免許取得から30年間、プジョーを相棒に選び続けた理由
「最初はプジョーを買うつもりは全然なくて、ずっとポルシェの930に憧れていたんです。それで、たまたま近所にあった輸入車専門店にクルマを持ってない学生時代から遊びに行くようになったのが始まりでしたね。だけど、どこで間違えたちゃったのか、プジョーの205をすすめられて、そこからもうプジョーのクルマとは30年の付き合いです(笑)」。
そう半ば冗談で「お店にそそのかされた」と当時を振り返ってくれた尾形尚さん。
とはいえ、本当にプジョーのことが好きでなければ購入までは至らないはず。というわけで詳しくお話を伺っていくと、当時からラリーやWRCに興味があったとのこと。
そして、初めての愛車として1992年に購入したのはプジョー205GTI。ラリーが好きだった尾形さんにとって205は1980年代のWRCで伝説となったグループBカー、プジョー205ターボ16のベースとなった車種ということが、背中を押された点のひとつだったというわけだ。
「キッカケそのものは不本意なところもあったんですけど、やっぱり乗ってみたら好きになっちゃったというのが本音ですね。ただ、プジョーはこれ1台で終わりと決めて乗っていたつもりが、3年後に当時仲の良かったセールスマンから306のXSiをすすめられて、そちらに乗り換えることになりました」
このときもやはりラリーの影響が大きかったと尾形さん。手に入れた自身の306には、WRCでワークスチームが306MAXIに履いていたものに似ているという理由から選んだスピードラインのホイールを履き、時を同じくしてプジョーのミニカー収集もスタート。そちらの趣味は、現在100台ほどのミニカーを自宅に集めるほどになっているそうだ。
「306は8年くらい乗っていました。クルマ自体は気に入って乗っていたのですが、2人目の子供が生まれることとなり、3ドアだった306のままだと不便なこともあって、4ドアのクルマを探し始めたんです」
そんなとき、またもや知り合いからすすめられて選んだのが、現在のプジョー406スポーツだったという。
「当時、新しくできるディーラーに自分が長くプジョーに乗っていることを知っている人がいて『プジョーの406セダンにスポーツという新しいモデルができて、日本にも買い手が見つかれば輸入ができるよ』と教えてくれました。実は乗り換えるにあたって4ドアでもマニュアルに乗りたいと思っていたのですが、日本で買えるプジョーにはその選択肢がなかったので、レガシィのツーリングワゴンもいいなと考えていたところだったんです。406スポーツは左ハンドルのマニュアル仕様だったので、それが決め手になって購入を決意しました」
尾形さんが2003年に新車で購入した406スポーツは、国内にわずか300台程度が持ち込まれたという中の1台。スポーツの名を冠するように、通常の406に搭載された2Lエンジンではなく、2.2Lの直列4気筒エンジンを搭載し、5速MTを採用しているのが最大の特徴だ。
そこから19年間所有を続けているが、変更した点は306に付けていたホイールを移植したことと、過去に十勝スピードウェイでスポーツ走行にチャレンジしていた時代にシートをレカロSP-Gに交換した程度にとどまる。「フランス車はどのクルマもシートの出来がすごくいいと言われるけど、実はそうじゃないね」とは尾形さん。
サスペンションは10万キロ走行後におこなったリフレッシュ時に純正品への交換ができなかったため、ザックス製ダンパーとアイバッハのスプリングを組み合わせたセットになっている。現在の走行距離は15万5000キロだ。
406スポーツのメリットを、まわりに同じモデルに乗っている人がいないこと、と話す尾形さん。「北海道で19年間乗っていて、いちども同じ色でマニュアルの406と出会ったことがない」というほどだ。
いっぽうで所有には旧式のヨーロッパ車ゆえの苦労も多く「去年の11月からは故障続きで、今年はまだ7ヶ月くらいしか乗れていない」とはいうものの、自分の愛車はこの1台にこだわり続け「いい加減、他のクルマに乗り換えたらどう?」という妻からの説得も、のらりくらりとかわし続けているのだという。
「ただの腐れ縁で、そこまでプジョーが大好きというわけじゃないんですよ」と話す一方で、いずれ融雪剤の影響の大きい足まわりのリフレッシュやボディのオールペンもやりたいという尾形さん。
実はプジョーのスポーツサイクルも所有しているというお話を伺いながら、尊敬の念とともに、尾形さんがプジョーのことを思う気持ちを表す言葉として“愛憎相半ばする”という表現が頭に浮かんだ筆者だった。
取材協力: GR Garage札幌厚別通
(文:長谷川実路 写真:平野 陽)
[GAZOO編集部]
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