僕と義兄との“絆”で、家族にとっての“宝物”。この世を去った義兄の夢を継ぐ20ソアラ(GZ20)

「昔乗っていたのと同じソアラに、もう一度乗りたい」

そう願いながらも夢叶わず47歳の若さで亡くなった義兄。その夢を引き継ぐためにご家族のもとにきた一台が、静岡県御前崎市在住の吉田正徳さん(49歳)が所有する2代目ソアラ(以下20ソアラ)だ。今回はこのたくさんの想いが詰まった20ソアラと、それを所有する吉田さんご家族との絆のお話。

「自分と同い年だった嫁の兄は、家も隣でお互いクルマ好きだったこともあり、毎日のように会っていたくらい仲が良かったんです。そんな義兄さんが『子供も大きくなったことだしもう一度乗りたい』と言っていたのが、若い頃に彼が乗っていた写真の20ソアラでした。でも義兄さんは体調を崩して2年前に47歳で亡くなってしまったんです。その夢を叶えたいと1年かけて彼が乗っていたのと同じ白い20ソアラを探して、去年やっと状態のいいものを見つけて購入しました」

吉田さんが購入したのは1988年製のGTツインターボで、走行距離は11万4000キロ。ほぼノーマルで、前のオーナーはおそらく街乗りで使用していたと思われる状態だったそうだ。

「ノーマルで状態がよかったとはいえ、買ったときはここまでキレイではなかったので、すぐエンジンルームなどを息子と一緒に全部磨いてピカピカにしました。そして亡くなった義兄が好きな仕様にすることが目的だったので、ハンドルもシフトノブもすべて、義兄さんがソアラを買ったら付けたいと集めていた土屋圭市ブランド“KT”にしています」

というのも、亡くなった義兄さんはファンクラブに入り、追っかけをするぐらい土屋圭市の大ファンだったそうだ。そのため部屋を掃除したときにでてきたワッペンやステッカーなども『じゃあ貼っとこう』ということになったという。そのためクルマの内外装は、ドリキン土屋のアイテムがいっぱい!

吉田さん自身も義兄さん同様に20ソアラ好きだったので、ご自身の好みもクルマづくりには反映されている。

「今履いているBBSホイールは僕の好みです。義兄さんはヨコハマのAVSホイールを装着していたので、それにしようか悩んだんですけど、自分の好みでBBSを買ってしまい(苦笑)。ただ、僕がもう一台所持しているR32にはAVSホイールを履いているので、そちらに交換しようかなと思っています。少し車高を落としてキャンバーをつければ、そちらのホイールもフェンダーに収まるかなと。

ただ、ボディを叩いて広げないと入らないようなら、それは避けたいので悩んでいます。できれば純正ルックで乗りたいんですよね。でも車高はもう少し下げたほうがかっこいいし、そこはこだわりで調整したいですね。あと、ブリッドのシートは自分で購入したもので、助手席にも自分がずっと使っていたシートを入れています」

そんな吉田さんと義兄さん、ふたりの想いが反映された20ソアラは、吉田さんの街乗りカーとしてはもちろん、さらにファミリーカーとしても活躍。吉田さんご一家は全員クルマ好きで、この日のイベントにも、ご家族3人+1匹が同乗して参加していた。そんなご家族全員が、このクルマを大切にしている。

「やっぱり兄が乗っていたクルマというのもありますが、全体的にソアラが好きです。兄は、平成3年に新車で20ソアラ買って、何年か乗って手放したけれど、もう一度乗りたいって……。だからこの20ソアラを主人が見つけて、買いたいと言ったときは当然賛成しましたし、実家の母も兄の想いを受け継いでくれるのが嬉しかったみたいで賛成してくれました。今日は、兄が乗っていたクルマの写真も持ってきています」と奥様も教えてくれた。

そして娘さんも「クルマの運転は、マニュアル免許を取るくらい好きだし、楽しいです。でもこのソアラは、家族で大切にしているので、なにかあったらと思うと怖くてとても乗れないです(苦笑)」

また、この日は来ていなかった息子さんも、このソアラのことは大好きで運転したがっているそうだ。

「息子は二十歳でまだ免許をとって1年ちょっとなので、運転が上手くなるまで我慢してもらっているんです。本人も気に入っていて運転したがってはいるんですけど、こんなキレイなクルマもなかなか出会えないですし、ぶつけちゃったら悲しいので」と、奥様曰くまだ許可が下りていない様子。

でも吉田さんは「僕も息子には乗ってほしいんですけどね」と教えてくれた。それだけ20ソアラが家族にとってプライスレスな1台である証拠だろう。左写真の右が息子さん、左が娘さんだ。

そして、忘れてはいけないのが吉田家の愛犬、あずきちゃん。このワンちゃんも義兄さんに可愛がってもらっていた大事な家族の一員だ。

そんな吉田さんご家族は、イベントに一枚のサイン入り色紙を持参していた。

「義兄さんが入院して闘病生活を送っているとき、僕が土屋圭市さんの事務所“K1プランニング”に『土屋さんのファンで前から追いかけていた義兄が病に倒れたので、励ましてほしい』と相談しました。すると土屋さんが名前やARTAのサインが入った色紙を郵送してくれたんです。急いで義兄のところに妹が届けに行ったら、色紙を抱きしめて本当に喜んでくれて、『よかったなぁ』って話していました。そして義兄さんはその日に亡くなりました」

吉田さんと土屋圭市さんの想いが宿ったこの色紙は、生前の義兄さんにとって最期にして最高のプレゼントとなったに違いない。だからこそ、ご家族の土屋さんへの感謝の想いはとても強い。

「今日この色紙を持ってきたのは、もし土屋さんが来ていたらぜひお礼を言いたかったからなんです。残念ながらいらっしゃらなかったですが……」と奥様は話す。

ソアラの復活、色紙の持参。「義兄さんのために」と実際にここまでの行動を起こさせるくらい、義兄さんは吉田さんご家族に愛されていた。そして、その想いの象徴ともいえるのがこの20ソアラなのだ。だからこそ、今後も長く乗り続けるためのメンテナンスや修復には余念がない。

「メンテナンスは基本僕が自分でやっていますが、ブレーキなど大事なところはディーラーに持っていきます。ただ、部品が出ないので困っちゃうんですよね。将来のことを考えてネットオークションで落札したストック部品も自然に溜まってしまいますね。とくにゴム類は、どうしても経年劣化でダメになりますし、メーカーで再販してくれたら嬉しいですね。今後は、足まわりのブッシュ関係がへたっているので直したいと思っています」

最後に、吉田さんやご家族にとってこの20ソアラがどんな存在か尋ねてみた。
「僕にとってこの20ソアラは義兄さんとの“絆”ですね」
「うんうん、本当に大事な宝物です。家族みんなでこのクルマを愛しています」

ご家族が大好きだった義兄さんを想う気持ちを乗せながら、今日も明日もこの先も、この20ソアラは走り続けていく。

(文:西本尚恵/撮影:土屋勇人)

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