一生乗り続けたい!1995年式メルセデス・ベンツE320T(S124型)と人生を楽しむオーナーのカーライフ
「クルマがオーナーを選ぶ」という想いは、この取材を重ねていくにつれて確信していることである。今回の主人公、メルセデス・ベンツE320T(S124型、以下S124)と暮らす51歳の男性オーナーもそんなひとりだ。縁あって所有しているこの個体のほかにも、230TE、G350ブルーテックを加えて3台のメルセデス・ベンツとともに暮らしている。
「メルセデス・ベンツ」というクルマの性格上、あらかじめ伝えておきたい。彼は決して、高級車を頻繁に買い換えるようなタイプのオーナーではない。企業に長年従事し、努力を重ね、ようやく大好きなメルセデスと暮らせる環境を整えた人物であることを。
今回紹介するS124は、1995年式の「Eクラス」にあたる。大幅なコストダウンが始まる直前の、メルセデスの質実剛健さと重厚感が感じられるモデルだ。S124のボディサイズは全長×全幅×全高:4765×1740×1490mm。3.2リッターの直列6気筒エンジンは、最高出力225馬力を誇る。ちなみに「S」はステーションワゴンを意味し、セダンの「W」・クーペの「C」・カブリオレの「A」がラインナップされている。
オーナーの個体は、まるで時空を飛び越えてきたかのような抜群のコンディションを維持していた。色褪せなど微塵も感じない車体のボディカラーは、当時人気を博したブルーブラックだ。手に入れて約6年半が経つという。走行距離は約10万4000キロ。納車時は約9万7000キロだったので、1年で約1000キロずつ伸びていることになる。おもにミーティングや、気分転換で出かける「目的のないドライブ」で乗っているそうだ。
「もともとブルー系が希望でしたが、希望のブルーが見つかっても、タマ数が少ないうえに程度がいまひとつの個体が多かったんです。最後に見たのがこのブルーブラックの個体でした」
と、オーナー。まずは、メルセデスに魅了されるまでの経緯を伺ってみよう。どんな愛車遍歴の持ち主なのだろうか。
「私は若い頃から、トヨタ・コルサ、MG B、トヨタ・ソアラ、ホンダ・プレリュード、マツダ・ファミリア、ホンダ・シティ、アウディ・100、BMW・318i(E36型)、BMW・325i(E46型)などを乗り継いできました。20歳の頃には英国車にハマり、MG Bに6~7年乗っていましたが、若くてお金もなかったため、メンテナンスに疲れて手放してしまいました…。それからしばらく国産車に乗っていたんですが、やはり輸入車に乗りたくて、アウディ・100に乗り換えました。しかし、故障が多く、ほどなくして手放してしまいました。その後、BMW・318i(E36型)に乗ったとき、6気筒モデルに憧れるようになりました。7~8年ほどE36に乗り、『シルキー6』と呼ばれるしなやかなフィーリングに魅せられ、その後、325iツーリング(E46型)に乗り換えました。このクルマは、S124を手に入れた後も、しばらく同時所有していました」
S124に魅せられたのは、ドイツを行き来するようになったのがきっかけだったという。
「90年代前半、約2年間ドイツを行き来していた時期があり、その頃に見て欲しくなったクルマです。当時はW124・S124(セダン・ワゴンタイプ)が、現地ではタクシーとしてたくさん走っていて、合皮とウッドパネルの内装が何ともいえない雰囲気を醸していたんですよ。当時はバブルの絶頂期だったので、日本でもW124はあたりまえのように見ていたのですが“本場”で見ると、より魅力的に感じたんでしょうね。そのうち、このモデルのワゴンスタイルに憧れるようになりました」
この個体とめぐり逢ったきっかけを伺った。
「40歳を過ぎ、ようやく2台所有できるくらいの環境が整ったので、程度の良いS124を探しはじめました。しかし、見つかっても、程度も価格もイマイチだったんです。そこに、3ナンバーで2万キロしか走っていないクーペ(C124型)が出てきて、相当迷いましたが、価格がネックで諦めたその直後に、この個体を見つけたんです。ショップの方から『あなたの後ろに3人も待っている』と聞かされたので『いの一番』で現車確認に向かい、その場で即決しました。もちろん試乗もしましたよ。初めて乗ったときのしっとりと重厚なフィーリングは、今も維持できていると自負しています」
出逢ったときからこのコンディションがキープされていたのだろうか?
「記録簿を見ると、前オーナーさんが徹底的なメンテナンスを行っていたことが判明しました。その恩恵を受けて乗ることができているので、前オーナーさんにはとても感謝しています。記録簿を見ると、僕で実質2オーナー目でした。最初は法人オーナーで、2000~3000キロの時点で売却され、前オーナーさんが認定中古車として購入されていました。その方が過剰とも言える、あらゆる整備を行ってから乗り始めています。7万キロで一度、ATの載せ替えをしていますね。そこまで手間も愛情もかけていながら、なぜ売却したのかが今も謎です。ただ1点、ヘッドからオイルが漏れていたので、ひょっとしてそれがネックになった可能性はあります。この部分は必ず直す必要はないと『主治医』から言われていたのですが、今年になってようやく直したところです」
手に入れてから、モディファイは施しているのだろうか?
「基本的にオリジナルが好きなので、当時のままですね。窓に貼ってあったスモークフィルムは剥がしました。左斜め後ろから見た姿が、フィルムがないお陰でスタイリッシュになり、気に入っています。外装といえばそのくらいですね。あとは、ETCを目立たない場所に装着しているのと、ポータブルナビをあえてダッシュボードではなくエアコンのルーバー付近に取り付けていましたが、携帯のナビのほうが高性能になったので外しました。こだわっているのはオーディオですね。ナカミチが憧れだったので『MB-75』の中古品をオーバーホールして取り付けています。アンバーのディスプレイが内装と馴染む色あいで、後付け感の出ないところが好きですね。『CD-500』も持っていて、230TEに装着しています。最近もう1台、『CD-500』を購入してストックとして保管しています。メインは、外部入力でiPhoneをつないで海外のFMを聴いていますが、やはりCD-500の音のほうがいいですね」
約6年半の間に、トラブルは経験しているのだろうか。
「前オーナーのおかげで大きなトラブルはほとんどありません。1回だけエンジンがハンチングしたことと、バッテリーとマフラーを寿命で交換したくらいです」
S124はそろそろ「ネオ・クラシック」の域にさしかかってくる1台かもしれない。そこで、部品の供給状況も尋ねてみた。
「純正部品はさすがに出なくなってきたものもあります。最近わかったのが、リアウィンドウ左側の『水切りゴム』が欠品していました。但し、サードパーティーの部品でクオリティの良い部品もたくさんあるので、そのあたりも活用しています。もう1台の230TEは1991年式なのですが、もうエアコンホースが存在していなかったので、ワンオフなんです。それに燃料ポンプの先につけられるパイプもなかったので、自分でネットで検索し、US Amazonで見つけたものを、依頼したパーツショップがアメリカから取り寄せてくれました。S124のホイールは純正品のストックを持っています。未使用のものをオークションで見つけたので購入しました。230TEのものも合わせて今、12本のストックがあります。ホイールキャップは純正がまだ手に入ります」
実は、このS124を一度手放そうと考えたことがあるとか。
「私のS124が欲しいという人が現れたんです。そのタイミングで、一度整理したほうがいいのかと真剣に悩みました。230TEは実は、前のオーナーさんにも会い、深い愛情がかけられた縁のある個体でした。前オーナーの想いや『33ナンバー』継承の責任もあります。G350は日常のアシとして使っていますし、同じワゴンを手放すなら、自然とこのS124になってしまいました。断腸の思いで決意したのですが、その後、幸いにも話は流れました。あのとき売っていれば、二度と見ることもなかったでしょうね。今にして思えば、売らなくて本当に良かったです」
そんなかけがえのないS124と、今後どう接していきたいかという決意表明を伺ってみた。
「今のコンディションを維持できるように、メンテナンスをしてあげたいですね。どうしても手放さなければならない状況でないかぎり、3台とも手放しません。それがいつまでかは分からないですけど、私が元気なうちは大切にしていきたいです」
売却話が流れたのも、必然だったのかもしれない。愛車はよく相棒や、家族に例えられるが、人生の節目はもちろん、仕事の苦楽でさえもともにするため、そんな存在になっているのだ。オーナーとS124のカーライフに、これからも幸多からんことを…。
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
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