょう。型式はNEになるのか? それともEVにシフトしちゃうのか? なんて想像も楽しんでいます」
ND購入から8年。これまでのロードスター歴の中で最も長い間乗り続けていることになる。とは言っても、最近では乗る機会が減りつつあり、走行距離は3万2000km程度。しかし、ロードスターを愛し続けているいちようさんだからこそ、ロードスター乗りのまま人生を終えたいという目標があるそうだ。まだまだ60歳代前半。その時はかなり先のことになるが、終のクルマは最新モデルになるのか、はたまた初代に返り咲くのかと思いを巡らせている。
有終の美を飾る、自身にとって最高の1台は、これから続くロードスター人生をかけて探し求めていくのだろう。
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所: 大分大学 旦野原キャンパス(大分県大分市旦野原700)
[GAZOO編集部]
マツダ・ロードスターに関する愛車記事
-
-
入学早々に自動車部の先輩から引き継いだロードスターには、カーライフのすべてが詰まっている
2025.05.19 愛車広場
-
-
愛機ロードスターは運転の基本を学ばせてくれた最高の“教科書”。万感の思いを込め、そのキーを次の世代へと託す
2025.05.17 愛車広場
-
-
オープンカーなんて恥ずかしいと思っていたのに…。乗ってみて感じたロードスターの魅力
2025.05.15 愛車広場
-
-
初代モデルからスタートしたロードスター人生はこれからもずっと
2025.05.09 愛車広場
-
-
運転する楽しさも自分らしさを表現する面白さも教えてくれたロードスターとの歩み
2025.05.08 愛車広場
-
-
マツダ ロードスターと楽しむ早朝ドライブ!映像で綴るこだわりのカーライフ
2025.04.17 愛車広場
GAZOO愛車広場 出張取材会in大分
-
-
入学早々に自動車部の先輩から引き継いだロードスターには、カーライフのすべてが詰まっている
2025.05.19 愛車広場
-
-
スタイリッシュな希少オープンカーで風を感じながら走る優雅な時間 トヨタ・MRスパイダー(SW20改)
2025.05.18 愛車広場
-
-
愛機ロードスターは運転の基本を学ばせてくれた最高の“教科書”。万感の思いを込め、そのキーを次の世代へと託す
2025.05.17 愛車広場
-
-
初愛車デミオで過ごした楽しい日々。その思い出が決め手となったMAZDA2とのカーライフ
2025.05.16 愛車広場
-
-
オープンカーなんて恥ずかしいと思っていたのに…。乗ってみて感じたロードスターの魅力
2025.05.15 愛車広場
-
-
乗るならやっぱり、自分が一番欲しいクルマ! 夢の実現を手助けしてくれた仲間達と共に楽しむセリカライフ
2025.05.14 愛車広場