オープンカーで広がる友情と支援の輪。還暦から始まったロードスターとのエンジョイカーライフ

  • GAZOO愛車取材会の会場である福井大学 文京キャンパスで取材したマツダ・ロードスター RF VS(NDERC型)

    マツダ・ロードスター RF VS(NDERC型)


還暦を機に“真っ赤なロードスター”に乗り換えたという『K&N』さん。
クルマ好きだった父親の影響で、幼少期からクルマに親しみ、父親と折半して買ったというスカイラインジャパンや、リトラクタブルライトのクルマ欲しさに選んだというセリカXX、そしてプレリュードなどを乗り継いできたという。

「僕は昔からリトラクタブルライトのクルマが好きなんですよね。プレリュードは特に気に入って6年乗っていたんですが、阪神淡路大震災の後に凸凹の酷い道で乗り続けていたせいもあってか、駆動系の故障が発生してしまい泣く泣く廃車にしたんです。その後は、ファミリーカーとしてビスタやポロ、マーチなどを乗り継いできたのですが、プレリュードに装備されていた電動サンルーフが気に入っていて『今度は屋根が開くクルマが欲しい』と思っていたこともあって、2008年にファミリーカーとは別に、自分専用の愛車としてMR2(SW20型)のTバールーフを中古で買いました」

このMR2には10年以上乗り、走行距離は23万kmまで達したそうだ。しかし、それだけの年月や距離を乗っていると、経年劣化によるトラブルや消耗部品の交換なども増えてくるのは必然で、乗り換えを決意し次に乗るクルマを吟味し始めたという。

「2014年から探し始めて、20台以上を試乗してきました。そんな中で一番心惹かれていたのが、初代のNSXでした。ただ、NSXは車検やメンテナンスだけでも3ケタ万円はあたりまえと聞いて『それなら十分新車が買えるやろ』って思い直しまして。僕はやっぱりリトラで2ドアのオープンカーが理想的だなと思い、その条件で探し直しました」

「その結果は…リトラクタブルライトではなかったけれど、それ以外は理想的だったND型のロードスターを買うことにしました。リトラクタブルライトのNA型ロードスターという道もあったとは思いますが、結局は年式が古いクルマなので、維持していくのが大変でしょうし。それで新型を買うことにしたんです」

こうしてK&Nさんが購入したのは2019年式のマツダ・ロードスター RF VS(NDERC型)。
通常の幌(ソフトトップ)モデルではなく、電動開閉式のメタルハードトップを持つ『RF』を選んだのにはいくつか理由があるそうで「幌のモデルは1.5リッターエンジンなのに対してRFは2リッターエンジンを搭載していて、試乗した際にトルク感に余裕を感じたんですよね。しかも2018年の第3次改良で初期の158psから184psまでパワーアップもしていましたしね。それに降雪エリアにある妻の実家に帰る際には、クローズドルーフと同程度の車内環境が欲しかったというのもあります。屋根を開けている時も閉じた時もMR2に似ていると感じたのも選択理由のひとつでしたね」とのこと。
約13秒で開閉可能というスピードや、インフォメーションメーターに表示される開閉アニメーション画像などのギミックもお気に入りだという。

「僕がこれまで乗ってきたクルマはすべてマニュアルミッション車で、今はタクシードライバーをしているのですが、仕事で使っているクルマも会社に4台しか残っていないマニュアル車に好んで乗っています。だからマイカーも当然マニュアル車を選びました。それと、このクルマを買った時にちょうど還暦を迎えたので、お祝いの赤いちゃんちゃんこに倣って、ボディカラーも赤にしました。マツダの赤って、光の当たり方で色が変化して見えて上品なんですよね。僕みたいなおっちゃんが乗っていてもあんまり嫌味じゃないでしょ(笑)」

そうお茶目な表情で微笑んだK&Nさん。そんな氏は、実際にロードスターに乗って『すべてが期待通りで、ここが嫌というところは探さないといけないレベル!』と大絶賛。

「自分の手足の動きに連動して走ってくれるんですよね。MR2の時もそうだったんですけど、操ってあげた通りに、その挙動を示してくれる。そして、例えばリヤタイヤが滑りそうになれば、その直前に教えてくれるし、パワーを掛けたら掛けた分だけちゃんと走る。それにノーマルシートでも腰に負担が掛からないので、いくらでも乗っていられるんですよ。あ、あと乗る時は当然オープンですよね!」

こうして、抜群の操作性と開放感あふれるロードスターの楽しさにすっかりハマったK&Nさんは、ND型ロードスターに関する書籍を片っ端から集め始めた。さらにSNSも積極的に活用して、ミーティング系イベントにも精力的に参加することで、全国各地に友人を増やしていく。

「仕事が休みの日には、近所だけじゃなくて、山陰地方や九州など全国のクルマ仲間に会いに出かけることが多いです。ロードスターに限らず、変わったクルマに乗っている方もいるので、そういう方には『ぜひ見に行かせてください。僕のロードスターにも乗ってください』といった交流をすることもあるんですよ」

K&Nさんは人と交流するのが大好きなのだ。そしてそんなK&Nさんが参加するさまざまなイベントの話を伺う中で、まさしく彼にピッタリなイベントだなと感じたのが『ロードスターエクスペリエンス』という、助手席体験イベントだ。

『ロードスターエクスペリエンス』は、ロードスターオーナーが、まだロードスターに乗ったことのない方を助手席に乗せてドライブして、その良さを体験してもらうという趣旨のイベントだという。K&Nさんは横浜と神戸で開催されたその両方で、ロードスターのオーナードライバーとして参加し、自分のクルマの助手席に体験希望者を乗せて楽しませたのだという。
「本業はタクシードライバーなので二種免許も持っていますし、助手席にお客さんを乗せて、走って、楽しませるのが得意なんです(笑)」。そう話すK&Nさんの表情はとても活き活きしていたことからも、とてもやりがいと楽しさを感じるイベントだったことが窺い知れる。

それ以外にも、ひとり親家庭の子供たちや親御さんを乗せ、飾り付けをした愛車で街をドライブする『ロードスターサンタドライブ』などにも参加するなど、愛車のロードスターで自分以外を楽しませるイベントに精力的に参加していることからも、K&Nさんの優しい人柄が窺える。

そしてそんな氏は、1995年に阪神淡路大震災でご自身が被災した経験から、被災者支援にも積極的で、能登半島地震の現地支援にもこのクルマで駆けつけたそうだ。さらに防災士の資格も取得し、月に1回、災害時のノウハウなどを伝えるプレゼンテーション活動なども積極的に行っているという。

「能登半島地震の時は能登町におばさんが住んでいたこともあり、すぐ支援に行くことにしました。その時にこのクルマで向かったんですが。路面が悪い中、現地は当然SUVのような悪路に強いクルマが多いですよね。その中でロードスターは異質だったんでしょうけど、僕にとってはなんの問題もありませんでした。というのも、阪神淡路大震災の時はプレリュードに乗っていたんですけど、その時のアスファルトの路面はもうグッシャグシャになっていたんです。その中で下まわりに注意しながら走っていた経験を活かせたので。災害時のノウハウを活かして、助けられるものを助けたいという意識は強いと思います」

新車で購入して早6年。走行距離はすでに8万3000kmに達するという。
「できればこのクルマを、僕の人生の“終のクルマ”として大切に乗り続けていきたい」と話してくれた。それはこのロードスターという相棒がもたらしてくれた幸せが、走る楽しさ以上のものであったからであろう。

その答えを込めて、K&Nさんは最後にこう締めくくってくれた。
「このクルマが繋いでくれた、関東から九州までの友人が、僕の何よりの財産です」

(文: 西本尚恵 / 撮影: 清水良太郎)

※許可を得て取材を行っています
取材場所: 福井大学 文京キャンパス(福井県福井市文京3-9-1)

[GAZOO編集部]