クルマもバイクも旧くなるからこそ味が出る!? 年代物のブルーバードと共に過ごす淡路島での毎日
「クルマもバイクも旧いモノが好き」という小久保太郎さん。
故郷の淡路島で宿泊施設を営みながら、所有して20年以上という1951年のハーレーダビットソン、宿泊客にとってのお楽しみのアクティビティとなっている1955年のアメ車、それとともに愛してやまないのは1965年に販売されていたダットサン ブルーバード。
中古車市場でもほとんど見ることがなくなったまさにクラシックカーとも言うべき存在なので、故障とは常に隣り合わせな印象ですが……実際はどうなのでしょうか?
そんな、小久保太郎さん×ブルーバードのお話です。
――今回は小久保さんが所有するダットサン・ブルーバードについてお話を伺えたらと思っているのですが、もともと古いクルマがお好きだったんですか?
はい。もともと20代のころに僕、大阪のアメリカ村で古着屋さんを経営していたんですよ。仕事でアメリカに古着を買い付けに行くことが多かったので、服から旧いものに興味を持ちだして。それからバイクやクルマも旧いものに惹かれるようになりました。
――もともとクルマはお好きだったんですか?
好きでした。自分の愛車を選ぶときって普通は使いやすさや生活環境に合わせて車種を選ぶと思いますが、僕は「自分のスタイルに合うクルマって何だろう?」という観点でクルマを考えてきたんですよ。
クルマから降りて、5歩ぐらい離れて後ろを振り返った時に僕が「カッコいいな」って思えるクルマに乗りたいというか。
――そんな小久保さんのお眼鏡にかなったのが、ブルーバード?
最初はBMW 02シリーズの2002を狙っていたんですよ。ちょっと小さ目で背丈のあるクルマが僕の好みで、2002とかベンツだったら昔の300Eみたいな形のクルマがいいなと思って、いろいろ調べていくうちに今のブルーバードにたどり着いたんです。
――でも、これだけ旧いクルマだと中古車市場ではほとんど見つからないのでは?
そうなんです。なのでヤフオクで手に入れました。
――ネットオークションでクルマを買うって不安はありませんでしたか?
ありましたね。中古車は何台か乗りましたが、実物を見ないでネットオークションでクルマを買うのはこれが初めてだったので。
ただ、僕はクルマよりもバイクに乗っている方が長くて、旧いバイクの場合は「車体は素材」として購入して、あとは自分で仕上げていくというケースが割と一般的なんです。
なのでクルマもその感覚で見ていて、ネットにupされている写真の情報や出品者の方に連絡してコンディションを確認して、「現状でも走れる状態だし、こちらで少し直せばイケる」って思ったので購入を決めたんです。当時の売値で45万円、即決価格でも65万円とかなりリーズナブルだったのも理由の一つでした。
――状態うんぬんよりも、ブルーバードを手に入れるのが第一だったんですね
はい。僕は周りにクルマ屋の知り合いとかもたくさんいるから、僕が購入してから手を入れて万全の状態に持っていくことはできるというアテがあったというのも手を出せた理由ですね。
――オークションで落とした直後のまだ手を入れていない“素材”の状態のブルーバードを見て、どんな第一印象を抱きましたか?
前の所有者さんが関東の方だったので神戸まで陸送してもらったんですが、引き取り先の駐車場から国道に出て自宅に戻ろうということで少し走った時に「普通に走れるな」って。僕の予想よりいい状態だという印象でした。
ただ、神戸から当時住んでいた尼崎まで戻る途中でコラムシフトの3速ギアが入らなくなるという不具合が起きて。乗り始めて1時間で洗礼を受けました(笑)。
――最初からハードな洗礼を受けましたね(笑)。それだと心配が先に立って楽しく乗れないのでは?
確かに突如トラブルが起こるというのは何回もありましたし、最初のころはそうした心配が先に立ちました……。
でもこのクルマって買った当時はセカンドカーの扱いだったんですよ。毎日の通勤で使うとかではなく、週末楽しく乗れればいいなという感じだったので近所を走って不具合が起きたら、その都度直していこうという感じで2年くらい乗っていました。
――多少の覚悟はあったと思いますが、故障続きだと嫌になって手放したくなりませんか?
確かに故障するとしんどいですが、そこまでは思わなかったです。というのも、僕自身がバイクでそういう経験にはもう慣れていたというか。旧いハーレーにかれこれ20年以上乗っているので耐性が付いていたんでしょう(笑)。
購入した後、電気や点火系、ブレーキはメンテナンスしないと壊れるというのが植え付けられていました。だから故障して大変というよりも、直して乗った時の楽しさの方が強い感じでした。
――ハーレーに20年以上乗られたり、旧いクルマも丁寧に直して乗ったり……余談ですが小久保さん自身、周りから「根気強い性格」と言われることはありますか?
根気強いかどうかはわからないですが、1回ハマったら長いし、気に入ったものはずっと手放さないというところはあります。例えば映画も好きで年間で250本以上観るという生活を何年もしているし、料理や読書など20年以上続いている趣味がいくつかありますよ。
――現在は所有して7年ほどということで、少しずつクルマも馴染んできたところでドライブに行く範囲も広がるかと思いますが、お気に入りの場所はありますか?
尼崎に住んでいたころは丹波篠山方面によく行きました。数年前に故郷の淡路島にUターンしたので今は日常の足ですよ(笑)。
というのも、購入した当時はセカンドカーだったんですが消耗品とかを全部新しくして長距離乗っても問題なくなったタイミングでファーストカーに格上げしたんですよ。意外と燃費もよくて14km/Lも走ってくれるので、助かっています。
――このクルマを買った時の周りの反響はどうでしたか?
クルマを引き取りに行って、すぐにナンバー登録したんですがその時に「昔乗っていたよ」とか「好きだったんだよね、このクルマ」みたいに話しかけてくるおじいさんはたくさんいましたね(笑)。
横を走っているクルマから「いいね!」みたいに合図されることもあるし、友達にもこういう旧いクルマやバイクが好きな子が多いので「ええの買ったなぁ!」みたいな感じで、いい反応が多かった気がします。
――そういう反応って正直、悪い気しないですよね(笑)?
やっぱり気持ちいいですよね(笑)。周りの人から声を掛けられる率で言えば、ハーレーよりも遥かにブルーバードの方が多いし、反応もいい。きっとバイクよりもクルマの方が好きな人も多くて、世代の裾野も広いのかな?って気がします。
あとクルマ好きの人は優しいですよね。
――優しいというと……?
例えばバイクだと、ハーレーに乗っていても販売された年代や車種によっての棲み分けがハッキリしていて「○年代からのハーレーは旧車じゃない」みたいに分かれやすいんですが、クルマは年代どころか車種やメーカー、生産国とかの共通項がなくても「クルマが好きなら仲良くなれる」みたいな感じで優しいなって僕は思いました。
――クルマ好きならではの文化ですね。毎日乗っていると、走行距離もだいぶかさむのでは?
購入当時は5万5000kmだったんですが、昨年の冬場でメーターが1周(10万km)して、ゼロに戻っちゃいました(笑)。今メーター上では2000kmくらいなので、トータルしたら10万7000kmです。
――購入当時は故障に見舞われていたと言いますが、今はどうですか?
今はほとんどないですね。ブレーキパッドがすり減るとか消耗品を交換するケースはありますが、走れなくなるような大きな故障はないですね。部品とかも探せば見つかることが多いし、トラブルとはかなり疎遠になりました。
――予想していたよりも安心して乗れていますね。では、改めて小久保さんがこのクルマで特に気に入っているところは?
やっぱりスタイリングですかね。この時代(1960年代)のクルマって流線型ではなくて、無駄なアールやプレスが入っていたりしてクルマの造りが贅沢なんですよね。小さいボディでもそこがカッコいいなって。
あとはメッキパーツもたくさん使っていたり、手間がかかっている造りに惹かれます。太平洋戦争の敗戦から日本が復興して右肩上がりの時期で、国全体が盛り上がっていたというのを感じられる時代ですね。
――このクルマで今後予定していることはありますか?
僕が所有しているブルーバードは1300ccですけど、ブルーバードにはSSSというハイグレード仕様があるんです。それには当時最速と言われたフェアレディと同じエンジンが積まれていて、過日そのエンジンを手に入れたんですよ。
四国の愛媛県にこういう旧いクルマの整備をやっているお店があるので、そこにお願いしてエンジンを載せ替えたいなって思っています。
――では、ブルーバードは小久保さんにとってどんな存在ですか?
僕が免許を返納するまで乗っていられたら良いなと思ってますし、乗っていたいですね。僕がイメージする一番いいクルマの最上位がこのブルーバードなので、今後新たにクルマを手に入れてもファーストカーとして乗ることはないだろうなって思っています。
バイクはいまも所有する50年代のハーレーを乗っていきたいし、クルマならこのブルーバードとずっと歩んでいきたい。1日でも長く付き合えれば良いなぁって考えてます。
「クルマから降りて5歩離れて、振り返った時に『カッコいいな』と思えるクルマ」ということで選んだブルーバードへの思いを存分に語ってくれた小久保さん。
旧いクルマならではの苦労でさえもいとおしく感じられるほど、このクルマが気に入っているのがよくわかるし、クラシックなカーライフを存分に楽しんでいることが伺えます。
淡路島の海岸線を颯爽と駆け抜ける小久保さんのブルーバード……きっとこれからも絵になることでしょう!
【Instagram】
小久保太郎 さん
【Youtube】
淡路島 民宿「たんざ」毎日を楽しむチャンネル
【宿泊施設のHP】
淡路島 民宿「たんざ」
(文:福嶌弘)
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