【連載全14話】第8話トラバント601・・・2サイクルエンジンのクルマ特集

現在のクルマのパワーユニットは実にさまざま。一方で絶滅危惧種となっている2サイクルエンジンのクルマを今回はピックアップ。日本やドイツで親しまれた小排気量車を中心に、週替わりで紹介します。

トラバント601

1989年に起きたベルリンの壁崩壊によって一躍その名を世界中に知られることになった、旧東ドイツの国民車だった通称“トラビ”ことトラバント。最初のモデルは1958年に誕生したP50。3ボックスの2ドアセダンボディーに空冷2ストローク直列2気筒500ccエンジンを積み、前輪を駆動するという、DKWの影響が濃いモデルだった。

エンジンを594ccに拡大したP60を経て、1964年には601が登場した。壁崩壊後に大挙して西側に押し寄せたことで記憶されるモデルである。慢性的な鋼板不足のため、モノコックの骨格に、圧縮ファイバーのような外板を張ったボディーを採用。P60から受け継いだ空冷2ストローク直列2気筒594ccエンジンを搭載し、二輪車のようなコンスタントメッシュ式の4段MTを介して前輪を駆動した。

デビューから20年以上の間、ほとんど変更なく、エンジンも旧態依然たる混合給油方式のままつくり続けられた。それでも旧東ドイツの体制では注文から納車まで10年以上という“人気車”だったが、東西冷戦構造の終結によって存在意義が消滅した。

東西ドイツが統一された1990年に実施された最後のマイナーチェンジでは、エンジンをフォルクスワーゲン製の1.1リッター直4 SOHCに換装した。生産継続は工場の雇用対策の意味合いが大きかったが、もはやトラビに市場性があるはずもなく、翌1991年には生産終了。総生産台数は300万台超といわれている。

[GAZOO編集部]

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