“遊んだ人の勝ち”のキャッチコピーを体現! 20年来の相棒ビートは自分そのもの

  • GAZOO愛車取材会の会場である福井大学 文京キャンパスで取材したホンダ・ビート(PP1型)

    ホンダ・ビート(PP1型)


『遊んだ人の勝ち。』
これはホンダビート(PP1型)が誕生した時にCMで使われたキャッチコピーだ。
そして、まるでそれを体現したようなビートライフを過ごされている方が『ヒゲメガネ』さんだ。
「もともとカッコ良かったビートに自分の好きなものを詰め込んだ結果、このスタイルに落ち着きました」と話すヒゲメガネさんは、20年乗り続けているこのビートで、一体どんな楽しみ方をしているのだろうか?

スーパーカーブームで盛り上がっていた子供時代には、ガチャガチャでスーパーカー消しゴムを集めて楽しんでいたというヒゲメガネさん。しかし、最初の愛車を持ったのは25~26歳の頃と、思いのほか遅咲き。地元の福井に戻ってきたタイミングだったという。

「その頃はF1に影響されていて、カッコ良かった5代目シビックのSiRを買おうかなと思ったんですけど、友達から『AT車だと女の子と手を繋げるよ』とのアドバイスを聞いて、AT仕様のシビックVTiに3年くらい乗りました。まあ、まだ20代だったのでね(苦笑)。その後、無事彼女(後の奥様)ができて、彼女がクルマを買うというので色々見に行ったんです。その時にクラシックなレザーシートやステアリング、ウッドパネルがカッコ良かったローバー114に決めたのですが、僕はたまたまその隣にあったローバーミニが気になって。可愛いしシンプルで、僕からするとこれ以上触りようのないデザインでしたから。それで結婚してからローバーミニ メイフェアを買いました」

実はヒゲメガネさんのお仕事はメガネフレームのデザイナー。そのため愛車に関しても、運転の楽しさと同じくらいスタイリングやインテリアデザインへのこだわりを重視しているのだ。

「ローバーミニはマニュアル車で、トラックのような大きなハンドルで重ステです。しかもギヤも入りにくくて色々苦労したんですが、それがおもしろくて5~6年乗りました。乗り換えようと思ったのはクラッチトラブルが酷くなったからですね。直す選択肢もあったのですが、まとまったお金が入ってきたタイミングだったので買い替えることにしたんです。そんな時に思いだしたのが、20代前半の頃に大阪で仕事していた時によく見かけた、天神橋筋に路駐されていたロードスターやビートだったんです。当時、これらをカッコ良いなと思っていたのを思い出して、ビートを探し始めました」

そして中古車情報誌で、大阪にシルバーのビートを見つけたヒゲメガネさん。現車を見に行き『これやな』とピンときてそのビートを購入。2004年、36歳の頃だった。
このホンダ・ビート(PP1型)は、1993年式のマニュアルミッション車で、購入時の走行距離は3万6000kmであった。

そしてここから、デザインにこだわるヒゲメガネさんの本領が発揮される。なんと彼は納車されるクルマを引き取りに行ったその足で塗装屋さんに向かい、全塗装を依頼したのである。ショーカーやレース車両でもない限り、購入後すぐに全塗装する人もそういないのではないだろうか。

「ピンときて購入したのは良かったんですけど、正直シルバーがあまり好きではなかったんです。それですぐに、よりシンプルでカッコ良いグロスブラックに全塗装してもらいました」

それから20年の間に、外装から内装までヒゲメガネさんのこだわりパーツが少しずつ追加され、現在の個性的なビートが誕生した。

「外装は純正ビートのシンプルデザインが気に入っていたので、エアロパーツは付けていません。ボディに散りばめられているステッカーは『AKIRA』に登場する主人公のオートバイに貼られていたステッカーをイメージして、自分の好きなレトロ系やアーミー系のステッカーをPCでデザインし、拡大して貼っています。ホイールはワタナベが似合うなと思ってネットオークションで購入し、シルバーだったものを刷毛で艶消しブラックに塗りました」

さらに内装も、外装以上に見逃せないポイントが盛りだくさん。特に目を引くのが、白い筆文字が書かれた紺色の布地の内張りや助手席のシートカバーだ。

「実はこれ、元は前掛けなんです。内装用になにか作りたいと思った時に、安っぽいのが嫌なので厚めの生地の前掛けを本染めしてもらい、それに僕が考えてPC上で作った文字データを提供し、このオリジナル前掛けを作ってもらいました。10枚単位で発注するんですが、ビート仲間には大人気で、結局仕入れ値で仲間にお譲りしながら3〜4回は再生産しましたね(笑)。おなじ生地とデザインでドアの内張りも作りましたが、こちらは布サイズが足りなかったので、特注で作ってもらったものを貼っています」

さらにシフトノブブーツや斜めがけバッグも、この前掛けを使って自作したものだという。そしてこの前掛け以外にも、ひと手間かかったこだわりカスタムがいくつも存在する。
「シフトノブは『機械を動かしているぞ』という感覚が欲しかったので、ステンレスのパイプをカットして、それに丸いグリップを合わせて調整した自作です。夏熱くて冬冷たいのが難点ですが(笑)」

  • (写真提供:ご本人さま)

「またブリッドのフルバケットシートは、新品で購入して、すぐに背面をオレンジのスプレーで塗装しました。そして、ステッカーの配置をPC上でシミュレーションしてから貼って、オリジナリティを出してみました」

  • (写真提供:ご本人さま)

そしてこうしたひと手間加わったオリジナルパーツの中でもヒゲメガネさんが特に気に入っているのが、ボディサイドに貼られた『Honda』のエンブレムだ。

「元はプラスチックにクロム塗装されていたものをネットで購入して貼っていたんですが、どうせなら本物っぽさが欲しくなって。そこで、アルミ板を買ってきて寸法を取ってPC上でデザインし、電動鋸で切り出したんですけど、とにかく大変な作業でしたね」
当時を思い出したのか遠い目をしながら話してくれたが、ご自身が求めるクオリティに対しては一切妥協せず、その発想力で必要とあらば自作してしまうところが、ヒゲメガネさんの凄さだろう。

そんなこだわりのビートだが、20年も乗り続けているため、やはり消耗パーツの交換やトラブル箇所の修理対応なども必要になり、これまでも大きな修理や補修を行っているという。

「全塗装から14年経って表面のクリア塗装が剥がれてきたんです。そこでクリアを剥がしてマットブラックに全塗装し直してもらいました。マットにしたのはクリアを塗らない分安くすむかなと思ったからですが、とても気に入っています。同時に、雨漏れがひどかったビニールレザーの幌もキャンバストップに交換してもらいました。それまでは新聞紙とバスタオルを敷いていたんですけど、交換したら雨漏りがピタッと止まったので、それはそれは快適になりました!」

彼によるとこの他にも腐って穴が空いたマフラーの交換やECUの不調など、ちょこちょこ修理をしながら現在まで乗り続けている状態なのだとか。そしてそんなトラブル時に彼を助けてくれるのが、ビート仲間だという。

ビートに乗るまではクルマの整備については素人同然だったというが、ビート仲間に色々教えてもらうことで少しずつわかるようになり、今では日々のメンテナンスや修理はほぼ自分でこなせるようになったそうだ。「自分で面倒を見ているから余計愛着が湧くんですよね」と嬉しそうに話してくれた。

  • (写真提供:ご本人さま)

そんなヒゲメガネさんは、休みの日にこのビートで行くドライブが今一番の楽しみなのだという。

「ビート仲間やSNSで繋がった人たちとドライブにいったり、ミーティングに参加することもあります。特にドライブは大好きで、岐阜や愛知、滋賀に京都、石川に富山くらいまでなら近場感覚で出向いています!」

とってもアグレッシブなヒゲメガネさん。そんな彼に、最後にこのビートについての想いを改めてまとめていただいた。

「元々シンプルでカッコ良かったところに、自分の好きなものを詰め込んだこのビートは、僕にとって自分そのもので、仕事以外で唯一の自己表現なのです。車体に貼った『ひげもん』やTシャツにも描いた『HIGEMEGANE』などのオリジナルキャラも、このクルマで自己表現をしたいと思った時に、いろんな人にウケてもらえたらと思って作ったものです。
だからこそ、そんな自分の“好き”が詰まったこのクルマで出かけるのが一番楽しいんですよね。もちろん、これからも乗り換えるつもりもありませんよ!」

自分の分身でもあるビートで、ハイクオリティな自作カスタムや自前のトラブル修理、アクティグなドライブライフを20年間楽しんでいるヒゲメガネさん。

改めて思う。やっぱり彼は“楽しんだ人の勝ち”というキャッチがピッタリなオーナーだ。そしてこれまでもこれからも、充実したビートライフを送っていくに違いない。

(文: 西本尚恵 / 撮影: 清水良太郎)

※許可を得て取材を行っています
取材場所: 福井大学 文京キャンパス(福井県福井市文京3-9-1)

[GAZOO編集部]