「自分だけが知っている良さ」が嬉しい マツダスピードアクセラ



取材のために電話をかけると、第一声目が「僕が乗っているのはマツダスピードアクセラなんですけど、大丈夫でしょうか?メジャーなクルマじゃないから、もしかしたら誰かと間違ってらっしゃるのかなと思いまして……」だった「VALさん」。

というのも、クルマ好きの友人にも「マツダってこんなクルマ出してたんだ」と言われてしまうことがあるそうで……。

今回は VALさん× マツダスピード(MS)アクセラ の お話をお届けします。

―――上京して10年くらいになりますが、確かに街中で見かけたことがありません。だからこそ取材させて頂きたいと思い、ご連絡させて頂きました。

それを聞いて安心しました。ぜひ、お願いします!

ちなみに、乗っている僕もそうですが、街中でこのクルマとすれ違ったことは一度もありません(笑)。なにせ、発売当時から人気がなさすぎて、限定車みたいな数しか売れてないですからね。

でも、逆にそれが良いところだと感じているんです。特別感や希少性、あるいは「こんなクルマ見たことない」と言われるのが嬉しいといいますか。

―――実際、よく言われるのではないですか?

実はですねぇ……。販売台数だけ見れば希少車なはずなのに、見た目がthe大衆車だから珍しいことにすら気付かれないんです(笑)。

―――な、な、なるほど……。

とくに、僕のは初代ですからね。この次の型からボンネットに穴が空いて、ちょっと速そうな見た目になるから、そっちの方がMSアクセラのイメージが強い人が多いかもしれません。

でもね?だからこそ1番好きな箇所が、ボンネットなんです。このクルマって、見た目はファミリーカーなんですけど、264馬力で2.3Lターボエンジンを積んでいて、加速がすごく良いんです。

だから、普通に考えると、ボンネットに穴が空いていた方が排気効率は良いはずだし、実際にサーキットを走っている人は穴を空けています。でも、開発者はそれをしなかったんです。

真相は定かではありませんが、中身は尖っているのに、それを隠すようなデザインにしたかったんじゃないかなと思っているんです。

僕はそこに美学を感じているから、絶対にボンネットに穴を開けないし、カスタムはせずに、“普通”の見た目であることに拘っています。

ちなみに、この専用のボンネットだけじゃなくて、バンパーをコンパクトにしたりと、分かりづらいけどよく見ると凝ってるんですよ。

―――どうしましょう……。その話を伺って、ものすごくカッコよく見えてきました。

でしょう(笑)?
間近でじっくり見ると、写真だと気付かないラインがうっすら入っていたり、リアがぐっと張り出していたり、なのに顔はちょっぴり間抜けに見えて愛らしかったり。この絶妙なバランスを保っているクルマって、なかなか無いと思うんです。

そして、ハンドルを握ったら速いという、意外性の塊なところもポイントなんですよね。

子供の頃からラリーが好きだったので、乗用車っぽいのに速いクルマが昔から好きなのかもしれません。

―――実際、ハンドルを握るとどんな感じなんですか?

FF駆動で馬力もあるから、トルクステアでフロントヘビーで、かなり暴力的な加速をしてくれます。う〜ん、いわゆるじゃじゃ馬感はかなりありますね。

初めてのマニュアル車ということもあって扱いきれるか心配ではあったんですけど、こんな個性的なクルマはこの先登場しない!と思い購入に踏み切りました。

実際に走ってみると、子供の頃に憧れた“ミニミニ大作戦”や“タクシー”などに出てくる、ものすごい速度で、ぐあんぐあん横揺れしながら走っていく、あんな走りをしてくれます。

だから、箱根のワインディングロードを走っても面白くはないんですよ。どっちかというと、高速を流す方が楽しいです。

―――どこにドライブに行くのですか?

今年は特にいろんなところを走りましたよ!

ランティスやユーノスといった、世間的に見るとあまり売れていないマツダ車が集まる“5チャンネルミーティング”というのがありまして、そのミーティングに名古屋まで千葉から下道で8時間かけて2回行きました。

―――おおおお!それはなかなかですね。

そこで話題に上がるのが、世間的には不人気だったかもしれないけど、僕たちの愛車って「自分だけが気付ける良さがあるよね〜」なんです。

―――では、最後の質問です。VALさんが思うMSアクセラの良さは?

荷物も積めて車中泊もできる、よく見るとカッコよくて、普通だけどパワーがあって速いところですかね。

そして、1番好きなところは“自分だけが知ってる良さ”があるところです。

誰にどう思われようと、このクルマは良いクルマです。自慢の愛車です。
乗れば乗るほど、良いところが沢山あるんだから。

そして、それを僕だけが知っているというのも、ちょっと嬉しかったりするんですよ。
だから、これからも大好きなクルマであることは変わりありません!

そう話す声からは、MSアクセラに対する確かな愛情が感じられました。来年は、もっともっとたくさんドライブできるように、これからも大切に乗っていくとのことでした。

【Twitter】
VALさん

(文:矢田部明子)

MORIZO on the Road