【連載全14話】第5話 サーブ96・・・2サイクルエンジンのクルマ特集

現在のクルマのパワーユニットは実にさまざま。一方で絶滅危惧種となっている2サイクルエンジンのクルマを今回はピックアップ。日本やドイツで親しまれた小排気量車を中心に、週替わりで紹介します。

サーブ96

1937年に航空機メーカーとしてスウェーデンに設立されたサーブは、第2次大戦後に自動車市場に進出。1949年に登場したデビュー作である92は、航空機製造のノウハウを生かした空力的なデザインのモノコックボディーに、このシリーズの第1話で紹介したドイツのDKWに倣った、水冷2ストローク並列2気筒エンジンによるFFパワートレインを搭載していた。1955年には、エンジンをやはりDKWの流れをくむ2ストローク直列3気筒に換装した93に発展、その改良型が1960年に登場した96である。

水冷2ストローク直列3気筒エンジンは最高出力38PSを発生。変速機は3段MTが標準だが、オプションで4段MTおよびサキソマットと呼ばれる自動クラッチの3段MTも用意。遅れて3キャブレターを備えて同52PSを発生する高性能版の96モンテカルロ(仕向け地によってはスポーツと称した)も設定された。その後のマイナーチェンジではラジエーターの位置がそれまでのスカットル直前からボンネット先端に移されて顔つきが大きく変わり、同時にエンジンもパワーアップされた。

96は、名手であるエリック・カールソンやその妻にして“無冠の帝王”ことスターリング・モスの妹であるパット・モスらによって国際ラリーで大活躍。1960年から1962年までRACラリーを3連覇、1962年と1963年のラリーモンテカルロを連覇するなどしてサーブの名を高めた。しかし、徐々に強化されていく排ガス規制に対応すべく、1967年にはドイツ・フォード製の1.5リッターV型4気筒4ストロークユニットを積んだモデルを追加設定。翌1968年に2ストロークエンジン搭載車は生産終了となった。

[GAZOO編集部]

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