【ノスタルジック2デイズ】シルビアにL28型搭載!? カンタン公認アイテムによって実現したS30フェアレディZ オーナーのこだわりセカンドカー
ある特定の車種が好きな人、クルマ全般を愛する人、最新の技術に興味を持つ人など『クルマ好き』という言葉の中には様々な“好き”が隠されている。
ノスタルジック2デイズに出展されていたこのS14型シルビアのオーナーさんは、クルマ好きの中でも特に「エンジン好き」というジャンルに属する。というのも、L型エンジンに無類の愛情を注ぐあまり、シルビアにL型エンジンスワップという、まさかの大胆アプローチを実行してしまったというのだ。
そもそもこのシルビアは、オーナー自身が所有するS30フェアレディZのコンディション維持を目的に、日常の足として導入したものだったという。
ところが「セカンドカーとして扱うにしても、高年式のターボエンジンでは乗っていて楽しいとは感じられなかったんです。やっぱり自分にはL型のフィーリングが合っているんだな~って思ったのが換装のキッカケですね。そんな時に知ったのが、L28エンジンを高年式の排ガス規制に適合させるキャタライザーの存在でした。それからすぐに換装を開始して、約半年ほどの製作期間で公認車検まで行き着きましたよ」とのこと。
ちなみにベースとなっているS14型シルビアは、1990年代中盤から後半にかけ、若者を中心に人気が大ブレイクしたスポーツクーペ。
カスタマイズパーツが豊富でランニングコストも抑えられるSR20DETエンジンを搭載し、ドリフトやサーキット走行車両、スポーツカー入門機としても幅広く愛されるモデルだ。
そんなモデルにL28改3.1Lエンジンを搭載し、野太いエキゾーストノートを響かせながら走るというギャップが楽しめるデイリーマシンへと仕上げているのは、予想外のカスタマイズといえるだろう。
しかし、この手のエンジンスワップで課題となるのが、公認車検の取得だ。
エンジンマウントの強度など物理的な認証に加え、排気ガスの浄化に関する規制クリアが最も重大な問題となる。
排ガス基準は規制改定がおこなわれるたびに厳しくなっていったため、古い車体に新しいエンジンを搭載することは容易であっても、その逆はまず認可されない、というのが一般的な印象だ。
しかし、オーナーさんが見つけたTIC製のキャタライザーを利用すれば、昭和世代のL28エンジンであっても「E-」や「GH-」といった型式のついた平成世代のエンジンと同じように排ガス規制をクリアできるようになるという。
エンジンスワップ時の排ガス基準などについて詳しい内容をお伝えするにはスペースが足りないので割愛させていただくが、とにかくこのS14も実際にばっちりとナンバーを取得することができている。
エンジン換装にはエンジンマウントやメンバーなど現物あわせの加工や製作物が必要となるのは当然。しかも、もともとシルビアのエンジンルームは4気筒エンジンを収めるスペースに設計されているため、6気筒エンジンを収めるにはスペース的にも限られてしまう。
さらにより気軽に乗れるようにと、カップリングファンの装着を前提にしたため、コアサポート部をカットしながらラジエターをオフセットさせているのは特筆すべき特徴のひとつと言えるだろう。
単純にエンジンを載せ替えるといっても、その載せ方などによっても労力は大きく異なるのだ。
もちろんエンジンを積み替えれば完了というわけではなく、せっかく搭載したL型エンジンをさらに美しく見せるためのディテーリングにも気を使っている。シンプルなエンジンに合わせてシェイプドベイ(エンジンルームから極力不要なものを除く手法)やサイクルフェンダー(タイヤハウスを大きく加工する手法)といったカスタム要素を取り入れることで、よりクリーンなエンジンルームを作り上げている。
エンジン自体も排気量アップに加えキャブレターはソレックスに変更し、L型カスタムのセオリーに従ってファインチューン。
さらにエンジンがキャブ仕様のため、制御系コンピュータなど不要なアイテムはすべて撤廃。メーター類などは社外品を活用することで、純正コンピュータレスのアナログ仕様に作り変えているのも特徴のひとつだ。
ミッションはL型のケースを利用しながら、スカイラインなどに搭載されるRB系ミッションをドッキング。最小限のコストでデイリーユースも可能な信頼性をコンセプトに、使うパーツもしっかりと厳選しているのである。
また、組み合わせるパーツも旧車イメージを重視し、SSRメッシュホールはあえての16インチをセット。
バケットシートも空気抜きのボタンを取り入れるなど、ところどころで旧車好きをアピールするコーディネイトが取り入れられている。
「どこへ行くときも愛車と一緒」という旧車オーナーさんも少なくないが、実用性や愛車のコンディション維持のためにセカンドカーを所有する方も多い。そして、その場合、通常であれば快適さや実用性を優先するのが一般的だ。
しかし、S30乗りとしてのこだわりや好みのフィーリングをセカンドカーにも求めてしまった結果、たどり着いたのは普通とはひと味もふた味も異なる個性派パッケージングだったというわけだ。
(テキスト:渡辺大輔 / 写真:堤 晋一)
[ガズー編集部]
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