1999年式トヨタ・チェイサー ツアラーV改(JZX100型)は「理想の愛車」。充実したカーライフとモディファイを楽しむ27歳のオーナー
元号が令和となって数ヶ月が経過した。最近感じているのは「この愛車が、憧れだった理想のクルマです」と話す、若いクルマ好きに出会う機会が多くなったことだ。ベテランオーナーの場合「いろいろと乗り継いでたどり着く」オーナーが多いが、世代が若くなるにつれ「アガリの1台(と明言している)」をすでに手に入れている方が多いように思う。もしかすると、年代 によってカーライフは変化しているのかもしれない。
今回は「初の愛車にして理想の愛車」と話す、27歳の男性オーナーを紹介したい。所有するトヨタ・チェイサー ツアラーV改(JZX100型、以下、チェイサー)は、納車から6年。走行距離は6万3千キロを走行したという。現在のオドメーターは、約13万キロを刻んでいた。
この個体のボディカラーは、ダークグリーンマイカP.I.O.と呼ばれる、深みのあるグリーンだ。明るいところではグリーンの色合いが強くなるが、暗くなると黒っぽくなり、より引き締まった雰囲気になる。このボディカラーもオーナーのお気に入りのようだ。
JZX100型のトヨタ・チェイサーは、シリーズとしては6代目の最終モデルにあたる。オーナーが所有する「ツアラーV」は、ターボを搭載したスポーツグレードを示している。
1996年から2001年まで生産されたJZX100型チェイサーは、モータースポーツシーンでも活躍した。JTCC(全日本ツーリングカー選手権)で土屋圭市の駆るマシン「ADVANチェイサー」の活躍は鮮烈だった。生産終了から20年近くが経過していながら、若い世代のファンが多い車種でもある。
チェイサーのボディサイズは全長×全幅×全高4715x1755x1400mm。「1JZ-GTE」と呼ばれる、排気量2491cc、直列6気筒DOHCターボエンジンが搭載され、最大出力は280馬力を誇る。
ところで、オーナーがクルマ好きになったきっかけは、家族の影響なのだろうか?
「クルマ好きになったのは 3歳頃だったと記憶しています。その頃には街を走るクルマの車種を言い当てることが楽しかったです。家族の影響かと言われれば、父でしょうか……。昔からクルマ好きで、F1を観ていたようです」
チェイサーを好きになったきっかけは?
「小学生の頃から自動車誌が好きで読んでいました。そこからセダン好きになりましたね。同じ年代でパワーも同等のFDやGT-Rなどのスポーツカーも好きですが、私はセダンを選びます」
280馬力のセダン、スポーツクーペにはないチェイサーの魅力を、オーナーはどこに感じているのだろうか。
「居住性と走りを両立させている部分と、直6ターボエンジン&MTという点ですね。こうしたスポーツセダンは、日本で今後、新しく出ることはないと思います」
このチェイサーとの馴れ初めを伺った。
「中学1年の頃、近所の方が所有していた白いツアラーVに乗せてもらう機会があったんです。それから、直6ターボエンジンである『1JZ-GTE』のサウンドと排気音にすっかり魅せられてしまい、大人になったら必ず乗ろうと決意しました。やがて、就職して1年目の冬に、たまたまツアラーVの専門店を見つけたんです。ずっと欲しかったクルマの専門店だったので、たとえ買わなくても行ってみたくなり、足を運びました。すると店頭に、この個体があったんです。まだ、中古車情報誌に掲載する前の個体でした。自分のイメージ通りのサンルーフ付きで、しかも理想のボディカラーです。“ひと目惚れ”で即決してしまいました。私で3オーナー目だそうですが、程度が良く、ずっと綺麗に乗られてきたんでしょうね」
コンディションを維持しているのは現オーナーによる手入れの賜物だが、歴代オーナーにも愛されてきたのだろう。このチェイサー、納車当時はどんな仕様だったのだろうか。
「社外品のフルエアロ・ホイール・車高調、インタークーラーが付いていて『ドリ車』のスタイルになっていました。純正にプラスアルファしたような仕様ですね。もともとATだったのですが、手に入れたときからMTに載せ換えてありました」
「ツアラーV」には5速MT車がラインナップされていたが、販売台数は少なかった。そのため、オーナーのチェイサーのように、AT車をMT仕様に変更した個体も存在しているのだ。車検証にも「改」の文字が記載される。
このチェイサーは今、オーナーが選んだパーツをまとっている。オーナーいわく「完成度は80%」とのことだが…。
「純正を感じさせるモディファイを心がけています。エアロは、トヨタ純正オプションのフルエアロです。ネットオークションで見つけて、かなりの接戦で競り落としました。チェイサーの場合、フロントインタークーラーを見せるために、フロントバンパーを加工したくなるんですけど、私はさりげなく見えるほうが好きなので、加工はしていません。万が一のために予備のフロントバンパーも手に入れています。サイドミラーは、経年劣化で色褪せしてしまうので、車検対応のエアロミラーに交換しました。ステアリングは、NARDI製のディープコーンタイプを選びました」
サンルーフには純正のバイザーが装着さているのだが、案外少数派ではないだろうか?
「好みは分かれてしまいますが、私は好きですね。似合うかなと思って付けてみました」
足元のBBS製ホイールが目を引く。足まわりのこだわりは?
「ホイールは、シュテルンBBSという、珍しいモデルを履いています。18インチがたまたま手に入ったんです。クラッチはORC製です。ダンパーが入っているので軽く、ミートポイントも極端ではないので扱いやすいですね。車高調はHKS製のものを選んでいます。ブレーキは、スープラ(A80型)用のものを流用していて、キャリパー・マスターシリンダーもスープラ用です。これで効きが向上しました。ブレーキパッドはProject μ製です。前後のスタビライザーも強化してあります」
オーナーに、愛車の気に入っている点を尋ねてみた。
「ダークグリーンマイカP.I.O.のボディカラーも大好きなのですが、後期型特有の円形2灯テールランプ、そして直6ターボのサウンドが気に入っています」
所有してから変化したことや発見はあったのだろうか?
「オーナーズクラブに所属したことで、人の輪が広がったことですね。良い意味でマニアックな人が多く、モチベーションも上がりますし、刺激を受けています。そして何よりも仕事で辛いときに、愛車が心の支えとなってくれています」
ここで、少し意地悪な質問を投げかけてみた。気になっているクルマや、このチェイサーを手放してまで欲しいクルマは存在するのだろうか?
「BMW M5は好きですが、チェイサーを売ってまで欲しいとは思いません。もし手に入れるとすれば、増車しかないですね。オーナーズクラブの中にも、一度手放したけれど未練が断ち切れなくて、結局買い直す人が多いんです。最近、私もその気持ちがわかってきました。チューニングや手をかけてやると愛着が湧くので、手放したくなくなるんですよね」
最後に、この愛車と今後どのように接していきたいか伺ってみた。
「一生乗りたいですね。外装は経年劣化が見られますが、全塗装すれば問題ありません。エンジンルームも綺麗にしたいと思います。近く、純正TRDスポーツのサイドマットガードと、リアアンダースポイラーを取り付ける予定で、それで外装は完成します。今後はサーキット走行も経験してみたいですね。目標は、30万キロ突破をめざしたいです!」
クルマ好きとして、理想的なカーライフを送っているオーナー。「チェイサーが好きでしかたがない」という気持ちがあふれていたインタビューだった。そしてオーナーは、この先もチェイサーを手放さない気がしてならない。所有してから6年が経過しているが、時間を重ねるにつれ「人生の相棒」としての存在になっていくことだろう。これからもチェイサーとオーナーの物語は続いていく。
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
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