オリジナルのまま残したい1/500の限定車 。1989年式トヨタ・ソアラ 3.0GT エアロキャビン(MZ20型)

「限定車」という響きは、いつの時代もクルマ好きの心をざわつかせる。

台数限定、期間限定、地域限定…。販売方法は異なるが、そのときに手に入れなければ、よほどのことがない限り新車で購入することは限りなく難しい。機会を逃したら中古車として市場に出てくるのをひたすら待つしかないわけだが、仮に人気モデルだった場合、常に市場のチェックをしていないと誰かに買われてしまう可能性が高い。そして、タッチの差で買い逃すたびに思うのだ。「あぁ、あのとき無理してでも買っておけばよかった…」と。もし、狙っている限定車があるとしたら、とにかく周囲の友人・知人のクルマ好きに「○○○○○の限定車を探している」と、事あるたびにアピールすることをオススメしたい。誰かがそのことを覚えていてくれて、いざというときに「耳寄りな」情報を教えてくれるからだ。

今回、取材させていただいたオーナーの愛車も「限定車」だ。意外にも、探しに探して手に入れたわけではなく、既に同型のクルマを所有していて、ふとした縁でこのモデルも手に入れることができたのだという。そのあたりの経緯をじっくりと伺ってみることにした。

「このクルマは、1989年式トヨタ・ソアラ 3.0GT エアロキャビン(MZ20型/以下、3.0GT エアロキャビン)です。手に入れたのは4年前、現在の走行距離は5万8500キロです。これまで1万2千キロくらい走りました。私はいま、49歳です。学生時代にさかのぼりますが、4年間、ガソリンスタンドでアルバイトをしていたんです。ちょうどこのソアラが現役の頃のことです。仕事上、さまざまなクルマに触れる機会がありましたが、なぜか2代目ソアラ、それも後期モデルが気になって仕方がなかったんです」

MZ20型ソアラ、いわゆる「2代目ソアラ」にあたるこのモデルは、1986年1月に華々しくデビューを果たした。華やかな雰囲気を纏ったソアラは、生まれながらにしてスポットライトが当たる運命を背負った存在なのかもしれない。さらに、電子制御エアサスペンションやイージーアクセスドア、スペースビジョンメーター、マルチコントロールパネルなど、いくつもの最新技術が投入された。圧倒的に豪華であり、先進的。そして、当時としては充分すぎるほどの性能。ソアラが人々にとって憧れの的であったことに異論はないだろう。

そんなソアラの限定車が、1989年4月に発売された「3.0GT エアロキャビン」である。500台限定のこのモデルに与えられていたのは電動格納式のメタルトップだ。メルセデス・ベンツSLや、実質的な後継モデルともいえるレクサスSC430など、後の多くのオープンカーも採用した機構を備えたのがこのモデルなのだ。しかし、近年のオープンカーのようにフルオープン状態になるわけではなく、ピラー部分はそのまま残る。電動であることはいうまでもないが、開閉に要する時間も、現代のクルマとは比較にならないほどゆっくりだ。なお、ルーフの開閉はランバーサポート調整ノブの横にあるスイッチで行う。ちなみに開閉時の警告音は「ブーッ」というブザー音に近い音色で、このあたりも時代を感じさせる。

3.0GT エアロキャビンのボディサイズは、全長×全幅×全高:4675x1725x1345mm。搭載される「7M-GTEU型」と呼ばれる排気量2954cc、直列6気筒DOHCターボエンジンが搭載され、最高出力は240馬力を誇る。よほどのマニアでない限り識別は難しいかもしれないが、リアクオーターの形状やルーフラインが通常のクーペモデルとは異なり、リアガラスには「AEROCABIN」の文字が表記されている点もこのモデルだけの特徴だ。本来であれば4人乗りだが、エアロキャビンでは2シーター化され、リアシートの部分は収納ボックスとなっている。

さて、当時でさえ500台、それから30年が経過した2019年時点で何台の3.0GT エアロキャビンが現存するのかは定かではないが、貴重なクルマであることは間違いない。手に入れることになった経緯をオーナーに伺ってみることにした。

「ソアラに興味を持ってから20年経ったある日のこと、家族や仕事のことを考えずにクルマを購入できる機会がめぐってきたとき、購入を決意しました。インターネットで調べてみると、自宅からそれほど離れていない場所にソアラとスープラの専門店を発見。このお店で1台目のソアラにあたる2.0GTツインターボLを購入しました。それから2年後、専門店の社長さんから『いいクルマがあるよ』と声を掛けられたのが、この3.0GT エアロキャビンというわけなんです」

…ということは、もともと3.0GT エアロキャビンを探していたわけではないということなのだろうか?

「そうです。1台目の2.0GTツインターボLがとても気に入っていましたし、乗り換えはもちろんのこと、増車なんて考えてもいませんでした。それが、ある日突然3.0GT エアロキャビンの売り物のオファーをいただき、こんな機会は2度と訪れないかもしれないと思い、衝動的に購入を決意しました。こういうとき、嬉しくて飛びあがる方がいらっしゃると思うんです。しかし私の場合、指定された口座にお金を振り込んだときの心境は「やっちゃった…」でした。それほど大きな買い物ですしね。買ってよかったと思えるようになったのは、手に入れてからしばらく経ってからでした」

いきなり降ってわいたような「イイ話」。それは往々にして即断即決が求められるような気がする。それゆえ、迷っていられる時間は短い。何はともあれ、オーナーはチャンスをモノにしたのだ。

「奇しくも、同じ型のソアラを2台所有することになりましたが、メインはあくまでも2.0GTツインターボLで、3.0GT エアロキャビンはセカンドカー的な乗り方をしています。もともとボディサイドに貼られた「24VALVE TWINturbo」のステッカーに憧れていたくらい(笑)でしたから、1G型エンジンの方がお気に入りだったんです。しかし、乗り比べてみると7M型エンジンもいいですね。ブレーキから足を離した瞬間に「走るぞ!」「指示をくれ(アクセル踏め!)」とクルマが急き立ててくれるような気がします。見た目は同じでも、これほど明確にキャラクター分けがされているとは所有するまで分かりませんでした」

確かに、同型の、それも同年代のクルマを所有できる機会はめったにない。それが、当時一世を風靡したソアラであればなおさらだ。とはいえ、30年前に造られたクルマである。それなりのトラブルも経験したのではないかと思われるが…。

「エアコンの故障などを経験しましたが、何よりトランクのヒンジが折れたのにはまいりました。それも2回。重いパネルを左右2本のヒンジと片側だけのダンパーで支えているのだから仕方がないかもしれません。当然、部品も欠品していますから直してもらうしかないんですが、専門店である主治医の力が大きいですね。改めて、趣味性の高いクルマを維持していくうえで専門店の存在は大きいと実感しました。そんなことが続き、直すたびに3.0GT エアロキャビンに対して親近感がわいてきましたね」

貴重な存在である、3.0GT エアロキャビンでもっとも気に入っているポイントは?

「突然のこととはいえ、貴重なクルマが手に入ったことですね。現時点では電動ルーフがきちんと作動するところも(笑)。あと、世代的にデジタルメーターは重要なポイントですね。眺めているだけでワクワクしますよ」

では、もっともこだわっているポイントについて伺ってみた。

「このままフルオリジナルの状態を維持していきたいですね。それでもいつかは、故障が頻発してどうしても諦めざるを得ない状況になるかもしれません。もしもそうなったら、当時、このクルマを手掛けた方たちに思いをはせて廃車にしたいです」

では、最後に今後このクルマとどう接していきたいのか?意気込みを伺ってみた。

「2.0GTツインターボLの方は、中学生の子どもが欲しいといっていますし、そちらはいずれ譲るとして、この3.0GT エアロキャビンはずっと所有していきたいです。細かい故障がいくつかありましたが、いずれも整備・修理できる範囲内だったんです。運もよかったと思いますが、このクルマとご縁があったんでしょうね。クルマは単なる機械ですが、深く付き合っていくうちにまるで生き物であるかのような錯覚を覚えます。手は掛かりますが、今のクルマにはない「道具」を超えた関係を築いていきたいですね」

実は、オーナーにお願いをして取材中に3.0GT エアロキャビンのルーフを開け放ち、周辺を走ってもらった。後で伺ったら、これまで1度も屋根を開けて走る機会がなかったそうで、このときも実は照れくさかったのだという。このクルマの開放感を味わう良い機会となったようだが、改めてこちらのお願いに快く応じてくださったオーナーに感謝の気持ちを伝えたい。

不思議な縁でオーナーのところへ嫁いで来た3.0GT エアロキャビン。もしかしたら、大事にしてくれそうなオーナーをクルマの方が選んだのかもしれない。また、中学生の息子さんがソアラに魅力を感じ、数年後にステアリングを握ることになるのが今から楽しみでならない。Z20型ソアラを親子2台で連なってドライブする日もそう遠くなさそうだ。そのとき、オーナーが運転するであろう3.0GT エアロキャビンはフルオープン状態で走っているに違いない。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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