スバルBRZが私の世界を広げ、成長させてくれた

たった1台のクルマとの出会いが、人生を大きく変貌させるキッカケとなることがある。東京から沖縄に移住し、86&BRZのオーナーズクラブを立ち上げた宇野ゆかりさんも、7年前にスバル・BRZ(ZC6)を手に入れたことで人生が一変したひとりだ。「購入して半年間乗っても楽しさがわからない」というドライバーだったのに、今やBRZを「未熟な私の世界を広げ、成長させてくれる大切な相棒」と言う。劇的な変化の理由、その核心に迫った。

「もともとは東京都在住で、その頃はバイクがメインでしたが、一度はスポーツカーに乗りたいと思っていました。そして、沖縄に移住してきた際に、こっちでは1年でサビがひどくなると聞いたので、まずは中古車を探すことにしたんです」
せっかくならスポーツカーに乗ってみようと、シルビアやS660、CR-Zなどをチェックしたがどれもしっくりこなかったというゆかりさん。もともと東京でスバルの軽自動車に乗っていたこともあり発売された時から気になっていたBRZに着目し、ディーラーに何度か試乗に行った際に、素敵な出会いがあったという。
「元BRZオーナーでとても良いディーラーマンに出会って『この人から買いたい!!』と思いました」

こうしてゆかりさんが購入したのはディーラー中古車の2013年式スバル・BRZ。マニュアルミッションのSグレードだ。しかし、当時のゆかりさんは冒頭でも触れたように、購入してからしばらくは走っていてもその楽しさがイマイチわからなかったのだとか。
そんなゆかりさんのカーライフに変化をあたえてくれたのも、BRZ購入の後押しをしてくれたディーラーマンだったという。
「その方が、BRZの走らせ方とか、このパーツを変えるとクルマの挙動やフィーリングがこう変化するとか、いろいろ教えてくれたんです。それが面白くて『もっとこのクルマのことを知りたい!』と、どんどんハマっていきました。その人には今でも感謝しています」

パーツを交換したり装着したりするたびにBRZが応えてくれることを実体感したことで、すっかりハマっていったゆかりさんだが、当時の沖縄ではまだ86やBRZに乗っている人が少なかったという。
しかし、もともとバイク時代からツーリングが好きだったゆかりさんは、仲間を求めてインターネット上の掲示板に書き込んだことで、もう一つの運命的な出会いを果たすことになる。それが、現在、いっしょに86オーナーズクラブを運営している嘉陽(かよう)さんだ。

「2017年の第1回ツーリングがすべての始まりですね。嘉陽さんと掲示板を通して出会い、実際に話したときは、感覚が一緒で同盟意識が生まれたような感じでテンション爆上がりでした。そこからは怯むことなく突進できるタイプの私がオーナーさんをナンパしまくって、嘉陽さんがリーダーとして沖縄トヨペットの方と関係を築いたり、オーナーズクラブのパンフレットやノボリを作ったりと立ち回ってくれて。そうしてできたのが『沖縄86&BRZ+owners Club』です」

オーナーズクラブを立ちあげた現在は、数ヶ月に1回の頻度でメンバーとツーリングに行くようになったのをはじめ、ジムカーナや練習会などにも参加。さらにはオーナーズクラブとして『モータースポーツマルチフィールド沖縄』に広告を掲示したり、マルチフィールドを活用したイベントを行ったりと精力的に活動。ちなみに、クラブのメンバー人数は120人にのぼるという。

「私にたくさんのいい出会いをさせてくれるのがこのBRZです。すごく助けられているし、視野も知識も人間関係も広げてくれくれました。私、実はオーナーズクラブの活動を始める前は、沖縄の名所や観光地を回ったりすることもなかったんです。でもメンバーとツーリングを通して沖縄の広がりを知ることができました。それにこのクルマを持つ前は、ボンネットも開けられないくらいクルマについて無知だったんですよね。でもクラブで素敵なメカニックさんたちと知り合うこともできて、今はすごく助かっています。そのどれもが、このBRZに乗ったからなんですよね」

『自分でできる範囲以外のカスタマイズはしない』というポリシーを持ちつつ楽しんでいるというゆかりさん。
「じぶんでラッピングをしているメンバーさんがいて『ドアを黒くしちゃおうぜ』というノリでやってみました。黒を選んだのはサーキット走行でゼッケンナンバーが見えやすいようにと考えたからです。それよりも本命はフロントバンパーのほうで、グリルやエアダクトをさりげなく迷彩でラッピングしているんです! これは傷つけたのをカバーするためにやったんですけど、雨で汚れているみたいだねって言われちゃいます(笑)」

さらに彼女が一番衝撃的だったというカスタムが、TRDのドアスタビライザー。
「コレを付けたことで、私はパーツでクルマが変わるんだということを体感できたんです。ボディ剛性を高める効果があるというパーツなんですけど、カーブで自分の体とクルマが一緒に動いてくれるような感覚を味わって、1万円ちょっとでこれだけ変わるなんてすごくおもしろいなって」

いちどカスタムのおもしろさに目覚めると、どんどんいじりたくなりそうなものだが、ゆかりさんは違った。
「まわりのみんながクルマをカスタムしているのを見ていると、めちゃくちゃ心が躍ります。でも、どんどん沼にハマってしまうだろうし、メーカー側が『これで挑戦しよう』と世に出した気持ちを大事にしたいという気持ちもあるので、このスタイルでどこまでいけるかやってみようっていう思いがあるんです」

これだけBRZをリスペクトしているゆかりさんだけに、兄弟車である86に乗りたいと思ったことはないかと伺ったところ「同じクルマであっても、やっぱり仕上げがBRZのほうが好きです。もともとスバルのエンジンが本気で好きでしたし、それにシートのフィット感が違った感覚があって、私はBRZのほうが楽に感じたんですよね」とのこと。

そんなゆかりさんには、オーナーズクラブのみんなといっしょに今後やってみたいことがあるという。
「コロナ禍の前にオーナーズクラブで本州に行って峠を走ろうという企画をしていたんですが、できなくなってしまったんです。それと、沖縄でも観光を目的としたツーリング企画をしてみたい。大好きなクルマで観光ができたら楽しいのではって思うんです。私は人が喜んでくれることで活力になるので、メンバーが楽しめるようなことがしたいですね! ただ、メンバーから『宇野さんが本当に楽しいと思うツーリングをやってください』と言われてからは、自分の好きにやっていいんだって思えるようになりましたけど(笑)」

「私、BRZの話をしている時が一番キラキラしていると言われます。それが今の自分の生き方なのかなと思っています。これまでは8万キロオーバーのクルマを持ったことがないのですが、BRZは日常的に乗っていて年間2万キロ、これまでの走行距離はすでに16万キロになろうとしています。このBRZは、未熟な私の世界を広げ、成長させてくれる相棒なので、この先も今の形を保ちつつ可能な限りたくさんの繋がりをもって、心踊る時間をシェアしたいです」

スバルBRZというたった1台のクルマとの出会いが、彼女の沖縄での日常生活を素晴らしい出会いに満ちた充実したものへと変化させた。しかしそれはきっと、彼女のスバル車やBRZをリスペクトする想いが、同じ気持ちを有するひとたちの心の琴線に触れたからに違いない。ゆかりさんが大事な相棒と共に広げていく新たな世界が、楽しみだ。

取材協力:オリオンECO 美らSUNビーチ

(⽂:西本尚恵 / 撮影:土屋勇人 / 編集:GAZOO編集部)