【連載全14話】第13話マツダ・シャンテ・・・2サイクルエンジンのクルマ特集

現在のクルマのパワーユニットは実にさまざま。一方で絶滅危惧種となっている2サイクルエンジンのクルマを今回はピックアップ。日本やドイツで親しまれた小排気量車を中心に、週替わりで紹介します。

マツダ・シャンテ

1960年に初の量産乗用車となるR360クーペを発売、続いて1962年にリリースしたキャロルで軽乗用車市場でスバルに次ぐ地位を築いたマツダ。だが以後は、小型車およびロータリーエンジンに開発リソースを集中したため、軽乗用車の開発は足踏み状態のまま1970年にキャロルを生産終了。それから2年の空白を経た1972年、まったく新たなモデルとなるシャンテで軽乗用車市場にカムバックした。

軽乗用車初の4ドアセダンをラインナップしていたキャロルに対し、シャンテのボディーは2ドアセダンのみ。最大の特徴は360cc規格の軽史上最長となる2200mmのホイールベース。これは、それまで最長だったダイハツ・フェローMAXよりも110mmも長く、ほぼ同時期にデビューした1.2リッター級の小型車である初代ホンダ・シビックと同じ数値だった。

駆動方式は、R360クーペやキャロルがRRだったのに対し、当時オーソドックスだったFR。エンジンはマツダの軽乗用車としては初となる2ストロークの水冷2気筒359cc。これは軽商用車のポーターキャブ用の空冷ユニットを水冷化したもので、額面上の35PSという最高出力はシングルキャブ仕様の軽エンジンとしてはトップクラスだった。

そもそも当初の計画では、マツダのお家芸となっていたロータリーエンジン、それをシングルローター化した専用ユニットを搭載する予定だったのだが、その高性能を恐れた他社の反対などもあって認可が下りずに断念。手持ちのユニットを改良した2ストロークエンジンのみで市販化するしかなかったのだ。

発売されると、ロングホイールベースがもたらす居住性は評価されたものの、2ストロークエンジンはノイジーで振動が大きく、評判は芳しくなかった。またライバルが4ドアモデルを加えていくなかで2ドアしかないこともネックとなりセールスは伸びず、かつてのキャロルと同様に最低限の仕様変更のみでほそぼそとつくり続けられたが、軽規格が550ccに移行する直前の1975年暮れに生産終了した。

[GAZOO編集部]

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