ボリューム感のある美しいデザインに一目惚れ!トヨタ・カレン(ST206)一筋で3台乗り継ぐ20代オーナー

6代目セリカ(T200型)の姉妹車として生まれた、2ドアノッチバッククーペ版のトヨタ「カレン」。セリカ同等のスペックながら“カレン”という名前やスペシャルティカーという立ち位置で、優雅なスタイリングが魅力の隠れた名車だ。

しかし、販売期間は1994年から1999年の5年間だけで、1代のみで生産終了になった。すでに発売から20年以上が経過しているので、街中でその姿を見かけることは少ない。

セリカの陰に隠れた少しマイナーな車種という印象を持つ人も多いのではないだろうか。そんなカレンに一目惚れして、「これ以外のクルマに乗ることが考えられない」というくらいどハマりしている若者が、東京都東久留米市在住の鈴木隼人さん(26歳)だ。
彼は免許取得からカレンだけを乗り継ぎ現在6年目。そんなにも鈴木さんを引きつけるカレンの魅力とは一体なんなのだろうか。

「3歳の頃からベンツのミニカーをどこに行くのにも持ち歩いていたくらい、物心がついたときからクルマ好きでした。それと昔から絵を描くのが好きだったんですよね。その延長でエアロとかを絵に起こしたりしていているうちにクルマのデザインに興味が出て、ちょうどそれが免許取得と重なって。

最初はランエボに乗りたかったんですけど、ネットオークション等でクルマを物色していたとき、たまたま目に留まったのがカレンでした。そこでいろいろと調べて、カタログも買って眺めていたら気づいたんです。『すごく綺麗なデザインをしているな』って」と鈴木さんは第一印象を教えてくれた。

こうしてカレンに興味を持った鈴木さんは、免許を取得した2014年に1台目のカレンを購入する。ちなみに現車確認するまで生のカレンを見たことがなかったとか。

「本当はMTがほしかったんですけど、いい中古車が見つからず、とりあえずATを買いました。その1年後の2015年にMTのカレンを買ったんです。でも、あまり状態はよくなかったですね(汗)。3台目でようやく状態のいいMTのカレンを見つけ、2台目は売ってしまいました。でも、その3台目はすぐに事故で廃車にしてしまったんです。それで慌てて一度売ってしまった2台目のカレンを買い戻して(苦笑)。それがこのクルマです」

つまりカレン自体は3台乗り継いだが、現在の愛車は2台目に買った車両ということになる。そんな鈴木さんのカレンは、1996年製でグレードは走行性能に重点をおいたZS。搭載されているエンジンは3S-GEで、最高出力はカタログ値で180ps。
ちなみに現在は、同型の3S-GEだがよりハイパワーなST202セリカ最終型のものに換装され200ps仕様となっている。

20代の鈴木さんにすれば旧車であり、現行モデルではないカレン。どこに魅力を感じ、心惹かれたのだろう。

「一番は目頭からフェンダーにかけて続いているプレスラインです。すごく綺麗だなって!FFのわりにボリュームを持たせたフェンダーラインも気に入っています。クルマを知らない人からは、『このクルマってFRなの?』と聞かれることもありますね(苦笑)。あとは、セリカのように独立したトランクより、ノッチバックのほうがデザイン的に僕好みですね!」

そう、彼はカレンの特徴的なボディデザインに魅了されたのだ。それだけに外装のドレスアップに力を入れたかったそうだが、「アフターパーツが少なくて、ほとんど触れられるところがないんですよね(汗)」と純正ベースのままとなっている。
しかしながら、パーツが少ない中でも鈴木さんなりの工夫がしっかり反映されているところがポイントだ。

「フロントリップは、サイズや形状を調べてみたら、鷹目インプレッサ用のステージ21製のスカートリップが合いそうだったので流用してみました。ウイングは数少ないTRD製のカレン用をネットオークションで発見! ちょうど純正の赤で塗装済みだったので落札して装着しています。運が良かったです。それからマフラーは、セリカのものを流用していますが、そのまま装着すると出口が奥まった位置になるので5ZIGENの汎用マフラーカッターを追加。これでばっちりの位置になりました!」

中でもスタイリングで悩んだのがホイール。PCDが主流の114.3ではなく、コンパクトカーに多い100になるカレン。そのためホイールの選択肢も限定されがちだが、「TRDのカタログで履いているのとおそらく、というかまったく同じアルミックのホイール、それもPCD100のものがネットオークションに出品されていたんです! 競る相手がいなかったので、3万円と格安で手に入れることができたので助かりました」と、理想のホイールをゲットできて満足気な鈴木さん。

一方、内装はさらに鈴木さんのこだわりが強く表現されている。
「シートは純正の柄が僕的にイケてなかったので、前後ともにネットオークションで手に入れたセリカGT4オプションの黒皮シートを移植しています。後ろの座面の形がちょっと違っていたので、そこは骨組みを切ったり、中抜きをしたりして合わせています。

それと僕はトムスのロゴが大好きなんですよね。今はメーターパネルやシフトノブ、ステアリングをトムス製にしています。なるべくトムスの当時のパーツカタログにあったものを揃えようと思っていて、シフトノブはわざわざカタログと同じものを探しましたね。じつはトムス製のフルバケットシートも手に入れたんですが、穴位置が特殊でシートレールが合わないんですよ。これはシートレールをワンオフで作らないとダメかも?」と、当時モノにこだわったトムス仕様を狙っている。

そして鈴木さんがこのカレンで一番気に入っているのが、エンジンブローを機に換装したエンジン。ST202セリカ最終型に載せ替え、パワーアップを図っている。

「国内には同じ仕様が何台かあるみたいですが、それを自分ができるとは思わなかったですね。もともとのエンジンは、3S-GEでカタログ値180psですけど、載せ替えたことで200psになりました。実際走ると3500回転からのパワーが違うなって感じます。今は最低限の作業だけ終えて載せ替えた状態ですが、とくに不具合なく走ってくれています。あとタワーバーは、知り合いから純正と交換でタダでもらったTRD製のものに交換しています」

現在、鈴木さんはこのカレンのほかにミラを持っているため、近所の買い物などにはそれを使うが、「なるべく毎日乗ってあげたいから」と通勤やドライブにはカレンを使っている。またメンテナンスも基本ご自身で行っているそうだ。

そんな鈴木さんが今後手をつけたいのが塗装の修復。
「ちょうど全塗装をしようと思っていた矢先にエンジンブローしてしまってので、後回しにせざるを得なかったんですよね。知り合いの工場で先輩に隔週で進めてもらっていたので、載せ替えに半年かかって8月末に復活したばかりなんです。でも、これでやっと鈑金作業に移れそうです。その前にまた壊れないか心配ですけど(笑)」

最後に鈴木さんはこう話してくれた。
「5年も乗っていてもこんなものです。パーツがなかなか出てこないし、自分が甲斐性なしなのでなかなか進まないですね。でもカレンには入れ込みすぎちゃって、今はこれ以外のクルマに乗ろうと考えられないので、もしもこの車両がダメになってもまたカレンを買うかもしれません」

セリカという人気車種の姉妹車ながら、販売台数も少なく、パーツを探すのも大変で、街で見かけることも減ってしまったトヨタ・カレン。しかし、鈴木さんを虜にしたそのボディデザインは改めて見ると、確かに秀逸で魅力的だ。

そして、カレンという惚れ込むことができる車種に巡り会えたことは鈴木さんにとっては運命だったに違いない。そして彼が一生懸命手間と時間をかけて少しずつ自分らしく仕上げていきたいという想いが取材を通し十分伝わってきて、応援したい気持ちにさせてくれた。

このカレンはこれからも鈴木さんのかけがえのない大事な相棒として、進化し続けることだろう。

(文:西本尚恵/撮影:土屋勇人)

[ガズー編集部]

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