元学生アメフト選手がハマった、小さなマツダ ロードスターのデッカイ魅力

  • マツダ・ロードスター(ND型)

高校・大学時代はアメリカンフットボールひと筋。車にもオートバイにもまったく興味はなく、ひたすら練習と試合、そして自宅での筋トレに明け暮れた。QB(クオーターバック)あるいはRB(ランニングバック)を守るOL(オフェンスライン)の選手として活躍した。

そんな加藤瑞貴さんは、卒業を控えて体育会アメリカンフットボール部を引退。「アメフトで就職する」という路線は考えていなかったため、フットボールとは何ら関係ない一般企業への就職を決めた。

そして入社から約3年が経過した今。車というものにまったく興味がなかったはずの元学生アメフト選手は、なぜかマツダ ロードスターに、つまり2シーターの軽量オープンスポーツカーに、毎日乗っている。約1年前に走行2.2万kmの中古車として購入したロードスター S スペシャルパッケージの走行距離は、早くも5.6万kmを超えた。

「現役時代、アメフト以外には何の興味もなかったのは確かです。でも『社会人になったら車を持とう』と、漠然と考えてはいました。そして勤務先が自宅から遠いということもあって『通勤のためにも車はあったほうがいいだろう』と思い、大学を卒業する少し前から、生まれて初めて“車の研究”というものを始めてみたんです」

研究過程でホレ込んだのが、NDこと現行型マツダ ロードスターだった。

  • マツダ・ロードスター(ND型)とオーナーの加藤瑞貴さん

「入社後に配属される拠点まで、自宅からけっこう距離があるんです。であるならば単に“動くモノ”ではなく、“運転自体を楽しめるモノ”を選んだほうがいいのでは? と思い、その方向でいろいろな動画を見たり、記事を読み漁ってみたんですね。すると『……これはもうロードスターを買うしかないのでは!』という結論に至ったんです」

スポーティなドライビングが楽しめる車――という方向性で研究と検討を開始すると、候補にはマツダ ロードスターのほかにトヨタ 86やホンダ S2000なども挙がってきた。だがロードスターのデザインにひと目ボレしたということと、ネット記事や動画サイトで述べられている内容に納得したこと、さらには「自分、ぶっちゃけ目立ちたがり屋なんで(笑)」という理由から、華のあるオープンカーである現行型マツダ ロードスターの購入を心に決めた。

  • マツダ・ロードスター(ND型)のリア

そして入社早々、貯蓄生活が始まった。

1人暮らしではなく実家住まいだからできた――という部分もあるが、基本的には毎月10万円以上をコンスタントに貯金。月によっては給料の全額をロードスター貯金にぶち込んだ。なるべく早くロードスターを手に入れたかったし、買うなら「社会人としてしっかり働き、しっかりお金を貯めたうえで堂々と買いたい」と考えたからだ。脇目はふらなかった。ロードスター以外、欲しいものは何もなかった。

だが――ここで少し疑問に思うのは「そもそも貯蓄開始時の加藤さんは、現行型マツダ ロードスターに試乗してみたのか?」ということだ。つまりディーラーの試乗車なり中古車販売店の商品車両なりに乗ってみて「うん、これはやはり素晴らしい車だ!」と体感したからこそ、ロードスター貯金に専心できたのだろうか――という疑問である。

「いえ。このクルマを買った中古車屋さんで試乗してみるまで、現行型ロードスターのハンドルすら握ったことがありませんでした」

  • マツダ・ロードスター(ND型)のステアリング

……すべてはバーチャルだったのだ。さまざまな動画やテキストで述べられている現行型マツダ ロードスターの乗り味を脳内で咀嚼し、イメージを膨らませ、その結果だけをもとに加藤さんは「マツダ ロードスターという車は素晴らしい(に違いない)から頑張ってお金を貯め、一括払いで購入しよう」と決意したのだ。

素晴らしい精神力であるとは思うものの、これが万一「現行型ロードスターは、実際乗ってみたらぜんぜんダメな車でした」みたいなことになったら目も当てられない。いや、現行型ロードスターに限っては「ぜんぜんダメな車」などということはありえないが、「加藤瑞貴さんという個人にとっては相性の良くない車でした」という悲劇は起こりえる。

果たして結果はどうだったのだろうか?

「脳内でイメージを膨らませていたロードスターに生まれて初めて乗ってみたら――それはもうイメージ通りだったというか、イメージ以上の“何か”でした」

  • 緑の中を走るマツダ・ロードスター(ND型)

社会人になってから2年弱、気合の貯蓄生活により十分な資金が貯まった2023年3月。加藤さんは意を決して近所の中古車販売店を訪ねた。といっても、そこですぐに買うつもりはなかったという。

「ボディカラーがぜんぜん好きなものではなかったんです。でも、とりあえず自宅の近くに『試乗可能です』という中古車があったので、まぁ乗るだけ乗って一度確かめてみようかな……というのが、そのショップさんに行ってみた正直な理由です」

そして中古車販売店で、加藤さんは雷に打たれた。

生まれて初めてステアリングを握り、アクセルペダルとブレーキペダル、そしてマニュアルトランスミッションを操作しつつ運転してみた2017年式のマツダ ロードスターは、まさに自分が観たYouTubeで述べられていた通りの“何か”だった。いわゆる人馬一体であることが、中古車販売店の近隣を法定速度内で走らせるだけですぐにわかった。

  • マツダ・ロードスター(ND型)のシフトノブ
  • マツダ・ロードスター(ND型)の運転席

そして加藤さんは「まぁ乗るだけ乗って一度確かめてみよう」程度の思いで訪問したショップにて、その試乗車両を購入した。

走行2.2万kmの2017年式S スペシャルパッケージ。ボディカラーは「ぜんぜん好きなものではなかった」というブルーリフレックスマイカ。だがそのボディ色も、個体のコンディションと乗り味にホレ込んだ後となっては「むしろシブくてカッコいいし、他の人と被らなくていいじゃないか!」と心底思えた。

  • マツダ・ロードスター(ND型)のテールランプ

以降、毎日の往復50kmの通勤に使うだけでなく、休日には本人いわく「特に意味も目的もなく」走りに行き、ロードスターの軽快で快活な乗り味を堪能している。

雨が降っている日以外は、常にソフトトップは開け放つ。長野県のビーナスラインなどに――特に意味もなく――走りに行くと、車の挙動や音、若干巻き込んでくる風の匂いなどにほれぼれすると同時に、同型車とすれ違う際に手をふり合うロードスター乗り特有の慣習にも、心が癒やされる。
そんなことを繰り返しているうちに、購入時2.2万kmだった走行距離はあっという間に5万kmを超えた。

  • マツダ・ロードスター(ND型)のヘッドレスト

車というのは、基本的には「何らかの具体的な目的を達成させるための機械」である。人や荷物などを、徒歩ではあり得ないほどの短時間と低労力でもって移動させるのが、車という機械の主たるミッションだ。

だが、それだけでは収まりきらない部分もなぜか持っているのが車という乗り物であることが、加藤瑞貴さんとマツダ ロードスターの付き合い方からは見えてくる気がする。

意味も目的もなくどこかへ走って行くという行為は、効率至上主義で考えるならば無駄でしかなく、排出ガスや道路の舗装を傷める可能性などから考えると、悪ですらある可能性もある。

だが「意味も目的も特にはない」という“余白”こそが人の毎日には大切であり、そんな余白こそが、人間の身体と心の健康を維持させている可能性も高い。

そういった意味で、マツダ ロードスターに限らずすべての車は「人生の素敵な余白」に貢献しうる存在であるが、とりわけロードスターは、小さな車であるにもかかわらず――いや小さくて2人しか乗れず、固定屋根も付いていない車であるがゆえに、逆に、乗る者の毎日に巨大な余白を提供してくれるのかもしれない。

だからこそ今、加藤さんはこんなにも楽しそうなのだ。そしておそらく、心身ともにきわめて健康でもあるはずなのだ。

  • オープンにしたマツダ・ロードスター(ND型)

(文=伊達軍曹/撮影=阿部昌也/編集=vehiclenaviMAGAZINE編集部)

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