通勤の相棒として手に入れたコペンとの、これまでの20年とこれからの20年

  • GAZOO愛車取材会の会場である大分大学 旦野原キャンパスで取材したダイハツ・コペン(L880K型)

    ダイハツ・コペン(L880K型)


平成のABCトリオ(マツダ・オートザムAZ-1、ホンダ・ビート、スズキ・カプチーノ)に次ぐ軽スポーツとして、2002年に鳴り物入りでデビューしたダイハツコペン
曲線を多用した可愛らしいルックスと、DOHC 4気筒ターボの走りは、軽スポーツを待ち望んでいたファンからの支持を得て、発売開始と同時に大きな反響を呼んだモデルだ。
加えて、電動で開閉するアクティブトップを軽自動車ながらに標準装備し、オープンの開放感とクローズドボディの安心感を併せ持っていたことも人気となったポイントのひとつと言えるだろう。

そんな2006年式ダイハツ・コペン(L880K型)に、新車から乗り続け、もうすぐ20年になるという『桂秋』さん。コペンとの出会いは、通勤用のクルマを買い替えようと検討しているタイミングだったという。

「もともとはトヨタのミッドシップ車が好きで、AW11型とSW20型のMR2、そしてMR-Sを乗り継いでいました。しかし、子供が生まれたことでファミリーカーの方を大きくしなくてはならず、それなら通勤車はコンパクトなモデルに乗り換えようと考えたんです。そこで候補となったのがコペンでした。通勤車なので2座のMTでも問題はなく、スタイリングも丸くて可愛い。もちろん家族もみんな賛成してくれたんですが、その流れからボディカラーも家族の総意で黄色に決まりました。本当は赤が気になっていたんですけどね(笑)」

スタイリングやパッケージに対する趣向は完璧にマッチ。それまで乗っていたMR-Sと比較するとエンジン出力も大きく変わってしまうが「そもそも通勤車両ですから、パワーやスピードはそれほど求めていませんでした。逆に660㏄にしてはよく走ってくれるなって思えるくらい。通勤距離が往復で70kmあったため、この移動を楽しめるクルマであることが重要だったんです。その点でコペンは軽快に走ってくれるから、気持ち良く毎日の通勤を楽しむことができましたよ」とのこと。

毎日の通勤路であっても、ドライブするワクワク感を演出したくなるのはスポーツカー好きの宿命。通勤で使用することを前提として狙いを定めたコペンであったが、やはり“楽しむ”といううえでMTは欠かせない要素だったという。
朝夕の渋滞に巻き込まれることを考えると、一般的にはATの方が気疲れなく便利と感じるのだが、これまでの歴代通勤車両もすべてMTスポーツだったというだけに、当初からATという発想はなかったのだとか。

また、新車からおよそ20年もの間乗り続けても、常に新鮮な気持ちを維持し続けられるのは、少しずつカスタマイズを行っているからというのもあるようだ。
たとえばマフラーは、気持ちの良い排気音を奏でることで運転をより楽しくアレンジしてくれるアイテム。耳から伝わる音質が変わることで満足感は大幅に変わってくる。

また、桂秋さんがコペンの購入を考えていたタイミングでは、アルティメットエディションにBBSホイールが純正設定されていたのだが、あえて標準グレードを選び、デザインの異なるBBSのRG-Fモデルを装着したという。
さらに、普段はこれとは別のインチアップホイールを装着していて、たまに履き替えることで異なる装いを楽しんでいるのだとか。

毎日の通勤と、休日のドライブなどに利用していることで、走行距離は18万5000kmにも及ぶ。とは言っても、その姿は経年と過走行を全く感じさせることなく、本当に大切に扱われてきたことがわかる艶やかさだ。

「実は、大阪でコペンを得意とするお店へ依頼し、3か月かけリフレッシュしてもらったんです。タイミング的にはコペン誕生から20年、生産終了から10年の節目だったこともあり、パーツが揃ううちにシャキっとさせようと思ったんです。ただ、オーバーホールのためにエンジンを分解してみると、スラッジの付着も少なくメタル類もキレイな状態で、大きく問題になりそうなところはなかったんですよ」

リフレッシュに際して、フロント周りのペイントは純正色で再塗装。ドア以降はヤレがなかったこともあり、工場出荷された時のペイントをそのまま残しているが、しっかりと調色されたペイントはその差も見分けがつかないほど。また、紫外線による劣化が気になる樹脂製のヘッドライトは、新品パーツでリフレッシュ済みである。
内装についても、純正MOMOステアリングなどを新品に交換したそうだ。

「初代コペンは、今ならまだほぼすべてのパーツが新品で手に入ります。しかし今後いつかは製廃になってしまうものが出てきますので、替えられるパーツはゴム類や内外装を中心に交換しました。20年乗ってきて、今後20年気持ちよく乗るためのリフレッシュですから、エンジンルームのパーツ交換やアンダーフロアの塗り直しなど、細かいところまで手を加えてもらいましたよ」

今回のリフレッシュでは、メンテナンスが必要な部分に加え予防的な整備も行い、いくつかの部品のストックも始めたという桂秋さん。
というのも、実はコペンとは別にレストア中の旧車を保有しているとのことだが、部品の欠品に大変悩まされ、なかなか復活を果たせず、その反省を踏まえての行動だという。

こうして新車当時のコンディションを取り戻したコペンだが、現在は通勤車のポジションをカローラツーリングに譲り、ガレージの中で大切に保管しつつ、週末になればドライブに持ち出して軽量ボディとDOHC 4気筒ターボの走りを満喫しているそうだ。

ちなみに、電動でハードトップが格納されるアクティブトップは、コペンオーナーの間でもトラブルが起こりやすいと言われている部分。しかし、桂秋さんのコペンは今回のリフレッシュでは交換する必要がなかったほど正常なコンディションだった。

オープンカーオーナーの多くは、ルーフが開いた状態こそ、そのクルマの完成したスタイリングと語る。
桂秋さんにとってもこの考えは正解というものの、ボディと同様にラウンドした屋根が閉まった状態も可愛らしく気に入っているのだとか。つまり、ルーフの有無に関わらず、全方位どこを見てもコペンのスタイリングは完璧と思えるほど、所有からもうすぐ20年になる現在でも惚れ込んでいるというわけだ。

リフレッシュを行ったとはいっても、エンジンをはじめとした各部のコンディションを良好に保てているのは桂秋さんの管理がしっかりしていたからこそ。乗りっぱなしではなく、適宜最適なメンテナンスを行い、それらの明細などもしっかりとファイリングすることで、どこでどんな整備を行ったかを常に把握できるようにしているのだ。このファイルには納車前の輸送タグまで残されているというから、まさにこのコペンの誕生直後からの歴史が詰まっていると言えよう。

「コペンの走行距離が18万kmを過ぎ、通勤車両をカローラツーリングにバトンタッチしました。しかしリフレッシュしたコペンはとても楽しく、週末を中心にしっかり走らせています。今回のリフレッシュは広範囲にわたっていますので、本来ならコペンを別の個体に替える方が適切だったのかもしれませんし、普通ならそうするとも思いますが、私のコペンをこれからの20年も元気に乗り続けるため、決心してよかったと思います」

MT、ガソリンエンジン、ターボ、オープン。コペンというクルマは、桂秋さんにとっての“欲しい”を総まとめした理想の1台だという。「世の中にクルマは色々あるけど、やっぱりコペンがイチバン」と言わしめる魅力がここには詰まっているのだ。
もっとも、桂秋さんにとってのコペンはこの個体ただ1台であり、コンディションの良い高年式かつ低走行車に乗り換えるという発想は毛頭ない。だからこそ、20年後もこのコペンで走り続けるためのリフレッシュや日々のメンテナンスに、惜しみのない労力を捧げているのだ。

桂秋さんいわく「20年はちょうど半分の節目」ではあるものの、この調子で付き合っていけば20年と言わず30年、40年と開放感あふれる軽快な走りを楽しんでいけるのではないだろうか。

(文: 渡辺大輔 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所: 大分大学 旦野原キャンパス(大分県大分市旦野原700)

[GAZOO編集部]