【連載全20話】第3話 マツダ・ルーチェ ロータリークーペ・・・懐かしい日本の2ドアハードトップ

昔に比べて少なくなった、国産の2ドアクーペ。なかでも過去の車型となってしまった“ピラーレスの2ドアハードトップ”を、週替わりで紹介します。

マツダ・ルーチェ ロータリークーペ

1960年代にマツダが社運を賭して開発、実用化に成功したロータリーエンジン。1967年に世界初となる2ローター・ロータリーエンジンを搭載したイメージリーダーのコスモスポーツを、翌1968年には自ら“ロータリゼーション”とうたったロータリーエンジン普及の先兵としてファミリア ロータリークーペを、1969年にはそのセダン版のロータリーSSをリリースした。

それらに続いて1969年秋に登場したロータリーエンジン搭載の高級パーソナルカーが、1967年の東京モーターショーに参考出品されたRX87を市販化したルーチェ ロータリークーペである。ジウジアーロがチーフデザイナーだったベルトーネの手になる初代ルーチェの4ドアセダンボディーをベースに、マツダが2ドアハードトップクーペにアレンジ。名称はクーペながらBピラーに加えて三角窓も取り去っており、サイドウィンドウを降ろせばAピラーからCピラーまで全開になるのは、国産車では初めてだった。

その中身は、ルーチェ サルーンとはまったくの別物だった。駆動方式はマツダ初にして(現行モデルMX-30のPHEV仕様を除く)ロータリーエンジン搭載車としては唯一となるFF。しかも13A型と名乗るロータリーエンジンは、これを除く歴代マツダのロータリーユニット(10A/12A/13B/20B)が基本的に同じローター径を持ち、ローターの厚さ(および個数)で排気量を増減していたのに対して、それらとは異なる大きな径を持つ専用設計だった。なぜそんな凝ったことをしたのかといえば、ロータリーエンジンをフロントアクスル前方にオーバーハングするため、エンジンの前後長を抑えつつ排気量を大きくしたかったためだろう。その13A型エンジンは655cc×2ローターから最高出力126PSを発生、4段MTを介しての最高速度は190km/hと公表された。

グレードはベーシックなデラックスと、パワーステアリングやパワーウィンドウ、クーラー、カーステレオ、レザートップなどを標準装備したスーパーデラックスの2種。価格は前者が145万円、後者が175万円で、同時代で似たようなキャラクターのいすゞ117クーペ(172万円)とほぼ等しかったが、前回で紹介したクラウン ハードトップ スーパーデラックスが123万8000円だったことを考えると相当高価だった。その価格とオーバーヒートしやすいといった不具合の指摘などから販売は伸び悩み、約3年間の生産台数は976台にとどまった。

[GAZOO編集部]

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