『クルマは最高のトモダチ』プジョーの乗り味の秘訣は!? “ホット”だった205GTi…山田弘樹連載コラム

  • 写真は93年式の205GTi。エンジンはSOHCの直列4気筒で、排気量は1.9リッターもあるのに120PSしかありませんでした。同世代だとシビックがEG型となって、SiRーⅡでは1.6リッターの排気量から170PS(!!)もパワーを発揮していましたから、走り屋仲間にはその良さを伝えられなかったなぁ。 そのボディサイズは3.71m×1.59m×1.38m(カーセンサーのカタログ参照)で、車重は970kg。そのボディは3ドアでした

先日、ようやくプジョー208(GT line)に試乗することができました。
フランスはプジョーの、Bセグメント 5ドアハッチバックです。
そこでふと思い出したのが、そのご先祖様に当たる「205GTi」でした。

ボクがこのクルマを初めて見たのは、免許を取ったばかりの頃だから、たぶん1990年ごろ。義理の兄がボクのクルマ選びにかこつけて、自分の好きなクルマばかりをアチコチ見て回った中に、このフランス製の小さなハッチバックがありました。

上の写真はグループPSA ジャパン広報の森さんから頂いたホワイトボディの93年式(1.9リッター仕様)ですが、ボクが見たのは黒いボディに赤いストライプの定番カラー。
これがなん~ッとも、かっこよかった!
当時はクルマのことなんて全然知らなかったのですが、そんなボクでさえ直感的に、「なんかこれ、いいぞ!」って思った。
その小さなハッチバックボディに1.9リッターエンジン(120PS)を積んでいたとか(87年までは1.6リッター/105PS)、ゴルフの向こうを張って「GTi」バッジを付けていたとか、そんな予備知識はまったくなかったのに、心をわしづかみにされた覚えがあります。
205GTiは、なんといってもピニンファリーナと共作したと言われるデザインが魅力的でした。とってもシンプルなのに、どこか美しく、そして精悍。

インテリアではサイドの張り出したレザーシートがとても立派に見えました。ボディと同じようにブラック/レッドでトーンが揃えられており、カーペットやドアパネルまで真っ赤っか。
はじめてクルマ屋さんを周り、自分がクルマを運転できる立場になったことを理解した、そのときに見る一台として、プジョー205GTiはあまりにまぶしかったですねぇ。
初心者でも運転できそうなハッチバックなのに、まったく媚びのないその堂々としたたたずまいに、ロマンを感じたボクでした。

とはいえ当時新車で292万円、仕様によっては306万円!? もした205GTiですから、中古車でもまったくボクのターゲットには入りませんでした。もう、まったくの冷やかしです(笑)。
そして205GTiに初めて触れたのは、自動車雑誌ティーポの編集部員になってからでした。

その頃すでに205GTiは「50万円で買えるチューコ車 50連発!!」特集の一員となっており(笑)、ボクたちのようなクルマバカには相変わらず愛されていたけれど、あの頃のようなオーラはありませんでした。

50万円もあれば余裕で買える205GTiは、ヨロヨロのクタクタだったなぁ。そりゃそうですよね、後期型でも5~9年落ちでしたから。ブッシュやダンパーだってやれているし、クラッチなんて頼りないほどミート感がない(もとから!?)。

でも、でもでも、でも。

運転するとこれが、ホットだったんですよ。エンジンはホンダのVTECみたいにカーン! と回らない。サスペンションも、なんかボヨーンとしてる。オマケにステアリングはノンアシスト!!
なのですが、そのゆっくりとしたリズムを予測できるようになると、動きがピターッと合って来るんです。

ブレーキやアクセルオフで、クルマをきちんとロールさせてから、コーナリング。出口からアクセルを踏むと、トルクがグーッと盛り上がって、これがとっても運転しやすい。最近の内燃機関エンジンは押し並べてトルク型になっていますが、プジョーはこの頃からクルマの乗りやすさはトルクだと理解していました。

ボヨーンとした足まわりは乗り心地だけじゃなく姿勢を作るためにも役立っていて、フロント荷重になってもリアタイヤが地面を絶妙に離さない。ツッコミ過ぎるとリアがスーッと流れてヒャー!ッとなるけれど、それもちょっと楽しい。
特集の撮影では、車内に漂うラジエターの甘い香りに不安を感じながら、ガンガン走っていた記憶があります。

それから数年してフランスに行ったとき、地元のきれいなお姉さんが、ボロボロな205(グレードは普通のCTiだったと思います)をフルロールさせながら、山間の高速道路をぶっ飛ばしているのに遭遇しました。これを見たときは、本当にカルチャーショックでした!

プジョーはわかっているんですよね、こういうクルマの方が普段から気持ち良く、そしてアベレージ高く運転できることを。
だからヨーロッパの人たちは、全体的に運転がうまいんだな……って、妙に納得しました。
「雪の日なんて、おばあちゃんでもカウンター切るんだぜ」 って話を聞いて、「それは盛りすぎでしょw」と思っていたのですが、あながちウソじゃないなぁと。

だからボクは走り屋の友人たちに、こうしたヨーロッパ車のすごさを何とか伝えようとしたのですが、まったく相手にされなかった(笑)。当時は国産ハッチバックでいうとシビックの独断上で、「なんでわざわざ高い金出してパワーが低いガイシャ買うんだよ!」なんて言われてました。

確かに中古ならEG6のSiR-Ⅱが抜群に速くてカッコ良かったし、EK型だとタイプRが登場したしなぁ。

さて208GT lineに話を戻すと、そんな205GTiのフレーバーが、再び戻ってきたように感じたんです。もちろんパワステは付いてるし、身のこなしだって当時よりも格段にスポーティ。タイヤサイズだって15インチに対して17インチ!

それでも208は、ジワーッとクルマをロールさせて行く。そのロールするタイミングをつかんで手前からステアリングを切って行くと、同じくピターッと動きが合ってくるんです。

このじんわり感には電動パワステのチューニングも効いているのですが、足まわりが、さらに進化した気がします。ストローク量を減らしてもダンパーをしっかり動かすことによって、プジョーらしさが色濃く受け継がれている。技術が進化した分だけ、無駄な動きが減っている感じです。

  • エンジンはこのセグメントでポピュラーな直列3気筒ターボ。1199ccという少ない排気量から100PS/205Nmのパワー&トルクを発揮しているので、初期ブーストはちょっと高め。対してATの制御がうまく行かないと、たまに発進でギクシャクします。そういう意味でもMTモデルが欲しいなぁ……と感じたのですが、長い時間乗っていると扱い方が慣れてくる。走り出してしまえばカラッとゴキゲンなエンジンだし、その完璧じゃないところにも愛着を感じました。あまり乗り続けていると欲しくなってしまうからアブナイ。でも、スポーツモードのスピーカーから流れるエンジンサウンドはいらない!(笑)

1.2L直列3気筒ターボは100PS/5500rpmしかないけれど、8速ATのショートステップに205Nm/1750rpmのトルクを組み合わせれば、笑っちゃうほど元気に走れます。トルクバンドを外すとちょっと失速するのも、走り甲斐あり(笑)。

これでMTがあったらなぁ! とは思うんですが、6速MT(欧州仕様)のギア比なら、8速ATのパドルシフトをこまめに使えばむしろコッチの方がキビキビしていそう。うーん、でもMTも乗ってみたい……。そこは、それこそホットバージョンである208GTiに期待でしょうか。

そして何より、新しい時代を感じさせるデザインがいいですよ。
この208には「eー208」というEVグレードがあり、その未来感も含めてでしょう、とっても先鋭的なルックスになっています。そしてこのデザインが、コンパクトな208にはばっちりハマッた。ここ数年プジョーのデザインには迷走を感じていましたが、508が登場してその目尻から牙をはやしてから(笑)、ようやくそのチャレンジが実を結んだ気がします。ライオンはプジョーのトレードマークですが、特に208は子ライオンを見ているようで、とっても可愛らしい!

インテリアも208のハイライトのひとつ。立体的なダッシュボードの造形や、メタル感のあるスイッチ類が整然と並ぶ様子は正直にカッコ良いし、モニターやステッチの配色がライトグリーンで統一されているあたりにもフランスならではの鋭いセンスを感じます。ステアリングの上からメーターを眺めるiーCockpitは、初見だと強烈な違和感ですが、ステアリングの切れ角が大きいため理論上は問題なし。慣れてしまえばスムーズに扱えるようになるあたりには、人まねをしないフランス人の偏屈さをビシビシ感じます。そこが素敵!

大衆車としてこの208がフランスの町中を沢山走り回るのはどうなのかなぁ? と思いますが、インポートカーとして適度な台数が日本の街中を走るなら、その存在感は抜群でしょう。

プジョーらしい乗り味とデザインを得た208。ボクと同じく205GTiに萌えたあなたには、ぜひディーラーで試乗して欲しい一台なのです。

 

(テキスト:山田弘樹)

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。


[ガズー編集部]

MORIZO on the Road