【マツダファンフェスタ2018 in OKAYAMA】開発者に敬意を表してフルノーマルにこだわるランティスオーナーの溢れ出るマツダ愛

2日間にわたって行われた『マツダファンフェスタ2018』のミーティングスペースには、多くのマツダ車オーナーが集まり、モデルごとにエリア分けしつつカラーにまで配慮した配列によって爽快な印象を与えていた。そんなオーナーミーティング会場の一角に佇んでいたのが、日曜日に唯一のエントリーとなっていた1993年式ランティス タイプRだ。
ランティスといえば日本のツーリングカー最高峰を競い合うJTCCに参戦していたマシンとしても有名。4ドアクーペ(形状は5ドアハッチバック)のボディスタイルは独特なデザインが採用され、四半世紀経った今見ても個性的と表現されることも多い。中でもタイプRは最上級グレードとして新開発の2LV6エンジンを搭載し、上品な乗り味とスポーツ性能を共有した稀代のスポーツクーペである。そんなランティスに憧れ、15年前に探しに探してやっと見つけたというのが、生まれも育ちもマツダのお膝元・広島というオーナーの源城さん。

幼少の頃から街を走るランティスを見て「カッコイイ」と羨望の眼差しを向けていたというオーナー。当然、免許を取ったらすぐにランティスを手に入れようと考えていたが、1世代で販売終了となってしてしまい、お世辞にも売れたモデルとはいえない車体だけに、希望のコンディションになかなか巡り会うことができなかった。
当時はインターネットが普及しはじめていた時代だったため、様々なオーナーサイトを覗いては、ランティスの情報収集を行っていたという。そうこうしているうちに、ディーラーの下取りに入ってきた1台のタイプR/5MTを発見。即購入したのがはじめての愛車で、現在も乗り続けているこのランティスなのだ。

購入当初は社外の17インチホイールに変更されて、サスペンションもローダウンスプリングが組み込まれていた状態だった。しかし源城さんが求めるランティスは“作り手の想いが伝わってくるフルノーマルの工場出荷状態”。そのためまずはノーマルスプリングを購入し、車高を適正値に戻すことからスタート。
ホイールもノーマル戻しを目指したところ、部品共販にはすでに在庫がなくなっているとのこと。そこで中古ホイールを探し始めるも、販売台数が少ないモデルの、さらに純正ホイールとなると、こちらもなかなか出会うことができなかった。しかしこまめに探していたところ、ネットオークション上で1セット販売しているのを発見。すぐに販売主をチェックしてみると、なんと近所のガソリンスタンドだったことが判明し「自分のランティスはノーマルに戻す運命なんだ」と感じたという。

こうしてフルノーマルに戻されたランティスは、以降15年に渡って日常の足として活用され続けている。唯一、走行には関係のないオーディオやポータブルナビは、快適性アップのために交換しているが、その他はこだわりの工場出荷状態をキープしているという。

「フルノーマルって設計開発を行った人たちの理想の形だと思います。実際にラインティス誕生25周年のイベントがマツダ本社で行われた際に参加して、当時の設計の方とお話しをする機会があったんです。形状の一つ一つに対する意味を教えてもらい、15年乗り続けている自分にとっても、新たな発見がいろいろありました。例えばルーフスポイラーの付け根部分の盛り上がりは、ゲートのヒンジを隠すとともに後席のヘッドスペースを確保するための形状だとか、日々乗っているオーナーにも気づかせないように、快適性を高める工夫が各部に施されているんです。逆にその点を設計段階で考えてなかったら、使いにくくて乗り換えちゃうんだと思います。この時代のマツダ車特有の真面目さに感動しましたね」
特にタイプRは専用のタワーバーが装着され、当時としてはハイスペックな16インチ50扁平タイヤを標準装備。大人5人が余裕で乗れる4ドアスポーツクーペという欲張りなコンセプトは、現代の輸入車にも通じる設計思想の先駆けといえるだろう。

さすがに発売から25年経過していることもあり、最近では補修部品も入手困難になりつつあるという。しかし同じ志を持つオーナーのネットワークを駆使することで、今でもノーマルのフィーリングを楽しみ続けることができているという。
いつかは修復できずに別れる時がくるとは思いながらも、源城さんは絶対に日常使いをやめることは考えていない。ランティスはコレクションカーとしてではなく、あくまでも普通乗用車として開発陣が試行錯誤を繰り返した努力の結晶。それを知るだけにその意思を受け継ぐことこそ最高の敬意だと考えている。
ランティスに愛着を持ち、それを生み出したマツダ、そして開発陣の想いを胸に、今日も源城さんとランティスは広島市内を駆け巡っているのだ。

(テキスト:渡辺大輔 / 写真:中村レオ)

[ガズー編集部]

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